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ミヤリサンが便秘と下痢、IBSを改善した臨床データ:整腸剤の解説(3)


便秘と10時間戦った話

昨日は朝8時過ぎから便意を催して18時過ぎに便が出るまでの10時間、私はずっと便意と戦っていました。良い機会なので「便意のメカニズム」について解説したいと思います。

便意のメカニズム
1.胃結腸反射により便が直腸まで下りてくると、直腸壁の骨盤神経が刺激され仙髄の排便中枢に伝わる

2. 仙髄の排便中枢に刺激が伝わると視床下部に伝わり、そこから大脳に信号が送られ「便意」として認識する

3.他方で仙髄の排便中枢に刺激が伝わると副交感神経が刺激され、反射的に直腸筋が収縮して内肛門括約筋が弛緩される

4.大脳からのGOサインがあるまで、外肛門括約筋を締めて待機

以上を私の昨日の事例に要約すると、

私の身体では10時間以上ずっと直腸から脳へ「便が届いた」と信号を出し、脳は身体の各組織へ「GOサイン」の指示を出し続けた

さらに加えると、腸管運動を亢進するために「セロトニン」も大量に分泌されたはずです。

非刺激性便秘薬「酸化マグネシウム」

結局、昨日の便意10時間の間に私は15回以上トイレに行きました。

強烈な便意があってトイレに行くも「ミシミシ」と便が肛門をこする音がするだけで出てきません。1週間以上の便秘で水分がなくなったカチカチ便ならまだしも、一日出なかっただけで「ミシミシ」音がするのはおかしい。これはまずい。

酸化マグネシウム330mgを午前中に1回服用しました

酸化マグネシウムとはで腸内に水分を集めて便をやわらかくする非刺激性の便秘薬で、今の私の症状にぴったりの薬です。

昨年の夏ごろに服用したときはわりと早く効果が出たので期待大だったのですが、お昼を過ぎても便意は治まらずに相変わらず出てこないので2回目の服用、合計660mgです。

最終的に18時過ぎに出てきましたが、酸化マグネシウム660mg服用したわりに水分がほとんど出ませんでした。便がほとんど吸収したのか?

結局昨日は強烈な便意が10時間以上続き、何一つやりたいことができませんでした。コンビニに買い物へ出かけても外へ出て数分で強烈な便意が襲ってきて、急いで家に戻っても「ミシミシ」音がするだけです。

便秘は腸から脳への信号と脳から各組織への指示、そしてセロトニンの過剰分泌で集中力は削がれ体力は激しく消耗して日常生活を著しく低下させます。

普段早起き早寝、適度な運動など生活の節制をしている私でさえこの有様です。まだまだ足りない点があるのかもしれません。

今日は整腸剤の中でもネットで評判の高い「ミヤリサン」を通して健康の在り方について考えます。

ミヤリサンがすごい

ミヤリサンとは酪酸菌の一種「宮入菌」を主成分とする整腸剤です。

テレビCMもなければ店頭でもほとんど見かけないのに整腸剤のランキングではビオスリー、ビオフェルミンに次ぐ第3位に位置しています。なぜなのか?

1.ミヤリサンHPが特徴的
ビオスリーやビオフェルミンのHPは視覚に訴える画像や写真を使ってとてもわかりやすく商品の解説をしていて、薬や身体の知識のない人でも容易に理解できます。他方でミヤリサンのHPは、

なんだこりゃ、です

インターネット黎明期の20年以上前のHPの作りですが、内容がとても興味深くて他社のHPとは一線を画しています。
以下、内容を一部抜粋して要約します。

1-1.過敏性腸症候群(以下IBS)患者の腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の異常と、宮入菌製剤投与によるその改善
IBS患者と健常者の腸内細菌を比較したところIBS患者に次の特徴が見られた

・乳酸菌、ビフィズス菌、総嫌気性菌(酸素を嫌う主に大腸内の細菌)の減少
・クロストリジウム(悪玉菌)の増加が顕著に確認
・IBS患者に宮入菌を投与すると健常者と同程度の腸内細菌叢に改善

1-2.宮入菌投与による炎症性腸疾患(以下IBD)の防御作用
大腸炎モデルマウスに発症する炎症および潰瘍に対して宮入菌投与により炎症および潰瘍の面積縮小などが確認された

1-3.宮入菌による腸管出血性大腸菌の感染防御作用
腸管出血性大腸菌の感染モデルマウスにおいて、感染7日目までにすべてのマウスが弊死したが宮入菌投与マウスはすべて生存した
また宮入菌投与マウスは腸管出血性大腸菌の増殖抑制および志賀毒素の産生抑制効果が認められた

