【STORY 2024-25 vol.6】 游艾喆|海を渡った台湾のNEXT STAR!華麗なパスで湖国を魅了
りそなグループ 2024-25シーズン B.LEAGUEで、2シーズンぶりにB1の舞台に戻ってきた滋賀レイクス。Get Louder!をシーズンスローガンに、ホームアリーナを熱く沸かせる戦いに臨む選手のストーリーを紹介します。
第6回目は#7 游艾喆選手です。
同世代・河村勇輝を意識し日本へ
台湾の次世代を担う逸材が、滋賀レイクスでプロキャリアをスタートさせた。今シーズンからアジア特別枠として新加入した游艾喆。今年、台湾の国立政治大学を卒業したばかりの"新卒"だが、すでにA代表デビューも果たしているポイントガードだ。2022年7月には「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」のアジア地区予選window3の日本戦にも出場。游が22分出場し4得点3アシスト3スティールをマークしたその試合には、テーブス海や富永啓生、吉井裕鷹、そして河村勇輝といった、後にワールドカップやパリオリンピックで日本のバスケ人気を爆発させた面々が出場していた。
游は今シーズンがプロ1年目となる。大事なキャリアを日本で始める理由は、その河村勇輝の影響があったという。
「プロ選手になることを意識したのは大学1年の頃。当時、Bリーグでは台湾人がプレーしておらず、自分が日本でプレーするイメージもありませんでした。でも、同じ頃に日本代表の河村選手を知ったことで日本のバスケットに興味を持ちました。河村選手と私は年齢が同じで、同じように身長が低いポイントガード。初めて彼を観た時はプレータイムがそれほど長くはなかったけれど、どんどん成長して日本代表の中心選手になっていった。日本バスケットの発展も重なって、彼は世界大会でも強烈なインパクトを残していきました。彼の成長スピードは凄まじい。もし自分も彼がプレーするBリーグに身を置けばどうなるだろうか。それが日本を選んだ理由です」
台湾で大学選手権4連覇を達成し、個人タイトルも総なめ。学生時代にA代表デビューを飾っていた游の元には、中国や台湾など複数チームからオファーがあった。それがなぜBリーグ、そしてレイクスだったのか?
レイクスへの加入はオーナーでもあり、今季から編成にも大きく関わることになった中山太プレジデントオブバスケットボールオペレーションズ(PBO)との出会いが大きかった。中山PBOは積極的に台湾まで足を運んで彼を口説いたという。まるで「三国志演義」の中で主君・劉備が何度も山奥へ赴き、諸葛孔明を軍師に招いた「三顧の礼」のようだ。レイクスが游の将来性を大きく評価していたことを物語るエピソードである。
質の高いパス研究で四度のアシスト王
游の持ち味は「パスの質」である。バスケットボールを始めた小学2年の頃からずっとポイントガードをしてきた経験値、そして日頃の探究心でクオリティを高めてきたようだ。
「大学ではサイズの大きい選手との対戦が増え、今まで以上に小さい自分が生き残る道を模索するようになりました。練習からさまざまなシチュエーションを考えてパスを出し、そこで失敗した反省を試合で活かすサイクルを繰り返してきました。休みの日にはたくさんの試合映像を観て、良いパスだけではなく、ターンオーバーの場面も凝視します。自分ならどんなパスを出すだろうか、どうすればターンオーバーを回避できるだろうかと想像しながら。いつも試合で良い判断ができるようにと考えています」
游は大学時代にアシスト王に4度も輝いている。意表をつくノールックパスもあれば、鋭いキックアウト、アリウープパスなどバリエーションも豊富だ。華麗なスキルはレイクスのホームコートを沸かせるだろう。だが、パスが"うまいポイントガード"が游の目指す最終形ではない。
「大学での成績は1試合平均10得点くらいでしたが、スコアラーと言えるようなプレーヤーではありませんでした。得点力は自分の課題です。まだBリーグでプレーしていないので状況がわからないけれど、もう少しスコアとパスのバランスを取らないと良い選手にはなれないでしょう。それこそ河村選手のように。スコアが増えれば、パスの幅も広がると思いますから」
レブロンがヒーロー、強烈な存在感を
子どもの頃から憧れ、プレーを参考にしてきたのはレブロン・ジェームズ(NBAロサンゼルス・レイカーズ)だという。
「僕にとってのヒーローは今もレブロンです。強烈なリーダーシップがあって、何でもできるところは自分のめざすスタイルです。コートに入ったらチームメイトを助け、自らのプレーで勝利に貢献できる、レブロンのような選手になりたいです」
大学ではアシスト王4回だけではなく、新人王1回、スティール王4回、そしてMVP2回という個人タイトルを手にしている。ここに得点力が加われば…。台湾のバスケファンから大きな期待と注目を浴びて海を渡った游艾喆。だが、同じくらい彼の成長を楽しみにしているのは、湖国の熱いブースターでもあることは間違いない。