「看守の流儀」城山真一

 このミステリーがすごい!大賞受賞作家による、刑務所を舞台とした人間ドラマを読んだ。金沢の刑務所で起こる5つの事件を、敏腕刑務官 火石司が解決していくというオムニバス。

 刑務所の中ってどんな感じだろう? 外からは決して知ることができない高い塀の内側を、怖いもの見たさにのぞき込みたくなる。そういえば私は昔、たまにテレビで再放送されていた泉ピン子の「女子刑務所東三号棟」を、怖い怖いと思いながら見ていたし、数年前はNetflixで、刑務所とは無縁の優等生女子がうっかり収容されちゃった刑務所で生き延びるさまを描いた「Orange is the New Black」にハマった。自分が全く知らない世界を知るのは楽しい。

 この小説では刑務所で使われる用語がちょこちょこ出てくる。例えば「ヨンピン」とは、刑期を4分の1残して仮出所する模範囚のこと。「ガラ受け」とは、仮釈放された囚人の身元引受人のこと。こういう業界用語、めっちゃ楽しい。そして最後、火石の正体が明らかに。これは全然気付かなかった。

 囚人と刑務官という真逆の立場の人間でも、密に接する日常があれば、そこに人間関係が生まれるわけで、隔離された小さな社会を覗き見できる楽しい1冊でした。

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