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【ショートショート】公約10分

28歳のマルゴシ候補者が選挙カーの上から訴えた。

「わたくしの公約はズバリ『10分』であります。わたしくは全国民のための『なんでもすぐやります課』になります。今はスピードの時代。会議会議でああでもないこうでもないと言ってる間に、状況は刻々と変化していきます。まごまごしていたら、世界から遅れをとります。すべて10分で結論を出し、即実行していきます。国民の皆さま、『若さ』と『早い決断』と『早い実行力』があるマルゴシに投票をお願いいたします」

マルゴシ候補者の若さに溢れた熱意が伝わり、見事初当選を果たした。

マルゴシ議員は、公約通りなんでもかんでも10分で結論を出し、それを即実行した。

しかし、評判はあまり芳しくなかった。

それは、出した結論や実行力に誤りでもあったのだろうか。

「実際、政治家になってみたら、10分だと時間が掛かりすぎなんですよ。まさに分刻みで、次から次へと決断を迫られるわけです」

クマの上にある真っ赤な目を擦りながら、マルゴシ議員はかすれた声で答えた。

そのすぐ横を、70~80代の議員たちが次の会議室へ向かうために足早に通りすぎて行った。

「バケモノだ」

マルゴシ議員はうなだれるしかなかった。

(終わり)

家のポストに入っていた『無料のミニコミ誌』と『某政治家さんのチラシ』から、無作為に『10分』と『政策』という単語を抽出し、そこから連想して、今回のショートショートを作成しました。

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椎良麻喜|物書き(グルテンフリー/小説/エッセイ/写真)
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