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予防接種の有効率って?

新型コロナの予防接種が話題となっていますね。有効率が95%なんて聞くと期待が膨らみます。でもワクチンの有効率が95%ということは、接種すると95%はCOVID-19にかからないってこと?実際はもう少し複雑です。

有効率は1-(接種者罹患率/非接種者罹患率)で計算されます。
10000人にワクチン(実薬)を接種、10000人にプラセボ(薬が入っていない偽薬)を接種したと仮定します。そのうち実薬接種者で発病した人が5人、プラセボ接種者で発病した人が95人とします。表に書くと以下の通りです。       

そうするとこの場合の有効率は(1-0.0005/0.0095) X 100=94.7%となります。有効率は被験者の数が十分に多く、感染者が多い状況でないと実状を反映しにくいことがわかると思います。日本のように人口あたりの感染者が欧米よりかなり低い状況では難しくなりますね。抗体獲得をチェックする方法もありますが、抗体上昇が臨床的効果と必ずしも相関しない場合もあります。

わかりやすいので10000人にしましたが、実際のファイザーやモデルナの治験では3〜4万人に接種されて、似たような結果となっています。統計学的解析はされているとは思いますが、接種して発症しなかった人に関しては、曝露しなかっただけなのかもしれませんし、不顕性感染(感染したが症状がない)の場合は感染のチェックが行われなかったかもしれません。論文の詳細がまだ出ていないので、ここはしっかりチェックしたいと思います。他にも、ワクチンによる免疫がどのくらいの時間効果を保つのかも知りたいところです。接種群の追跡調査をぜひともお願いしたいですね。

今のところ接種による副作用は倦怠感や局所の腫脹、発熱、関節痛程度で強い副作用はなさそうですが、デング熱で見られるような、つくられた抗体が免疫反応を強く誘導し、かえって重症になるADE(Antibody Dependent Enhancement)という現象が懸念されています。実薬を接種してCOVID-19に罹患した人は少ないですから、ADEが起こるかどうかに関してはまだよくわからないということでしょう。

というわけで、ワクチンの正確な評価にはまだ時間がかかりそうです。私は医師ですので、早期に接種することになるでしょう。絶対数が少ないので判断は難しいですがそれなりに効果はありそうです。でも不安が拭いきれないというのが正直なところです。

通常は最低3~5年かかる開発期間の短さや、もともとコロナウイルスなど風邪のウイルスにはワクチン作製が難しいことも気にかかります。輸送・保存条件の厳しさ(冷凍。特にファイザーのワクチンは−70℃)は特に発展途上国での普及の足枷となるでしょう。それでも予防接種を行うことには私は賛成ですし、うまくいけばその利益ははかりしれないかもと思っています。みなさんはどう思われますか。

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