140字小説まとめ

SNSでハッシュタグ「140字小説」を付けて投稿したものをまとめた記事です。(20234月8日の投稿から2023年6月25日までの17個の投稿)
元の投稿の形に則り、本文→題名の流れになってます。
それではどうぞ。

1
「お前ら、仕事だ」
その言葉をキッカケに部屋でだらけていた奴らが会議室に流れ込む。
「警察からの依頼だ」
黒板に巷でよく見かける作業用ロボの写真が貼られ、会議室の注目を集める。
「48時間前に暴走、現在逃走中だ。警察は大きな別件で動けないらしく、支援はのぞめない。質問は…ないな。行け」

「短い会議」

2
鈍い音が頭の中で反響する。
「うわっ」と驚く声がした。
後輩か…許さんぞ…そう思いながら起き上がる。
「なにやってるんすか…」
ボサボサになった髪を触りながら椅子に座り
「部室で寝るなんざぁ普通のことでしょ」
と言い放つ。
後輩はため息をついて言った。
「せめて床以外で寝てくださいよ…」

「よく蹴られる先輩」

3
ガコンと自販機から缶が落ちる音がする。
プルタブを開け、一気に飲む。
「あッ!一口くれよ」
友人が近づいてくるがそのまま豪快な飲みっぷりを見せつけ、空き缶をゴミ箱に投げた。
缶は目標地点から大幅にズレて着地する。

「私に優しくしとけば入ったよ」

ガコンと自販機から缶が落ちる音がした。

「いつもの場所、自販機」

4
片方のイヤホンが外れてガタンゴトンという電車の振動が耳に入ってくる。
「ちょっと」
そんな意味を込めて隣に座っていた友人を膝でつつく。
「本読み切っちゃった」
友人は私のイヤホンをつけながら小説を私に見せた。
「…ん、良い曲じゃん」
友人はそう囁き、窓から入る光に目を瞑りながら笑った。

「電車の中にて」

5
体が宙を浮く。パニックになりながらも体はバランスを取ろうと神経を働かせ、幸運にも足から着地するも勢いはそのままなので足がもつれて派手に転んだ。
「ヘルメット着けてて良かったね」
近くに寄った友人が苦笑いしながら近づいてくる。
「よく言うよ…」
僕は僕と違って無傷のヘルメットを外した。

「自転車単独事故」

6
「あれ〜?また勝っちゃったなぁ?」
冷や汗が頬を伝う。
清一色2連発直撃オマケにドラも付いている。
「仕方ないけど罰ゲーム言い出したのはお前だからなぁ〜」
友人はレジ袋を漁る。
「しゃ、写真だけはご勘弁を…」
「それは君の心掛け次第だよ」
友人はメイド服を取り出して悪魔の微笑を浮かべた。

「罰ゲーム」

7
ガラスの割れる音がした。
何かが倒れる音がした。マニュアル通りの対応が出来るのは訓練の時だけだ。また1人倒れる音がした。足元には白い煙が迫る。遂に横を走っていた友人が倒れた。

ガラスの割れる音がした。「非常用」と赤く書かれたケースから防毒マスクを取り出し、震える手で急いで装着する。

「研究所にて」

8
街の外れの本屋、少女は普段絶対に行かない店の一つだが雨を凌げるのならどこでも良かった。
暗い店内に雨の音が入り込む。本棚に入らなかった本が狭い通路を更に狭めていた。

「お嬢さん。本は湿気に弱いんだ、閉めてくれるかい?」
店主の若い女は不機嫌そうに言った。

少女は慌ててドアを閉めた。

「本屋と少女」

9
ドアを開けると涼しい風が少女の横を過ぎる。
奥から店主が出てきた。
「こ、こんにちは」
少女は店主の鋭い目付きに少し怯えながら挨拶をする。
「…ドア閉めてくれる?」
「湿気ですか?」
少女はドアを閉めながら店にある本を見た。
「今日は暑いんだよ」
そう言うと店主は定位置の椅子に腰掛けた。

「夏、街の本屋にて」
(「本屋と少女」の続き)

10
ポタリと紙面に黒い滴が落ちる。
「良い話が書けてたのに」
インクが付かないように注意して原稿用紙を小さく丁寧に折ってゴミ箱に放り込む。
「ペンすら執筆の邪魔をするのか」
そう言って近くにあった鉛筆で執筆を再開する。直ぐに芯が折れ、細かな破片が紙面を汚す。
彼は耐えきれず鉛筆を投げた。

「インク漏れ」

11
フードがボタボタと音を立てる。水溜りを避けながら歩くが靴は濡れてしまった。車は通るが歩道には誰一人居ない。急がなければならぬ予定もある。顔を上げると水滴の付いたレンズ越しに曇天が見える。こんなことになったのは自分が時間を気をつけなかった所為だ。私は苛立ちながら水溜りに足を入れた。

「逃したバスが憎かった」

12
扉を開けるとガッタンと大きな音を立てて棚が崩れ落ち、光が宙を舞った埃を照らすのはいっそのこと幻想的である。
「うえ〜ここ掃除するの?」
「仕方ない、ここしかないんだもん」
マスクとゴーグルをした二人組は部屋に押し入った。
古物ばかり部屋の中、扉の外側にだけは新しい貼り紙がしてあった。

「部活結成」

13
まどろみからはっきりとした意識に移行しつつある僕はあることに気づく。体がピタリとも動かないのである。このままだと僕は近いうちに布団の重さに耐えられず煎餅のようになってしまうだろう。息苦しさに耐えられず顔をしかめ、くしゃみを5つほどしたところで僕はある考察にたどり着いた。「風邪…」

「ある朝風邪を引いた」

14
「今日は養子が来る日か…」
私は煙草に火をつけながらそう呟いた。どんな子が来るのだろうか、そろそろメイドが連れ帰ってくるだろうと考えてるとドアが開けられる。
「連れてきました。あと煙草は消して下さい」
メイドはムッとした顔で言った。
「…育児は想像以上に辛いな」
私は溜息をついた。

「煙草好きな主人」

15
「おい」
友人は禁煙と書かれた看板を指さした。
「いいじゃない、そんなこと気にする奴なんていないんだから」
僕は煙草に火をつけた。友人はため息をつきながら横に座った。
「これからどうする?」
友人は聞いた。
「滅びた世界で旅行も一興だろ?」
目の前に広がる廃墟群をみながら僕は笑った。

(無題)

16
「主人、起きてください」
最近メイドを雇った。仕事も出来て、信頼できるメイドだ。
「お客かい?」
ベットの側に放り投げてあったブーツに足を突っ込む。
「10名ほど」
メイドは主人の仕度が済むのを見てショットガンを渡した。
「さて、メイドくん、仕事の時間だ」
主人は笑った。

(無題)

17
足音で友人が近づいているのが分かった。
しばらくしないうちに読んでいる本を覗き込むように友人が視界に入ってきた。
「…邪魔だよ」
「えー、本はいつでも読めるけど今の私は今だけなんだよ?」
友人は頬を膨らませながら隣に座った。
「…今日は何して遊ぶ?」
私はそう言うと本にしおりを挟んだ。

「待ち合わせ」

おわり