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ファッショントレンドのしくみと業界構造 その1

ファッションの流行ってどうやってできるの?誰かが作ってるの?誰かが流行らせてるの?

一般のヒトはその辺のしくみがわからないらしい。ということで、長年ファッション業界で仕事をしてきた筆者が簡単に解説してみる。
以下、ファッショントレンド発生と伝搬のメカニズムだ。

①流行色をインターカラー(国際流行色委員会:INTERNATIONAL COMMISSION FOR COLOR)が選定。これが当該シーズンの2年前。

JAFCAより転載

➁主にパリを中心としたスタイリングオフィスと呼ばれるファッショントレンド情報会社(TREND UNION、PROMOSTYL、Nelly Rodi、carlin)がトレンド予測を発表。これは予測とか言っているが仕掛けに近いと思う。トレンド感度の高い人(簡単に言うと飽きっぽくてお洒落が好きで新しいものが好きな人)たちの集団が議論して、『これは飽きたから次こういうのが良いんじゃね?』みたいな感じで決める(のだと想像してる…笑)。当該シーズンの1.5~2年前。

以下がスタイリングオフィスが作るトレンドブック。

欧州メゾンのデザイナーや各国のファブリックメーカーが、上記のスタイリングオフィスの発表を咀嚼しつつ次シーズン(1.5年後の半期シーズン=今なら2020年秋冬)の社会や消費マインドを考えてトレンドのキーワードやMAPを作成。
まずは素材メーカーの“ヤーン展”とか“テキスタイル展”。そしてデザイナーブランドのコレクション(ショー)発表。パリコレとかミラノコレとか言われるものだ。かつては東京デザイナーブランドが強かった時期はTokyoコレクションも世界各国が注目してた時期があった……今から30年以上前かな。

ここまでが従来のファッション業界が“トレンド”と命名していたトップダウントレンドだ。はっきり言うと作られたトレンド
でも、ファッションに詳しい読者はわかると思うけど、デザイナーがコレクションで発表した商品ドンズバがそのまま流行るなんてことはない。というか、コレクションはある意味パフォーマス色も強いので、到底日常シーンでは着られない過激な商品などが数多く露出される。これは欧州メゾンデザイナーの自己顕示のためのショーだと言ってしまっても良いと思う。

④このトップダウントレンドとは別に、草の根的に起こってくるストリートトレンドとか、市場側・生活者側のリアルな流行がある。これらを総称してボトムアップトレンドとか呼ぶ。
ただし、これはあくまでも今の生活や気分に基づいてる。
一部のインフルエンサーから発信してマスに浸透するまでは続くが、マスが着始めるとインフルエンサーは着なくなる!ので、何シーズンも同じトレンドが長く続くことはない。

というか業界側は同じスタイルやアイテムの人気が続いてもらったら困るヒト達が一杯いる(今の服で良いのなら新しい服は売れなくなる、またはメルカリで十分じゃん)。
そもそも今のスタイルに飽きるというのがファッション消費の原動力だから、1年後のトレンドは今とつながってはいるが、全く新しい予想外の要素がはいってくる。

⑤そしてここでのキープレイヤーは小売業。
日本のアパレルメーカーやSPA(アダストリアとかファストリさんのようなSPA)やセレクトショップなどが、トップダウントレンドとボトムアップトレンドの両方を睨みつつ、売れそうな妥結点を探す・見つけ出す。

ポイントは『みんな(小売やアパレルメーカー)が仕掛けるものは売れる確率が高くなる!』ということだ。トップダウントレンドは解釈の仕方で非常に幅がある。当たる(ボトムトレンドにマッチする)ものもあり、ハズレもある。
しかし、ファッション系主力メディアやスタイリスト陣や、大手セレクトショップのディレクターやモデル等のインフルエンサー等がこぞって押すものは、消費者に受け入れられてヒットする率が高まる。なので、ファッション業界各社は消費者を見ているというよりは、横(同業他社や媒体編集者など)を見ている。みんなが仕掛けるトレンドには乗らなきゃソンソンというマインドがあるのだ。

次回に続きます。