孤立感による大学生のメンタル不調・中退・自死を防ぐためのたった1つのお願い

大学中退予防を専門にしている大正大学の山本です。

コロナ禍による大学生の孤立感の深刻化が調査によって明らかになってきました。NHKは9月2日に「新型コロナウイルスによる学生生活への影響について、各地の大学が行ったアンケート調査で、中等症のレベル以上のうつの症状がおよそ1割の学生に見られたり、心の調子が悪くならないか不安と答えた学生が過半数となったりするなど、心への影響が浮き彫りになっています。」と報道しています。

翌日の9月3日、朝日新聞社が主催した大学教職員対象に行われた大学中退予防をテーマとしたオンラインセミナーに筆者は登壇していました。セミナーの中で行ったアンケートでは、8割以上の大学教職員が「コロナ禍で大学中退者が増える」と回答していました。

今日はコロナ禍による大学生のメンタル不調・中退・自死を防ぐためのたった1つのお願いをするために、勇気を出して筆を取ることにしました。

大学生がオンライン授業などを通じて作った友達と授業外で会うことを
①十分な感染対策を取ること
②少人数で会うこと
を条件に、社会的に受け入れていただけないでしょうか。

今春から取り組まれてきたさまざまな大学関係者の試行錯誤により、オンライン授業においても、大学生同士が友人関係を築けることがわかってきました。現在の課題は、
①大学教職員の間でのノウハウ共有と行動変容
②できた友達と対面で会えないこと
に移行しつつあります。

経営学の世界では、問題を「技術的な問題」と「適応の問題」の2つに分けて語ることがあります。前者は、新たな技術革新などによって解決するタイプの問題です。後者は、私たちの考え方や習慣、行動などを変えることによって、言い換えれば私たち自身が変わることによって解決できるタイプの問題です。

オンライン授業を通じて学生同士が友達になることに新たな技術革新はどうやら必要ないようです。既存のIT技術や教育技術を教員が適切に活用することで十分可能だということがわかってきました。そのような報告が、先駆的な大学教員から複数されています。今後、そのノウハウ共有と大学教職員の行動変容が進めば、特に大学1年生が「(対面授業が行われないので)新たな友達ができない」という問題は解決していきそうです。

しかし、「できた友達と会えない」という問題は解決されていません。友人関係において、オンラインでしか話したことがないことと実際に対面で話したことがあることの違いは、まだはっきりと分かっていません。しかし、友達と対面で会えないことで、大学生が心理的な孤立感を感じていることは、各種の調査(例えばNHKが報道した秋田大学・静岡県立大学・九州大学が実施した調査)からどうも間違いなさそうです。

新型コロナウイルスとの戦いは長期戦です。今マラソンのどのあたりを走っているのかもわからない、出口の見えない戦いを人類は強いられています。持続可能な戦い方が必要ではないでしょうか。

多くの大学生は、週末などに授業外で友達と対面で会うことを自粛しています。それは特に大学1年生に顕著で、筆者の周囲の1年生に聞いても、ほぼ自粛をしている様子です。

今の生活を続けていくと、孤立感による大学生のメンタル不調・中退・自死が発生しかねない、と大学中退予防の専門家として危惧しています。この生活スタイルは、持続可能ではないのではないでしょうか。

例えばです。十分な感染対策を取ることと少人数(例えば4人以下)で会うことを条件に、大学生が授業外で友達と会うことを社会として許容していただけないでしょうか。おそらくそれによって大学生の孤立感は大幅に緩和します。できた友達と週末などに対面で会えると分かれば、オンライン授業にもより積極的に参加するようになるといった教育上の効果も期待できます。

大阪府では8月31日で「5人以上の飲み会の自粛」を解除しました。中学・高校は通常通り対面授業を実施している学校がほとんどです。

大学が対面授業を全面再開できるようになるのは、おそらくワクチン普及後だと思います。日本政府は2021年前半までには国民全員分のワクチンを確保することを目指すと言っています。しかし、確保と接種は別であり、接種には時間が必要です。大学生のワクチン接種が終わるのは、2022年を待つことになる可能性もあると考えています。

コロナ禍による大学生のメンタル不調・中退・自死を防ぐために、せめて授業外でできた友達と会うことを広く受け入れていただけないでしょうか。

自粛を緩和するのに最も必要なのは「(授業外で友達と会って良いという)社会的なコンセンサス」だと思います。学生たちの未来を守るために、どうかご検討いただければ幸いです。皆様お一人お一人への”たっての"お願いです。

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