見出し画像

腕時計が壊れた

2年くらい前から着けていた腕時計が壊れた。

「生活防水」という言葉を過信し、水がかかるような作業をする時も外すのが面倒だと着けていた。
どう考えたって私が悪い。

仕方ないね、新しく時計を買わなきゃねとまあそれだけの話なのだが、壊れてから1ヶ月経ってもなかなか買い替えられていない。

腕に残った真っ白い腕時計の日焼け痕も少し薄くなってきた。




私が2年間肌身離さず着けていた時計は所謂スマートウォッチというもので、時計機能だけでなく電話が出来たり心拍数やら血中酸素濃度やら、睡眠の質まで測定出来るものだった。

購入したのは私がうつ病と診断されてから1ヶ月後くらいで、体調を管理したくてネットで購入した。



当時は眠りの質が悪くて2時間おきに起きてしまったり、なんとか寝られても起きた時に身体が怠く重かったので、なんで眠れないんだろうどうやったら眠れるだろうと結構悩んでいたのだ。

どこまで正しいのかは分からないが、途中で起きた時間は大体合っていて、レム睡眠とノンレム睡眠の不規則的な波形を見ては「最近はこんなこともわかるのか」と、当時眠れてはいなかったがちょっと面白かった。

少し歩くだけでも心拍数が上がったり、特に人混みの中や電車に入ると急激に心拍数が上がってその場で失神、みたいなことも時々あった。

チラチラと腕時計を見て「あ、今結構心拍数上がってるな」と分かるとその場で休憩したり、どういう場所やシチュエーションで心拍数が上がりやすいのか予測しやすくなった。



スマートウォッチを肌身離さず身に着けて2年が経ち、いつの間にかレム睡眠とノンレム睡眠の波は規則的になり、数秒に1回時計を見なくても心拍数は上がらなくなった。

次第に私の中で腕時計は存在感が薄れていき、いつしか「ただ腕に着けている機械」になっていた。


そんなある日、電源が入らなくなった。
充電切れかと思い何度も充電プラグを付けるがうんともすんとも言わない。

いつ壊れたんだろう?水がかかったあの時かな。いつまで動いてったっけ。寿命が2年って結構短くない?修理に出すか、新しく買うか...



時計が壊れて時間をすぐに確認できなくなったことは不便で困ることだったが、何よりも肌身離さず着けていたものが急に無くなってしまったことに動揺した。

最近は睡眠の質や心拍数を以前ほどチェックしなくなっていたとは言え、お守りのようなものでもあったからだ。


しかしそのまま修理にも出さず新しいものも買わず1ヶ月が経った。

壊れてしまい身に付けなくなってからかなり動揺したが、少し時間を置いてみて気がついた事がある。



腕時計を気にし過ぎていたのだ、今まで。

腕時計を見て安心していたのと同時に、時間だけでなく心拍数など他のデータに囚われすぎていた。

腕時計の電池が少なくなると、いつ切れるか怖くてまず充電を最優先した。


腕時計を着け忘れて寝ると、寝た後でも途中で起きて腕時計を着けていた。

腕時計が私の中で安心材料であるのと同時に、変な言い方をすると一種の依存のような、かなり執着していたことに気が付いたのだ。

外してしまうとまた眠れなくなったり心臓がバクバクしてしまうのでは、体調がまた悪くなってしまうのではとずっと怖かったのだ。


それに気が付いてから私は腕時計がなくても大丈夫、と自分に言い聞かせて毎日過ごした。

そうしたら案外、特に眠れなくなることもなく心臓がバクバクすることもない。

なんだ、案外大丈夫じゃん。



腕時計が無いのはすぐに時間を見れないし、やっぱり不便は不便だ。

だけど腕時計がなくてもまぁ案外平気!というのことに気が付き、それは私の中で結構大きいことだった。


ないとダメ。より、あってもなくてもどっちでも良いけどあったほうが便利。くらいが精神衛生上一番良い。


好きなデザインで好きな機能の時計があったらまたゆっくり考えて買おうかな。


やっぱり防水がいいかな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?