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「友罪」 薬丸 岳

仲良くなった友達が、元少年Aだと分かったら…?

実際の事件に着想を得たフィクションで、読みたくなかったけど読んでしまった1冊。ついでに映画も見てしまいました。

ジャーナリストになる夢を打ち砕かれた益田は、埼玉の町工場で働き始める。そこで知り合った鈴木は、無口で影のある男だが、同い年の二人は徐々に打ち解けていく。ある日、益田は、鈴木が14年前に起きた連続児童殺害事件の犯人、当時中学生だった少年Aだと知る。

この本には、いろいろな立場の人が登場する。中でも、読んでいて一番苦しかったのは、元犯罪者の息子を持つ父親のエピソード。無免許の居眠り運転で小学生を3人殺してしまった息子の父親は、贖罪の方法として「家族を解散する」という決断を下した。

映画版では、この父親のエピソードが原作よりも濃く描かれていた。息子が起こした事件以来、妻にも息子にも会わず、タクシードライバーをしながら被害者家族へ賠償を続ける父親を演じるのは佐藤浩市。「人殺しのお父さん」と呼ばれ、被害者家族に罵られながら、ただ頭を下げるしかない日々。一方、父親にそんな思いをさせている息子が、結婚することになり、相手の女性が妊娠していると分かった時の佐藤浩市の演技は、見ていてものすごくツラかった。

あの事件が起きる前まで、思春期の子供を育てる親たちの心配は、子供が事故に遭わないだろうか、子供が変な事件に巻き込まれないだろうか、だっただろう。そこに、もしも自分の子供が犯罪者になってしまったらどうしよう、という恐れが加わるきっかけとなったのが、あの事件だったと思う。

加害者は、どうやって罪を償えばいいのか? どうやって生きていけばいいのか? 心を通わせた誰かが、元犯罪者だと分かったら、どう接したらいいのか? 決して答えの出せない問いを次々に投げかけてくる作品でした。あ~ 苦しかった。

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