1-4.化学療法剤投与により乱れた腸内細菌叢のバランスの早期改善
化学療法剤(抗生物質など)を投与すると嫌気性菌等の菌数減少をはじめとした腸内細菌叢の異常や短鎖脂肪酸の減少が起きるが、宮入菌投与により早期に回復する

1-5.短鎖脂肪酸の生理活性
腸内菌叢により産生される短鎖脂肪酸は腸管粘膜のエネルギー源として利用されて水分吸収を促進する他、腸管上皮細胞の増殖促進、炎症性サイトカインの抑制作用等による抗炎症、抗潰瘍作用を有することが報告されている

また、酪酸菌は経口投与後腸管内において増殖して酪酸を産生することにより抗炎症、抗潰瘍作用を示すことが動物実験において証明されている、など

これまで書いていない新しい単語(腸内細菌叢とか嫌気性菌とか)が出てきましたが、基本的にはこれまで記事にしてきたことの復習です。これだけを読んでも他者との差別化が容易にわかります。

次は添付文書(医療用医薬品ミヤBM)の一部抜粋要約です。

ミヤBMの添付文書の抜粋要約

1.宮入菌の臨床データ
・腹部症状80%(300例以上)
・下痢97%(100例以上)
・軟便59%(150例以上)
・便秘67%(10例以下)
・IBS80%(100例以上)

一企業が行える臨床試験は資金等の関係でサンプルがかぎられますが、腹部症状や下痢に対して宮入菌は特に効果があることがわかります。

2.宮入菌の作用
2-1.宮入菌が腸管内に入ると短鎖脂肪酸や各種代謝産物を産生する

2-2.宮入菌は有害菌や病原性細菌の発育を抑制する

2-3.宮入菌は有用菌(善玉菌)の発育を促進することで、腸内環境のバランスを整えて諸症状を改善する

2-4.短鎖脂肪酸は腸管上皮細胞の増殖を促進、水やナトリウムの吸収調整作用を示す

2-5.酪酸は腸管内の大腸上皮細胞の重要なエネルギー源

3.宮入菌の悪玉菌に対する作用
3-1.宮入菌はサルモネラ属菌、腸管病原性大腸菌、腸管毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌など各種腸管病原菌の発育を抑制した

3-2. 無菌マウスにおいて宮入菌を投与することにより腸管出血性大腸菌O157:H7の増殖性、毒素産生性及び致死率が有意に抑制された

3-3. 宮入菌が産生する酪酸は、腸管毒素原性大腸菌による毒素の産生を抑制した、など

4.宮入菌の整腸作用
4-1.宮入菌製剤を併用することにより腸粘膜萎縮の抑制が観察されるとともに、糞便中の水分率の減少と糞便性状及び排便回数の改善が認められた

4-2. 大腸炎モデルマウスにおいて宮入菌製剤を投与することにより、腸管内で酪酸などの短鎖脂肪酸が増加した

4-3. 宮入菌はアミラーゼ、ビタミンB群(B1・B2・B12・ニコチン酸・葉酸)を産生した、など

整腸剤で意外と忘れがちなこと

医療用の添付文書なので初めて見る単語が多いですが、できるだけわかりやすく要約しました。

これまでは腸内細菌を「善玉菌」「悪玉菌」とひとくくりで分類しましたが悪玉菌にもいろいろあり、悪玉菌の一つ「大腸菌」にもいろいろあります。そして大事なことは、

大腸菌を始め多くの悪玉菌が腸のメンテナンスをしないと増えていくということ

これまで記事にした抑うつやIBS、そして炎症性腸疾患など多くの病気に共通しているのは腸内環境が、

悪玉菌が増えて善玉菌が少ないということ

お腹の調子だけでなく肌や精神にも腸内環境が関係しているのはこれまで記事にしてきたとおりです。

そして忘れてならない大事なことを添付文書に見つけました。

「宮入菌を服用した健康な成人男性において1~2日以内に宮入菌が便から検出され、3~5日後に便から消失した」とあります。つまり、

今日飲んだ整腸剤は早ければ明日に便と一緒に排出されるかもしれない、ということ

3日目以降に便から消えたということは整腸剤が体内に残っていない、ということです。

整腸剤を摂取することで腸内環境が整うだけでなく、「健康への意識」も高まります。便秘や下痢などお腹の調子が悪いときだけでなく、整腸剤を毎日摂取して健康意識も高めましょう。

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