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第3講 読む編~物語文(小説)で意識すること①~

登場人物は物語の中心

皆さんどうもこんにちは。
田中(国語の先生)です。

今回はいよいよ物語文(小説)の読解に関する話をしていこうと思います。
まず、大前提のお話からしていきたいと思います。
それは物語文(小説)の構造です。
物語文(小説)とはいったいどんな文章なのでしょうか。

第0講でもお話ししましたが、作者はなぜ文章を書くのでしょうか。それは、何か伝えたいことがあるからですね。
例えば
・友情の大切さ
・家族のあたたかさ
・子供の成長
 など
があげられますね。

しかし、そのまま「友達は大切な存在なんだ!」とか「家族はいいものだ!」なんて言ったところでお説教臭くて話を聞いてもらえません。
そこで作者は物語文(小説)という形式に自分の伝えたいことを込めます。
作者が伝えたいこと。つまり、テーマですね。
そのテーマを伝えるために、話の舞台を作り、登場人物を設定して、その登場人物を動かして事件を起こしていく・・・。
という具合に物語を作成していきます。
つまり、物語文(小説)は「作者が伝えたいテーマを伝えるために用意した箱庭」ということが出来ます。
箱庭だからこそ、登場人物を都合よく動かし、都合よく事件が起きて、都合よく解決します。
物語文(小説)だけでなく、漫画やドラマ、映画なんかもそうですね。
だから、
・空から少女が落ちてくるところに偶然居合わせる
・世界滅亡を食い止めるために古の力を持っている
・病院に行ったらよくわからない組織に占拠された
などということが起きるわけですね。

そんな都合よく事件に巻き込まれるためにも、登場人物も作者が文章を書くにあたって都合のいい人間でなくてはいけないわけですね。

ここまで話すと、「物語文が純粋に楽しめなくなってきた」というような声も聞こえてきそうですが、こういうことを知っているからこそ、楽しめる読み方もたくさんあります。それは息抜きにまたどこかでまとめましょう。

話を戻しますが、登場人物も「所詮は舞台装置の一つ」とわかったところで、実際に文章を読み進める際に登場人物に関してどんなところに注意していけばいいかをまとめていきたいと思います。


①描写を心情把握のヒントにする


まず一つ目は
「描写を心情把握のヒントにする」です。
これはいったいどういうことでしょうか。
物語文(小説)の登場人物といえども、人間です。人間であれば必ず心情が存在します。では、その心情はどこに現れるかというと、行動や表情などですが、それ以外にも
・生い立ち
・性格
・発言
 ほか
にも注目しましょう。
とくに「生い立ち」は登場人物を形成する大切な要素の一つです。
例えば、
・友人に裏切られた。→人を信じることが出来ない。
・障害を持っている。→障害者として同情されるのが辛い。
などがあげられます。
このような特殊な状況を経験している登場人物は物語の中でも重要なポジションについていることが多いので要注意です。
また、特殊な状況を経験したからこその性格や、心情というものがあり、それが他の人物との対比になっていることもよくあります。
次は、他の登場人物との対比についてお話ししたいと思います。

②登場人物の対比と共通点を考える

物語文(小説)は基本的には複数の登場人物が出てきます。そこで注目してほしいのが、登場人物同士がどういうポジションにいるかということです。
例えば、
主人公:幼いころに父を事故で無くしている。周囲から同情の目で見られることが嫌だ。
というような人物がいたとしましょう。

ここに別の登場人物を出します。
A:主人公と同様に、幼いころに父を事故で失う。
B:主人公とは違い、父は健在である。主人公に同情する。

さて、ここで上記した二人と主人公の関係性を考えてみると
・主人公≒A→境遇が似ているので、よき友人となる。
・主人公≠B→境遇が違い、Bに同情することに対し主人公は腹を立てている。
というように異なる二つのタイプの関係性が出来ました。
これが二つ目の注意点です。

