
まちを一つの職場に。地域でつくるプラットフォーム、「つつうらうら」の立ち上げに携わって。
「つつうらうら」というサイトが公開されました。
浦幌町の事業で、ハハハホステルなど浦幌町の宿泊事業などを手掛ける株式会社リペリエンスが受託を受け、事業の情報発信に係る部分のコンセプト設計とサイト制作の支援をドット道東で担いました。
サイトの設計自体はシンプルなものなのですが、このサイトがどのように使われるといいか、どのような町の雰囲気なっていくか、がとても大事だと思いながら仕事を受けさせてもらいました。ただ「サイトがオープンしたよー」というだけでなく、リペリエンスさんと会話をしていく中で、色々と思いを込めて用意したサイトなので、ここに書いておきたいと思います。


つつうらうらって?
この事業の出発点は、浦幌町の移住定住や関係人口を促す、という日本全国の地域がどこもかしこも抱えている課題に対しての取り組みでした。
地域には「地域の働き手不足の解消」と「就労したいと思う仕事や職場の創出」が課題としてありますが、ここ浦幌でも現在進行形の課題とされています。
ただ地方で住んでほしい!とうたうだけでは当然きてもらえるわけはなく、浦幌での暮らしや仕事を体験してもらうことなど、浦幌と関わる小さなきっかけを作っていく必要があるのではないか。就労体験ができる環境を整備することで、働きたいと思ってもらえる種まきができるのではないかということで事業が進んでいったと聞きました。
(2021年から運営を開始したハハハホステルで、多くの若者が行き交いはじめたのもいいきっかけだったのではないかと思います。)
そこで町内で体験などを受け入れてくれる事業者がいるかリサーチを進めていくと、受け入れてくれる事業者は複数あり、かつ求人をしたい、採用に困っている、という事業者も見えてきました。
このタイミングで、興味のある人にどのように情報を発信し、浦幌に来てもらえるような仕掛けができるかという相談をもらいました。
・多くの人、特に地域外の人に地域の情報を見てもらいたい
・情報のリアルタイムな変動に対応したい
という点などからまずはWebでの情報が発信が最適そうだとなり、求人サイトのような情報を発信するプラットフォームが必要だという話になりました。
しかし、サイトを作っただけでは課題は解決しそうにありません。なぜなら、浦幌の仕事をWebで掲載したとしても誰が見るんだ?誰がどこからアクセスするのか?という課題にぶち当たるからです。
「浦幌 仕事」で検索をする人なんてほとんどいません。よくある求人サイトに掲載するであっても、浦幌町という場所が選択肢として選ばれることはあまり多いとも言えません。
そこで提案したのは、求人サイトではなく、浦幌の情報が様々に集まる「ポータルサイト」にして、このサイトと事業を「地域の人と育てていく」という流れにしていこうということになりました。
事業者や体験情報だけではなく、「浦幌に関わった人たちが作った情報が集まる」というようなサイトにしていこうと。
そして、そこにはもう一つ、町も、受け入れ窓口のリペリエンスも、町の事業者も一緒になって取り組んでいくことができるように、という思いも込めたのです。
まちを一つの職場に。への思い
サイトを設計する上で、このサイトが出来上がることでどのようなことが起こってほしいか、起こってほしくないか、という議論も重ねました。
そこで私が起こってほしくないこととして伝えたのが、
「求人を募る事業をしたら『全然、人が来ないじゃないか』と言われてしまう可能性がある。」
これは私の経験に基づくことなのですが、私は前職で農業に特化した求人サイトを運営する会社に勤めていました。事業者の求人PRの相談や就職希望の方の相談を受ける仕事をしていたのですが、必ずこういった指摘を言われることがありました。
「求人を掲載したのに人が来ない。来たとしても長続きしない」と。
もちろん、運営側にも非が部分もあるかと思いますが、果たして全て運営側に責任があるかというと、そうではないと思っていました。
人材を募集するためには「働きたいと思える条件やビジョン」が必要です。誰でもかれでも応募をしてくれるといって来るわけがない。
そういう人任せの認識ではなく、お互いが必要なことを持ち寄って課題解決を前向きにできる雰囲気を作っていけたらいいし、そういうきっかけを事業運営を通してできるといいなと考えました。
前職でも採用が徐々にうまくいく事業者からはこんな質問をたくさんもらっていました。
「なぜうちは応募が来ないんだろうか?他の事例を教えてほしい。」
「従業員が長続きする企業はうちと何が違うんだろうか?」
だから、つつうらうらを作る上で、事業者の方からは「一方的に応募が来るサイト」ではなく、地域一丸で、一緒に前向きに取り組めるものになるように思いを込めています。
事業を通して、リペリエンスと事業者がどうやったら働きたい人が集まるかを議論する、事業者同士がうまくいっている方法を共有し合う、課題を共有しあって、一緒に解決策を考える議論ができる土台ができていくといいよね。ということを話をしました。
そして、もう一つ
もし最初に入った企業が合わずに退職したとしても、まだ浦幌町にいたいと思える雰囲気や仕組みを作っていく
前職で私が本当にもったいないなと思っていたことがあります。
それは「辞めた人がその町から、北海道から出て行ってしまう」ということです。
私が「農業をしたい」と相談を受けていた人の多くは、北海道外から移住をして新しい仕事に挑戦をする人でした。でも、うまくいかずに辞めてしまうということもたくさんありました。
その人たちの大半は辞めてすぐ「その町を離れる、北海道すらも離れる」ことがほとんどでした。
せっかく北海道に来てくれたのに、北海道すらも離れてしまう。こんな機会損失はもったいなさすぎる。。。。移住定住なんていうことを声高に言っているにも関わらず、この町にいてもらうためにどうすればいいかなんて考えている経営者は意外と皆無だったりしました。
せっかく町に来てくれたのだから、何度でも受け入れる土壌が育てばいいのにと。
例えば、浦幌町の酪農家で働きはじめた人がいるとして、仕事や人間関係が合わないと思って辞めたとしても、また浦幌の違う業種で働いてみる。そんなことを思えるように環境ができたらなと感じているのです。(とても難しいのはわかっている)
そのために、仕事だけではなく「町を好きになってもらう」「仕事以外の居場所ができる」「再挑戦を応援できる」そんな状態が溢れればいいよね、とそんな議論を重ねていきました。
そういう議論を重ねながら、コピーライターの荒水悠太さんにも入ってもらい、整理し、整えてもらったコンセプトが、
「まちを一つの職場に。」というコピーでした。

