中小企業のソーシャルビジネス化と大学の地域貢献

元NPO理事長という比較的自由な立場から(ゆえにポジショントークではないと思っています)、今後のNPO業界の展望について書いてみたいと思います。

■これまで
①この20年くらいで社会起業家的志向・資質のある人は一通り起業した
②①の結果、一定の雇用が生まれ、起業ではなく既存NPO等にJOIN(就職)する選択も可能になった

■これから
③既存NPOからスピンアウトして起業する人が増加する
(自分の問題意識により直接的にアプローチする事業を立ち上げる)

■社会課題解決を加速するために仕掛けるべきこと
④中小企業のソーシャルビジネス化(のちに一部はグローバル展開)

現時点で③④が同時進行中です。10年後くらいには、社会起業家ブーム以前(阪神淡路大震災以前)に社会起業家的を活動を始めていた第1世代、阪神淡路大震災から2015年くらいまでの間に起業した第2世代、それらをスピンアウトして起業した第3世代、そしてソーシャルビジネス化した中小企業というのが業界マップになっているのではないかと予測します。

ところで④の実現には大学が貢献するだろうと思います。(大学だけが貢献するという意味ではありません。)具体的には、大学の研究部門や社会連携部門がこの役割を担います。大学経営視点で言えば、その役割を担えない大学は地域にとって存在価値なしという烙印を押され、地域と高等教育市場から(極端にいえば、ですが、)淘汰されるというシナリオです。

私自身、第2世代の社会起業家として15年間NPOを経営して、昨年大学の研究所に異動しました。いまは2つの研究所に所属しています。1つは地域創生に関する研究所、もう1つは大学経営に関する研究所です。その重なり合う部分は大学(の経営力強化)を通じた地域創生です。

その中でも④大学が中小企業のソーシャルビジネス化に貢献する、というチャレンジには自分の経験が多少は生きるのではないか。上記のような将来展望を持って、そのような活動を大学業界の内側でしていくことに社会的に一定の価値があるのではないか、と考えています。

それはさておき、特に、地域に根差した、高い専門性・技術力を有する中小企業のソーシャルビジネス化が社会課題解決の質量両面での拡大には肝要だと思います。日本には中小企業55万社、小規模事業者335万社あります。合わせて380万社。NPOは5万法人。中小企業・小規模事業者の1.3%がソーシャルビジネス化することでNPO5万法人と同規模、予算ベースでは数十~数百倍の拡大になります。

中小企業振興のベクトルは2つあり、グローバル化とソーシャルビジネス化だと認識しています。後者の一定数はソーシャルビジネス化ののちグローバル化を目指すのではないでしょうか。大学は研究(技術等)と社会課題・地域課題の両面に精通し、多くの教職員・学生が所属します。中小企業のパートナーを担う資質があります。

たまにこういうことを書くのもあまり気が進まないのですが(業界OBがでしゃばるのはよくないという価値観です)、この内容はあまり害がない、かつ、自分の本業に直結するテーマなのでこっそり投稿します。

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