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【耳読note】『俺たちの箱根駅伝 上下』池井戸潤

「箱根駅伝」は毎年正月にテレビで見ている。
おせちを食べながらとか、お酒を飲みながらとか
テレビをつけっぱなしにして、横目で見ている。

でも、2日間の「箱根駅伝」を最初から最後まで
テレビにかじりつきでじっくり見たことがない。

しっかり見ているところは
スタートと途中の走者の入れ替わりの場面と
往路、復路のゴールの場面だろうか。

上巻と下巻の2冊
実に読みごたえ(聴きごたえ)のある物語だった。

今、箱根で働いているので
なおさら、走行コースの描写などのシーンは
状況が目に浮かぶ。

(あらすじ・ネタバレ)
かつての名門校の明誠学院大学はここ数年「箱根駅伝」本選出場を逃している。そして今年も無念の結果に終わり、長年チームを率いてきたワンマン監督の諸矢久繁(もろやひさしげ)が引退を表明する。諸矢が指名した後任は、卒業生で在学中は名ランナーだったが、何年も陸上競技から離れていた商社マンの甲斐真人(かいまさと)だった。コーチ経験も実績もない人間が、いきなり歴史ある駅伝チームの監督になることに、内外に波紋を起こす。

この「箱根駅伝」を1000人体制で中継を行うのが大日テレビ。その箱根駅伝のチーフプロデューサーが徳重克己(とくしげかつみ)である。駅伝という競技を真摯にとらえ、選手ひとりひとりをフォーカスして誠実に、硬派な目で中継することを信条にしている熱血漢だ。しかし、テレビ局にいる人間はそんな同じ考えを持った人間ばかりではないから、一筋縄ではいかない。

箱根駅伝の本選に出場できない明誠学院大学は、主将エースランナーの青葉隼人(あおばはやと)が、「関東学生連合チーム」の選手として選抜される。そして、「関東学生連合チーム」の監督に、甲斐真人が担うことになった。駅伝の監督として何の実績もない甲斐が掲げた目標は「3位内」であった。関東学生連合チームは記録として残らないにもかかわらず…。まして各大学の寄せ集めのチームなのに…。

「箱根駅伝」を競技する選手や監督側からと、それを中継するテレビ局側からの、ふたつの視点から「箱根駅伝」にかけている熱い人間を描いた物語。

(感想・ネタバレ)
物語にもかかわらず、実在する大学名や監督の名前もでてくる。
またレースの場面は、その区間ごとの地理やコースの描写もリアルで、
状況がスッと目に浮かんでくる。
臨場感が伝わってくる。

あらためて「駅伝」という競技は個人戦でありながら
チームや仲間のためにというメンタルな要素が多くあり
団体戦であると感じた。

また、「箱根駅伝」特有の走る距離の長さと
異常なほどのアップダウンがあることから
「トラック競技」での記録は参考にはなるが
あてにはならないことも良くわかった気がする。

その日の「天候」も結果を大きく左右する。

「個人」×「チーム」×「監督」×「メンタル」×「天候」・・・・
何通りのかけ合わせからの「解」があるのだろうか…。
だから、予想通りにいかないから「箱根駅伝」は面白いのだ。

まさに「駅伝の神様」がいるのだと感じてしまう。

ひとりひとりの選手の「駅伝」にかける思いは違う。
育ってきた環境も違う。
表に出ない「背景」をいかに取材し言葉にして視聴者に伝えるのか。

甲斐監督や徳重を通じて感じたこと。

「伝統」の難しさ
「変えてはいけないもの」
また「変えなくてはいけないもの」

これはスポーツの限ったことではない。
あらゆる「組織」に当てはまることだと思う。
この物語から組織論も学べたような気がする。

スポーツにかける青春ドラマ
久しぶりに熱いものを感じ「心の汗」を流せた。

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