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【小説】カノコユリの香り

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#最終話

【小説】カノコユリの香り⑹了

 昼過ぎに人身事故が発生したらしく、夕日の沈みかけた今になっても、ダイヤには多少のずれが生じている。
 普段よりも人の多いホームで電車を待ちながらインターネットを見ると、どうやら若い女性が身を投げたのではないかということだった。
 そのニュースは、確証もなしに、私を激しく後悔させた。あの時、もっと優しくしていたら、あるいは。私なんかではなく、もっと懐の深い誰かが相手をしてやっていれば、もしかしたら

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