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アカデミー作品賞ノミネート「バービー」

 アメリカで大ヒットした「バービー」。ピンクの服を着てバービーを観に行く、みたいなインスタグラマーたちの投稿を見て、「へえ~」と冷めた目で見ていたのですが、鑑賞してみると想像以上に面白かったです。観てよかった!

 オープニングのクレジットに、ウィル・ファレルの名前が出てきて、何も知らなかった私は、「えっ! ウィル・ファレル出んの?! 何役!?」と一気にワクワク。

 ウィル・ファレルは、バービーを作ったマテル社のCEO役で、愛すべき老害おじさんをめちゃくちゃ可笑しくキュートに演じていました。ウィル・ファレルのシーンで3回ぐらい笑ってしまった。やっぱり大好き。

 でも何といっても、ケン役のライアン・ゴズリングがよかった。

 ケンが演じる「男ってこういうとこあるよね…」っていうシーンがどれもバカバカしいけど、どれも真実で笑えます。いつもバービーの相手役としてしか見られない二番手のケンは、現実世界に行ったことでバービーのお飾りとしての自分の存在を疑問に思い、人間社会をお手本に男社会を作ろうとするも挫折し、最後にはありのままの自分でいいんだ、と自分自身を認める… 浮き沈みが激しく、ちょっとおバカな役を熱演しています。

 この映画の真の主役はケンなんじゃないだろうか。ケンが悩む「ありのままの自分って何だろう…」って、誰もが考えたことのある答えのない問いなのでは。ものすごく深いテーマなのに、笑える作品になってるのがよかったです。

 ライアン・ゴズリングが歌う”I'm Just Ken"がアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされています。歌曲賞には「バービー」からもう1曲「What I Made For」がノミネートされていて、1つの作品から2曲もノミネートされるのは、「ラ・ラ・ランド」以来。授賞式で踊りまくるケンたちが見れたらいいな。

 最後のシーンでケンが着ているスウェットに”I'm Kenough"(Kenとenoughの造語)と書かれていて、「僕はケン、それで十分なんだ」という意味なんですが、字幕では”もう十分やケン”となっていました。これ、訳者はとても悩ましかったと思うのですが、限られた文字数で笑える上に意味も正確という最高の字幕だと思いました。すごい!

 助演女優賞にノミネートされているアメリカ・フェレーラも大好きな俳優の1人で、素のままで味がある人。今回は思春期に入った娘を育てる母親役で、彼女が長セリフで女の生きづらさを訴えるシーンはスカッとしました。ちなみに、アメリカ・フェレーラの実際の夫が劇中でも夫役として一瞬だけ登場しています。確か、大学時代から付き合ってる相手だったはず。大学時代の彼とそのまま結婚っていうのがなんかアメリカ・フェレーラらしくっていいよな…と勝手に思っています。

 一番印象に残ったのは、バービーの生みの親であるルース・ハンドラーのセリフです。バービーは娘のために作った、と言ったあとにこう言うのです。

"We mothers stand still so that our daughters can look back and see how far they've come."

「バービー」

「娘がどこまで道を歩んできたか振り返ったときに分かるよう、母親である私たちは出発点に立ち続ける」

 まさに、母親という存在を言い表したセリフ。思わずふむふむとメモってしまった。このあとに続くエンディングのオチも最高でした。最後まで笑える大人向けバービー映画、食わず嫌いの人にもぜひぜひ見てほしいです。


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