最高すぎる。
サイトができて終わりではなく、ここからが出発点。
つつうらうらを介して、町と受け入れ窓口と事業者が、事業者と事業者が、働く人と働く人が、手を取り合って、前向きに積み重ねていく。そんなことが意識できるサイトになればいいなと思っています。

町に関わる人で情報を積み重ねていく
つつうらうらを「町の人で少しずつ育てていくもの」になってほしいという思いも込めました。
記事を投稿できる機能があるのですが、リペリエンスが記事を書き溜めていくだけではなく、浦幌町民はもちろん、浦幌町で関わったことがある人がどんどん記事を書き、情報が積み重なるものになってほしいと思っています。
「滞在した人」が浦幌の滞在がどうだったかを書いてみたり、
「社長」が事業への思いを書き記す場所にしてみたり、
「地域の中学生」が職場体験をしたときのレポート記事に使ってみたり、
浦幌に関わる人が浦幌のことをどんどん書くことができるプラットフォームにすることができます。
また「地域の情報は普段から地域に住んでいる人こそが一番のインタビュアー」だとも思っています。
一番何気ない素の一言を引き出せるのは、普段から仲良くしている友人だと思うし、
その人の笑えるネタをそもそも知ってるのは昔から知っている地域の人だと思うし、
飲食店のおすすめを知っているのは普段からそこに通っている常連さんだし、
その地域の情報は地域の人が一番知っている。それを地域で書く人が増えれば、自然と町の情報は増えていき、活きた情報が溢れていく。
書いて伝える土壌をこの「つつうらうら」があることで育っていくといいなと思っています。

そして、その地域の人たちで作り上げたリアルな情報こそが、次の人の行動を促すことにつながるはずです。
地域に移住定住を促進する、社員を雇いたいと思ったときに、
「この仕事をしてみたい」
「浦幌に住んでみたい」
そう思ってもらう必要があります。そのためには「行動を移すための動機」が必要です。求人をPRするときに私がいつも伝えるのは「その会社で働く理由をいくつ作れるか」ということなのですが、日々の積み重ねたリアルな情報にはその「行動を促すために動機」が溢れることになると思っています。
動機とは例えば
働く理由として「給与がいい」「休日が多い」というものがあると思います。もちろんいいと思います。それだけではなく「社長のビジョンに共感した」「スタッフのやりがいが素晴らしかった」「私も一緒に事業の価値を高めたい」だとかのビジョンや普段の取り組みについての共感を増やす。
住む理由であれば「生活コスト低い」「子育て支援が充実」などと合わせて、「ここで暮らす人が好き」「みんながイキイキしていてここで暮らしていきたい」など
そんな前向きな理由をたくさん作ってあげることが、地域に来る理由・働く理由になり、行動にうつしたくなるし、そういう情報がつつうらうらで貯まっていくといいなと思います。
浦幌であればできる雰囲気がある
そして最後に。これは浦幌町だからこそできることなんだろうなとも思っています。
私自身、2016年から十勝にきて、浦幌のことを知ったのもそれからの素人みたいな分際ですが、浦幌には、地域外から移住して活躍する若者、そしてそれを温かく迎える町の人、そして今では町出身の若者も戻ってきて起業をしたり仲間の事業をサポートしたりという動きが加速しています。
それにこの事業を、20代半ばの事業者の小松くんに託した町も、それを託された小松くんもすごいです。
そんな雰囲気が伝わる紹介記事もドット道東の#道東ではたらく で紹介しています!ほんとに若い人がきてることが理解してもらえるかと。そして、小松社長の金言がすごい。

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