SFの世界はもう実現可能なレベルにきているのだ。この状況に対抗するには「どれがホンモノか?」を特定しにくくするしかない。

『しかし、なぜアップルがこの通知を出し続けるのかについて、考える必要がある。スマートフォンが取得している位置情報、すなわちあなたの居場所を、アプリがバックグラウンドでいかに多く活用しているのかを可視化しているにすぎないからだ。裏を返せば、今までわれわれが知らないうちに、いかに多くの情報がアプリや広告、それらを運営する企業に渡っていたかを物語るものだ。アップルは11月7日、プライバシーに関する情報をウェブサイトに掲載した。アップルはプライバシー問題について、率先してアピールしてきた企業の1つだ。とくに2016年にトランプ大統領が誕生したアメリカ大統領選挙などのキャンペーンにフェイスブックのユーザー情報が活用されていた問題では、世界最大のSNSプラットフォームを厳しく批判したことも記憶に新しい。ティム・クックCEOは、プライバシーを守るためには規制も辞さないとの考えを示し、App Storeでもプライバシー情報の活用を厳しく管理・可視化する仕組みを整えてきた。基本的な方針として「データ収集をできるだけ少なく」し、「極力自分の端末の上に保存・管理」する形で、透明性・セキュリティーに配慮しながらプライバシーを守る、という考え方が敷かれている。そんなアップルも完璧ではない。音声アシスタントSiriを育てる過程で、Siriへのリクエストの音声データの解析を、匿名化しながら第三者企業に依頼していたことが明らかとなり、すぐにそのプログラムの中止を表明するなど、後手に回る場面も見られる。今回のプライバシー対策のアピールと白書の公表は、業界をリードした取り組みを進めている点を示すと同時に、襟を正す意味もあるのではないだろうか。~ウェブサイトではアップルがどんな対策をしているかを紹介しているが、これらがわれわれのスマートフォンとともに過ごしている生活の中で、「プライバシー保護が当たり前」ではないことを表している。例えばウェブブラウザーであれば、グーグルなどで興味のある情報を検索して製品のページを見てからほかのニュースサイトを見ると、自分が興味のある製品や分野の広告がバナーで表示されていることに気づく。車が好きで車の情報を調べていれば、バナー広告は車だらけになっていくのだ。~このように、アップルが「やらない」と言っていることの真逆が、当たり前のように行われているのが現在であり、われわれのプライバシー情報が知らないうちに活用され、ビジネスが生み出されている。無料で提供されるサービスを広告費で賄っている構造もあり、こうしたテクノロジーが完全に悪だともいえない。しかし善しあしを判断する手前の段階、すなわち「知らない」という状況から脱することは、重要な1歩であると感じた。アップルは欧州で個人の情報を厳しく管理するGDPRを支持する表明を行っており、そうしたスタンダードが敷かれることは、むしろアップルの姿勢が競争的に優位になるとすら考えているはずだ。アップルはプライバシー情報をiPhoneに極力閉じ込めながらも、機械学習を活用できるようにするため、機械学習処理に長けた独自開発のスマートフォン向けチップを開発し、iPhone Xから採用を続けている。その一方で、例えばフェイスブックの情報流出には、少なからずiPhoneでフェイスブックを利用しているユーザーも含まれていた、アップルがいくら取り組んだとしても、プライバシーの基準が低いアプリをiPhoneで使うことができれば、アップルが言うようなプライバシー対策が意味を成さないことも明らかとなった。ユーザーが使いたいという以上、そこに制限をかけることができないプラットフォームとしての立場であるからこそ、今回アップルはプライバシー対策を訴え啓蒙していこうとしている。ユーザーであるわれわれも、自分ごととして、手元にあるスマホで何が起きているのかを知る必要があることは、言うまでもない。アップルはプライバシーというトピックが他社に広がることを歓迎する姿勢だ。テクノロジーを扱う人類の権利や安全保障が向かうべき道だという主張には、テクノロジー企業もユーザーも反論することは難しい。しかしプライバシー競争となった場合、アップルが優位に立ち続ける準備が整っていることもまた事実で、他社にとってはビジネスモデルの転換や新たな仕組みの開発など、コストを伴う変化を迫るものだ。アップルが自分の土俵に引き込みたいという意図があることも透けて見える。~われわれは日本という、治安がよく、権利が守られている国で過ごしているため、プライバシーが自分の生存を脅かしかねない問題である、という意識は薄いかもしれない。しかしそれは未来永劫の権利でないことを意識すべきであり、コントロールするだけの知識を蓄えておく必要がある。』

今のヒノモトの場合、一見「治安が良く、権利が守られている」と錯覚するのだろうが、街中に設置されている「防犯カメラ」と「顔認証」「歩行解析」等の技術を応用すれば容易に個人の特定と行動追跡ができてしまうインフラは既に十分な状況にあると私は思う。SFの世界はもう実現可能なレベルにきているのだ。この状況に対抗するには「どれがホンモノか?」を特定しにくくするしかない。

アップルが警鐘「スマホに抜かれる個人情報」
なぜ「検索した物」の広告が表示されるのか
https://toyokeizai.net/articles/-/312805

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