少子化対策で人口は増えるのか?
竹内義晴の「これからの働き方」――この番組は、これからの働き方、組織作り、地域づくりの実務家、竹内義晴が「楽しく働く」をテーマに、組織づくりやコミュニケーション、マーケティング、キャリアデザイン、複業、テレワーク、ワーケーションなどの視点でゆるゆるとお話をしていく番組です。
いま、noteさんの #創作大賞2024 #ビジネス部門 という企画に参加しています。『「仕事っぽいシゴト」が社会の課題を解決する』というタイトルの本を作るイメージで毎日お話しています。1本目、目次はこちらです。
昨日は、「少子高齢化社会ニッポン ― 人口減少の現実」というお話をしました。
今日は、「少子化対策で人口は増えるのか?」というお話をしていきます。
音声はこちらです。
少子高齢化の解決策の1つは「子どもを増やすこと」
少子高齢化社会という言葉自体は、多くの方が耳にしたことがあると思います。少子高齢化ということは「子どもが少なくなっていき、高齢者が増える」ということです。
少子高齢化を防ぐひとつの手立てとして、「少子」の部分を改善すれば――つまり、子どもを増やせば――、人口減少が食い止められるんじゃないか? という考えが浮かびます。そこで、いろんな地方自治体や国レベルでも、「育てやすくすれば、子どもが増えるんじゃないか」「もう少し金銭的な余裕があれば。子どもが増えるんじゃないか」といった、いろんな少子化対策が行われていますよね。
たとえば、給食費の無償化や教育費の無償化、育てやすい環境づくりなど、さまざまな取り組みが行われています。もちろん、そういった取り組みはとても素晴らしい取り組みだと思います。
どんなに少子化対策をしても、人口は増えない
けれども、少子高齢化、人口減少ということを考えた時に、事実として把握しておかなければならないことがあります。それを一言で言うと――ややネガティブな言い方になるかもしれませんが――どんなに少子化対策をしても、人口は増えないという状況です。
「事実」と言ってしまうのは、やや乱暴のような気がしたので、「状況」と言いましたが、事実と言ってもいいかなと思います。
人口を維持するために必要な出生率が発表されています。一人の女性が子どもを産む数ですね。正確には「合計特殊出生率」と言います。
人口を維持するために必要な合計特殊出生率は2.07です。つまり、ひとりの女性が約2人子供を産み、育てることによって、人口を維持できると言われています。
では、現状はどうかというと……2022年の合計特殊出生率は1.26です。2023年の合計特殊出生率は1.20ぐらいになるんじゃないかと言われています。
つまり、現状として、人口を維持するために必要な合計特殊出生率について、現在は大きく下回っているという事実があります。
また、ここにポイントがあります。いまお話した2.07という合計特殊出生率は、「人口を維持するために必要な出生率」です。つまり、人口を増やすためには、さらに多くの子どもを産み、育てる必要があります。詳しく計算したわけではないですが、ひとりの女性が、3人とか、4人とか、そういった数の子どもを出生する必要があるということです。
未来のことはどうなるかわからないので、出産に対する何らかのサポートがあれば、ひょっとしたら不可能ではないのかもしれません。
ただ、実際問題としては「どうかな?」というのが、個人的な解釈です。
あと20年は「労働力人口」は減り続ける
もうひとつ、事実として……
子どもを増やすことも、もちろん重要なことですが、生まれた子どもが成人となり、働き始めるためには、少なからず20年はかかります。ですから、ここから先、20年は労働力人口――つまり、働く人の人口――は増えません。
推計データでは「人口は減り続ける」
あともうひとつ。
国立社会保障・人口問題研究所が、日本の将来の推計人口を推計しています。令和5年の推計データがあります。
データとしては、令和2(2020)年に国勢調査が行われた確定数を出発点とする、新たな全国将来人口推計ということですが、この中のデータのひとつに「総人口の推移」というのがあります。
このデータには、「子どもがたくさん生まれた(高位)と仮定したとき」「中位と仮定したとき」「低位と仮定したとき」という3つの数字が推計値として出ています。
このデータによると、2020年の国勢調査のデータに基づけば、2030年、2040年、2050年、2060年、2070年に向かって、総人口の推計値は、年を追うごとに右肩下がりです。つまり、年を追うごとに総人口は減っていくとなっています。
これは、あくまでも現在の推計なので、事実ではありません。ですが、一般的に「人口の推計は、もっとも現実と近い推計」だと言われています。ですから、ほぼ、この形になっていくのではないかと思います。
というわけで、「少子化対策で人口は増えるのか?」というテーマでお話してきましたが、この問いに対しては「人口は増えない」ということになります。
その結果、労働者が減り続けるわけですよね。少子高齢化が進み、子どもの数が減って、高齢者が増えます。そして、労働力人口は減っていくわけです。
労働者が減り続けると、今後どうなるのか?……というと、近年は「労働者を供給できなくなる社会になるんじゃないか」と言われ始めています。
明日は「労働者が供給できなくなる社会」という話をしたいと思います。じゃあ今日の話はこれで終わりにします。
次の記事:労働者が供給できなくなる社会
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