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自分が本当にやりたかったことを振り返ろう - 井領さんから学んだこと(1)

地方でSaaS導入支援会社を起業して3年、階段から降りられなくなった」というnoteの投稿が、Facebookのタイムラインに流れてきたのは、2019年11月初旬のことだった。すぐにTwitterで連絡を取り、取材をご快諾いただいた。11月15日には井領さんの元を訪ね、ご多忙であろう中、3時間半もの時間をいただき、色々な話をした。

そう、私は井領さんと話をした。井領さんにインタビューをしたのではなかった。一方的に聞き出すだけではなく、共感のあまり私の思いの丈もぶちまけた。本当に、正直な気持ちを。そうした対話の中からエッセンスを抽出してまとめたのが、アスキー Team Leadersに掲載された「SaaSは地方の中小企業を救えるのか?ある経営者の絶望と再生」という記事だ。

本当はもっともっとたくさんのことを話した。記事として重くなりすぎないよう、話題を絞り込んで、自分の身を削るような思いで書いた。このnoteでは、不本意ながら削り落とした部分をアウトプットしていきたい。記事では「井領さんはこう語った」という形式だったが、こちらでは私の思いも織り交ぜて語りたいと思っている。

執筆中のフラッシュバック

井領さんの話を記事にまとめているとき、井領さんが自分の会社に出社できなくなったくだりで、不覚にもフラッシュバックを起こしてしまった。そのまま翌日も動けなかったので、書きかけの原稿は二晩も放り出されることになった。なんとか仕上げねば。気力を振り絞って起き上がり、三日目にして原稿は完成したのであった。

布団にくるまって過ごした、中一日。鬱で休んだときのことを思い出していた。

鮫とオオタニと私」など他のノートでも触れていることだが、私は鬱で休業していた経験がある。そのとき、井領さんと同じように私も「自分は本当は何をしたいのか」と考えたのだった。仕事を回さなきゃ、と目の前の案件に振り回されていたけれど、一度休んでしまうと不思議と気持ちは静かになった。休んじゃいけない、そう考えて必死に回していた日々。でも一度すっぱり休んでしまうと、「もう休んじゃったし」という開き直れたような気がする。「あの時間があってよかった」なんて前向きに語るには辛い日々だった。味わうことなく日々を過ごすことができるなら、その方がいいだろうと今でも思う。でも、私も井領さんも、そういう時間を持つことで自分の向かう方向を考えることができた。いや、そういうことでも起きない限り、自分の向かう方向をじっくり考えられないような不器用な人間なのかもしれない。井領さんから感じた実直さ、それは不器用さや、自らの思いを曲げられない芯の強さの表れだったのかも知れない。

「今の地方中小企業は、各ステークホルダーの関係が歪だ」

井領さんはそう語っていた。「いびつ」とは「不正」と書く。正しい姿ではないということだ。この「歪」から「不」を取り除きたいと井領さんは繰り返した。だから次のエントリでは、地方中小企業をとりまく「歪」について語ろうと思う。

(ヘッダ画像制作:重森 夏)

井領さんから学んだこと(2)
井領さんから学んだこと(3)

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