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【140文字の小説】戀う3

薄くもやのかかった目で、病室の天井を見上げておばあちゃんは歌う。
私の知らない歌。
唐突に、おじいちゃんが後を追う。
道に迷った蛙のような声で、歌う。
「下手くそ」
おばあちゃん、辛辣。容赦ないね。
おじいちゃんは、少し肩をすくめて笑った。
人の笑顔が美しいと感じたのは、その時が初めてだった。



#おじいちゃんおばあちゃんへ


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