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展覧会レポート 谷川俊太郎 絵本★百貨店 清須市はるひ美術館

会期 2023年9月9日(土)〜11月26日(日)

刈谷市美術館で開催されていた和田誠展。会期を間違えて、無料券を持っていたのにも関わらず、行けなかった無念を晴らすべく出かけたのはこちら。

谷川俊太郎が手がけた200冊におよぶ絵本の中から約20冊の絵本を取り上げる。クリエーター、アーティスト、建築家などによるインスタレーションや原画展示。大人も子どもも楽しめる展示となっている。

企画協力が「ブルーシープ」東京立川にあるPlayMuseumも運営しており、美術館の企画運営も実施。なんと逃してしまった和田誠展の企画にも携わっていたことがわかり、またここで落ち込む私。逃した魚は大きい。

図書館も隣接。天気も良く開放感に気持ちも上向きに。

さて気を取り直して館内へ。
「ことばあそびうた」から、かっぱかっぱたった…の詩にちなんだ、けんけんぱのインスタレーション!すでにワクワクが溢れてくる。

館内

「まるのおうさま」の動画が投影されている横には長新太が絵を手がける「えをかく」。谷川俊太郎自身が朗読する音声が流れている。

気になるドーム状の展示は「おならうた」。絵を担当した飯野和好氏の代表作は「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズ。

今回の展示で嬉しいのは、全展示において、実際の絵本が共に設置されており自由に手に取れるところ。初めて読む絵本も多いため、絵本を読んでから原画を見るとさらに楽しめる。

おならドーム
おなら感満載。さすが。

「おならうた」で一番好きだったのはスカした顔した芸者さんの場面。おならの音も「スー」となっていて、思わずクスッとしてしまう。
ドーム内には原画が設置されていて、さらに様々なおならの音が鳴り響く。ドームの骨組みに丸型にくり抜かれたプチプチシートが重なるように貼られていて、吹けば吹き飛ぶ感じも。なんとなく中に入るのも憚れるような、おなら感が面白い。

そして今回一番綺麗だと感じた原画で、印刷された絵本と原画の色味の違いがさほど感じられなかったのがこちら

「ここはおうち」 絵 junaida

今年2023年に発行された新しい絵本。
緻密で美しく、物語性が高い絵で、海の中のような海洋生物と主人公が泳いでいる原画は、欲しい!と思うほどいつまでも眺めていたい美しい空想絵画だった。

印刷されることが前提の絵本の原画は、ホワイトなどで修正されているものを見ることも少なくはない。でもこちらは1枚1枚が作品で、素晴らしかった。

初めて出会う画家だなーと思っていたら、企画協力しているブルーシープが出版している絵本。さらに大回顧展も企画している模様。

谷川氏のことばがあって、そこに合わせて絵を描いていくのではなく、お互いの進捗状況を鑑みながら絵とことばが混じり合っていった「往復書簡のような」作品なのだそうだ。

館内奥

ゴリラ型ついたてに展示されているゴリラの絵本「オサム」の原画はあべ弘士氏の作品。
いいやつって周りから言われるけれど、自分ではそうは思っていないオサム。いいやつになりたいと思いながら平凡な生活を送る姿に、なんとなく宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の一節が思い浮かぶ。

ゴリラの隣壁に展示されているのは写真で絵本を作ることを挑戦した「なおみ」。写真家と制作。日本人形と人間の交流と別れを通した時間を主題とした絵本。これも朗読士が朗読している音声が流れているのだが、人形の写真と相まって「怖さ」も感じた。

生と死を主題とした絵本「かないくん」と「ぼく」。「ぼく」の最終ページには谷川俊太郎からの「死なないで」というメッセージも。

「かないくん」の原画や絵の構成が物悲しく、死の儚さを感じさせられる。
時と共に祖父から孫への視点変化も秀逸。
最後のシーン、雪煙の隙間から垣間見える女の子の表情が絶妙。
すでに脆くなっている私の涙腺は即崩壊。

一番楽しみにしていた和田誠の展示は、原画はなく、建築家による椅子の展示だった。大好きな絵本「あな」。ただただ穴を掘る絵本は私の幼少期から、娘たちにも読み継がれて、ボロボロだ。「のみのぴこ」も和田氏の作品だったとは。刈谷市美術館の展覧会と会期が被っていたこちらに展示されるわけはないとは分かってはいたが。残念。

もこもこもこ 絵 元永定正

「もこもこもこ」も乳幼児期の子どもに人気な絵本。世界観をそのままにした映像をゆったりしたスペースで見られるようになっていた。平日だったから誰もおらず。一人で満喫。

2階に上がると、また面白そうなインスタレーションと、絵本の展示。

コップの新しい見方を通して、考え方の世界を広げる認識絵本として、写真家と組んで制作された「こっぷ」。とても50年以上前に出版された本とは思えない表紙のモダンさ。福音館書店から出版されている。「かがくのとも」の出版開始が1969年のようなので、こう言った斬新な絵本も躊躇なく制作できたのかなとも思う。
ヨシタケシンスケ氏の絵本とも通づる何かを感じる。

戦争を主題とした絵本が並ぶ
「お母さんだって嘘ついてる」
開けろってこと?!

谷川俊太郎と、有名絵本作家とのコラボレーションに、思わず手を伸ばしたくなる本ばかり。

小規模ながらも、体験を通して楽しめる展覧会。
東京立川で展示されていたものが展示されていないなどもあったが、非常に楽しめた展覧会だった。

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