最悪な状況で、どう立ち振る舞うか。
ある合宿で起きた、本気の、人と人とのぶつかり合いの話。
合宿当日、集まったメンバーの顔には、疲労と困惑の表情が入り混じっていた。ウォームアップで散歩をするアクティビティをして、少し場があたたまったかのように思えた、次の瞬間、ゼミの先生はこう言った。「合宿前、色んな事があったと思いますが、今の状況を、Kさん、一言いただけますか?」一瞬にして、空気は凍り付いた。
それは、合宿の3日前にはじまった。あるメンバーが、「なぜ合宿をやるのか?なぜこの場所なのか?」事務局に直前になって、茶々を入れた。これまで時間をかけて、準備してきた事務局チームからすると、はぁ?何を今更?とキレてもおかしくない。Kさんの宿泊予約を強制的にキャンセルしたことが、引き金に。テキストベースのやりとりは誤解を生み、すれ違いが生じた。会社経営者、役員、メンバークラスまで、役職も年齢も様々な社会人グループ。その全員が、一連のLINEのやり取りをみていた。
イスの背もたれに大きく寄しかかり、腕を組み、明らかに怒り心頭のKさん。対して、顔色ひとつ変えず、全く動じない様子の先生が、淡々と問いを立てていく。これぞ、先生の真髄。「自分は悪くない。俺のせいにするな。」と言わんばかりに、自分のエゴと戦っているように見えた。
メンバーが次々に「自分が悪かった。ごめんなさい。」と謝り、Kさんに謝りやすい雰囲気を作ったが、まったくダメだった。そこで、強面の男性が満を持して、みんなの前に立った。「本当は悪かったと思っていることはわかってる。だけど、これだけは言わせてくれ。伝え方が本当に下手だってことを理解してくれ。」愛情たっぷりの魂の言葉を届けた。それは、それは愛に溢れていて、ズトンと響く、素敵な光景だった。それでも、自分にしかベクトルが向いていないKさんは、その愛を受け止められなかった。
結局、その後、Kさんは「このままでは楽しめない」と帰ろうとして、メンバーや先生が一生懸命とめた。一度は、必ず楽しくなるからと保証した先生だが、「次のセッションをやってみて、判断する」とこの場に及んで、上から目線のKさんに、見切りをつけた。「じゃあ帰ってください。これまで、ありがとうございました!」と、有無を言わさず、握手で別れを告げた。
他のメンバーは、Kさんを救えなかったことが悔しそうだった。そんな愛あるメンバーだからこそ、彼らの学びや成長の場のためにも、Kさんはこの場から去る必要があったのだと思う。
合宿前日、大荒れの状況で、良い時間にならないかもしれないと連絡をもらった時、私は「絶対、大丈夫。先生もいるし、私たちもいる。当日行ったら楽しい、来てよかったと思えますから。」と根拠のない自信があった。本当に、その通りになった。というのも、こうして本気のぶつかり合いを通して、失敗や挫折をしたから、メンバーの間に固い絆が結ばれ、これからの関係性に繋がっていく。
結局、合宿自体は、本当に目から鱗の、学び多い時間となり、メンバーの結束はより強固なものとなった。私自身も、こんな状況だからこそ、どうしてもその場に貢献したく、当日必要になったらすぐできるように仕込んでおいた、チームワークのセッションを提供する機会をもらい、先生になりきってやってみて、非常に勉強になった。普段発言するタイプじゃないメンバーが、実はプレゼン上手で、リーダーをやったら適任で、イキイキと輝いている顔をみて、心からよかったと嬉しくなった。
人が本当に試されるのは、良いときではなく、悪いとき。最悪な状況に、どう立ち向かうか。逃げずに、自分と向き合えるか。ピンチはチャンス。先生やメンバーの立ち回りや姿勢から、たくさんのことを気づかされた。
★私に、自信をプレゼントしてくれた、メンバーからのあたたかい言葉たち
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