わざわざ複数の登場人物を出すということは、そこには必ず何らかの役目があります。
某少年3人組の話であれば、
・元気なリーダータイプ
・臆病な知識人タイプ
・穏やかなボケタイプ
といった形で凸凹感を出すことで、お互いが協力して困難を乗り越える話を書くことが出来ます。

対比で覚えておいてほしい言葉があります。
それは「二項対立」という言葉になります。
二項対立とは、「二つの概念が対立や矛盾の関係にあること。 また,そうした対立概念によって世界を単純化して捉えること」です。
要は、「反対の要素同士の対比」ということになります。
また、説明(論説・評論)文のところで詳しく二項対立については説明しますが、今回特に知っておいてほしいのが「一般」と「特殊」という対比になります。
一般というのは「普通」であったり、「その他大勢」という風に考えられるといいでしょう。
反対に、「特殊」というのは、「変わり者」、「特別な存在」、「違和感」などという風に考えましょう。

例えばですが、世間からずっとマイナスの評価をされていた少年がいるとします。
この少年は特に悪いこともしていませんが、なぜか世間的な評価はマイナスです。
ここでは少年をマイナスに評価するものが一般となります。
しかし、ある人物が少年の本質を見抜き、少年をプラスに評価したとします。
ここでのある人物はほかの人と違う評価をしているので、「特殊」です。

さて少年は自分のことをちゃんと見てくれた人物をどう思うでしょうか。
前後の文脈がないので、何とも言えないところですが、中学受験では少年はある人物に対し心を許すでしょう。それは、自分のことをはじめてちゃんと見てくれた人物だからですね。

このように人物同士を「一般」と「特殊」というようなわかりやすい形で対比してあげると人物関係がよりつけ見やすくなると思います。

また同じ事件・出来事に巻き込まれた際の反応の違いにも注目してみましょう。
なぜ、反応の違いが生まれるのか。
それは、生まれ育ってきた環境・性格の違いが原因です。
違うところは問題にしやすいので、こちらもしっかりチェックしましょう。

割と対比が多めですが、先ほどの主人公と人物A・Bの関係性でも話したように、共通点も大切な要素です。
人は、自分と同じ要素が3つ以上あると親近感を抱くと言われていますが、それと同じです。
共通点。それも抽象的(この場合は、「人間」「日本人」「男」みたいなもの)なではなく、より具体的なものであればあるほど登場人物は相手に親近感を持ちます。

繰り返しますが、物語文(小説)は作者の箱庭です。
複数の登場人物を出すことにも意味があります。その意味を考え、登場人物同士の共通点や対比を考えていきましょう。

③五感を用いた感覚表現に注意=(投影)

三つ目は五感を用いた感覚表現に注目になります。
五感とは、
視覚/聴覚/嗅覚/味覚/触覚
の5つですね。

なぜ五感に注目するかというと、五感は心情と密接につながっています。
例えば、普段食べてもおいしい好物があるとします。
これをどういう状況で食べるかによって、反応が変わってきます。
A:第一志望に合格してお祝いで食べる時

B:受けたところすべてに落ちて、食べる時
の二つだと反応に大きな差が出ます。

Aの場合は、
普段もおいしい+合格の喜び(達成感)=さらにおいしく感じる
といった具合に変化します。
逆にBの場合は、
普段はおいしい+不合格のくやしさ=おいしく感じられない
という形になります。

このように五感と心情は密接に連動しているため、注意が必要です。
また、そのように感じるきっかけを作った対象に注目しましょう。上の例でいうと受験ですね。
この対象が登場人物にどういう影響を与えたのか。同じ対象でも登場人物同士で受け取り方が違います。上の②と合わせて一緒におさえることが出来ると文章がより理解しやすくなると思います。

投影については今回以外にも記述でまとめるための型があるのでその時にまた説明します。

というわけで、今回は登場人物について解説してみました。

次回も物語文について解説していきます。


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