コンクリートジャングルは何処
東京に住んで半年になろうとしている。王子にあった仮住まいの部屋も5月の半ばに引っ越して、埼玉県との県境に限りなく近い自然豊かな池のそばに1LDKの部屋を借りて住んでいる。家を出て20秒ほどで緑豊かな公園があり、さらに3分ほど歩いて土手の階段を登り切ると、ただっぴろい河川敷の緑が広がる。私はこの土手伝いに、毎朝毎夕自転車を走らせる。片道約5kmの通勤ルートのおよそ半分は荒川の向こうに広がる埼玉県の建物を臨みながら、気持ちよく自転車を走らせる。
私が東京にイメージしていたものは、眠らない町であり、東京砂漠であり、コンクリートジャングルであり、そして何より恐ろしい灼熱地獄であり、たまにゴキブリが羽をばたつかせ飛んでくるテラフォーミングな町であった。人々は皆仮面をかぶり、嘘で武装する灰色の生き物のはずで血の色も青色と決まっていた。半年暮らしてみて、東京や東京人にそんな一面が垣間見えないこともない。しかし、そんなネガティブトーキョーは、今住んでいる河川敷を走ると一遍に吹き飛ぶ。
「そこはトーキョーではないからね。」と誰かが言うかもしれない。確かに皆がイメージするステレオタイプのトーキョーとは違う。あ、でもあった。この景色、昔の金八先生のオープニングだ。自分が小学生だった頃に放映されていた昭和のドラマの風景が、今の私の住まいの徒歩圏にある。これが私のトーキョーで、その意味で大好きになれそうな町なのだ。
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