《建築のデザイン》 近代建築の四大巨匠のひとり、ミース・ファン・デル・ローエ
『建築のデザイン』マガジン
デザインがメインのnoteですが、建築系は、こちらのマガジンにまとめていきます。
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe、1886–1969年)は、20世紀のモダニズム建築を代表するドイツ出身の建築家です。ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトと共に日本では「近代建築の三大巨匠」とみなされています。グロピウスを含めて「近代建築の四大巨匠」とも。世界的には、アルヴァ・アアルトやヴァルター・グロピウスを含めて、モダニズム建築の先駆者たちの重要なひとりとみなされています。ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエは、 一般には姓のミース(Mies)と呼ばれています。1930年代、モダニズムの芸術、デザイン、建築の画期的な学校であったバウハウスの最後の校長を務めています。
モダニズムに強く反対するナチズムが台頭し、バウハウスが閉鎖されると、ミースはアメリカに移住しました。移住後は、現在のシカゴにあるイリノイ工科大学の建築学部長を引き受け、務めました。
ミース氏は、古典主義やゴシックのように、現代を代表する建築様式を確立しようとしました。ミースの建築様式は、極めて明快でシンプルであることがその特徴です。1920年代から30年代にかけて、リチャード・ノイトラなど他のモダニズム建築家が行ったように、工業用鋼材や板ガラスなどの近代的な素材を用いて内部空間を構成する建築様式を完成させました。ミース氏は、構造的な秩序というミニマルな枠組みをオープンスペースとともに成立させた建築を目指しました。ミースは自分の建物を「スキン・アンド・ボーンズ(皮と骨)」建築と呼んでいました。建築設計の創造的なプロセスを導く客観的なアプローチを追求しながらも、常に近代という時代の精神を表現することを意識していました。ミース氏の思想は、“Less is more.” や“Good is in the dtail.”といった彼が好んで使っていた格言が象徴しています。
ミースの建築
ファンズワース邸(1950年)
ヴィラ・ウルフ(1926年)
バルセロナ・パビリオン(1929年)
バルセロナ・パビリオン(Barcelona Pavilion)は、ミース氏が1929年、博覧会のために設計した施設。鉄とガラスで構成され、大理石の壁で構成されており、モダニズム建築の好例となっています。1986年に復元され、現在はミースの記念館になっています。
トゥーゲントハット邸(1930年)
トゥーゲントハット邸は、1928年から1930年にかけてチェコスロバキア(現チェコ領内)のブルノに建てられた邸宅。1992年には、チェコとスロバキアが分離独立(いわゆるビロード離婚)を決めた際に、調印式が行われた歴史的な場所でもあります。邸宅は、ブルノ近郊に位置し、元々は市街を見渡せた傾斜地に建っています。通りに面した上階部分に入口および寝室、庭に面した下階部分に居室、食堂、書斎が配置された2階建て。ミース氏は、この邸宅の設計を通じて、モダニズム建築の五原則の一つである「自由な平面」の概念を発達させました。それは、機能に結び付けられた空間(食堂、書斎、サロンなど)が、仕切られることなく決定されるというもの。
レイクショアドライブ・アパートメント
新ベルリン国立美術館、ノイエ・ナショナルギャラリー(1968年)
ミース氏の最後の仕事は、ベルリン国立美術館のための美術館「ノイエ・ナショナルギャラリー」です。記念碑的な鉄骨柱とガラスの囲いを持つキャンティレバー(張り出し)屋根面で構成された建築物です。シンプルな正方形のガラスパビリオンは、透明な壁によって定義され、外部構造フレームによって支えられた柔軟な内部空間に関するミース氏のアイデアを力強く表現しています。
シーグラム・ビルディング( 1958年)
ニューヨークのシーグラム・ビルディング(1958年竣工)。
ミース・ファン・デル・ローエが残した言葉
Less is more.
Less is more.(より少ないことは、より豊かなこと)
God is in the detail.
God is in the detail.(神は細部に宿る)
モダニズム建築の五原則
近代建築の五原則は、ル・コルビュジエにより提唱されたモダニズム建築の原則とされていますが、本来の言葉は “Les 5 points d’une architecture nouvelle”で逐語的に訳すと「新しい建築の5つの要点」となります。
ピロティ(les pilotis)
屋上庭園(le toit-terrasse)
自由な設計図(le plan libre)
水平連続窓(la fenêtre en bandeau)
自由なファサード(la façade libre)
モダニズム建築
モダニズム建築は、建築の新しく革新的な技術、特にガラス、スチール、鉄筋コンクリートの使用、「形は機能に従うべき」という機能主義、ミニマリズムの受け入れ、装飾の拒絶に基づく建築運動および建築様式です。19世紀末に現れ、第一次世界大戦後1970年代まで優勢でしたが、やがてポストモダンに徐々に置き換わっていきました。
まとめ
日本では、コルビュジェとフランク・ロイド・ライトの知名度が高い割には、ミース氏が有名ではないように感じています。しかし彼の建築スタイルや哲学こそ現代建築にもっとも(と言ってよいほど)影響を与えているように感じます。例えば、デヴィッド・フィンチャー監督の映画『ドラゴン・タトゥーの女』に出てくる瀟洒でモダンな建物は、まさにモダニズム建築様式を反映したものですが、ミース氏の哲学がいちばん色濃く反映されているように感じます。
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参照
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トップ画像に使っているファンズワース邸の写真は、こちらのCasaの記事より引用しています。
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