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【リブリオエッセイ】騙しSNSの牙 

▼2023年10月 ふみサロ課題本
「騙し絵の牙」塩田武士 角川文庫

 ▼本文
  騙しSNSの牙

 まだパソコン通信が主流だった頃、映画好きの集まるチャットに参加していた。メンバーは互いにハンドルネームで呼びあい、プロフィールは投稿から想像するしかなかった。暫くして私の推しは、”コン太”さんになった。”コン太”さん=男性で、めっちゃ自分と波長の会う人だと完全に思い込んでいた。しかし、オフ会で会ってみたところ、”コン太”さん=女性で、びっくりした事があった。投稿を遡ってみたところ、女性っぽい発言を一度だけしていた時があったが、男性であると信じ込んでいた私は見逃していた。

 文字情報だけでは、しばしば勘違いしてしまう事も多い。30代で婚活を始めたばかりの頃、結婚したい男女の掲示板で知り合い、未婚だと思ってデートした相手が訳ありの女性で、後日、既婚だと聞かされ、衝撃を受けた事もあった。(他にも、いろんなケースがありすぎて、書けない……)

 今では、写真詐欺(盛り過ぎ加工)、リア充、稼いでますアピール、エセ副業成功者、ネカマ(男性が女性になりすましている)、国際ロマンス詐欺外国人、ヤリモク遊び人、ハニートラップ業者など、詐欺アカウントも増え、カオスな状態になっている。かくいう私も、初期の頃は、プロの写真屋さんで加工してもらい、ほくろは消していたので、ある程度、見栄えをよくするぐらいは積極的にやるべきだと思ってはいるのだが……

 出会ってビックリ、大どんでん返しや、振り込んだ途端に連絡がつかなくなるなどは、映画や小説の中だけにしてもらいたい。しかし、事実は小説よりも奇なり。今日も必ず、どこかで誰かが騙されている。事業や投資の場合は、どこからどこまでが詐欺なのか?の線引きが難しい。恋愛では、駆け引きだと逃げる人もいるかもしれない。ITリテラシー、ネットリテラシーなど、必要なリテラシーも数え出したらキリがない。男か女か?のカミングアウトぐらいで驚いていた時代は、とうの昔に過ぎ去り、今ではゲイか?トランスジェンダーか?の心配までしなければならない、ややこしい時代になってしまった。

 このような時代に大切な事は、①自分の頭だけで完結して考えられる論理的思考力②物怖じせずに他人に聞ける胆力、素直さ、ただし鵜呑みにしない③何かおかしいと感じた時に、すぐにでも止められる決断力……が必要だと個人的には思っている。今後は、ますます研ぎ澄まされた感性や直感が大事な時代に突入していくだろうと感じている今日この頃である。

▼今回の作品を書いた経緯
今月は、何をテーマにして書くかメチャクチャ悩んだ。小説は全て読み、映画版も見た。書いてみようかなと思ったテーマの候補は、羽生結弦結婚とファン心理、芸能界で嘘は武器だと描かれるアニメ推しの子問題、ジャニーズ問題、減少し続けるリアル書店問題、京アニ殺人事件での犯人心理、小説家の自殺問題、私とトリックアートの歴史、出版社と電子書籍、芥川賞問題など、幾つかシミュレーションしてみたが、結局決められず、その結果、小説が書いてみたくなり、「マスクの美しすぎる女」という小説を600文字ぐらい書いてみた。その結果、自分の中では、本当に面白くする為には2000文字以上は書かないと面白くならないという結論に至り中止した。しかし、もう締め切りまで時間がない。だましえ、だましえ、だましえ……と、心の中で何回も繰り返しているうちに、だましSNSというキーワードが降りてきた。なので、それを心の中でテーマにして、プロットもなしに前から順番に書いていったところ、書きながらプロットが組み立てられていき、最終的になんとなく辻褄の合う文章にして終わらせる事が出来た。

▼執筆意図
 冒頭のエピソードが、SNS登場以前のパソコン通信の時代のエピソードから始まっている理由は、そのエピソードが自分史上、重要なエピソードだからである。それらの経験を通じ、ネットを通じて個人が勝手に抱く妄想のイメージは、現実とは少しズレている場合があるという教訓を得ていた私は、Facebookを始めてから以降は、なりすましアカウント等には、割とすぐ気づけるようになった。
 オフ会で出逢ったビックリに関しては、通信で年配の男性だと思っていた人が、オフ会で会ってみたら女子高生だったというのが最大のギャップだった。出会い系でも、いろんな面白い事があった。結婚相談所は、最終的に私はオー◯ット経由で結婚したが、現在は、バツイチである。対面でコーチングしていた時、相手からレズビアンだとカミングアウトされた事がある。なりすましアカウントで稼いでいる人達の話を生で聞いた事もある。そんなこんなで、いろんな事が詰め込み過ぎになっているかもしれないが、一度ぐらいはこれらの事をなんとなく書いてみたくなったので、今回は一気に書いてみる事にしました。


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