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SILVER TONEが伝える、「福島の今」《後編》

この記事は、『SILVER TONEが伝える、「福島の今」《前編》』の続きです。

■SILVER TONEが、福島の声を届ける理由。

トークセッションが終わり、ステージチェンジの間に、リーダーの西山範彦さんが今回のイベントの経緯を話します。

図8

西山さんたちは、笠岡ベイファームでNPO法人シャロームさんがつくっている「ひまわりプロジェクト」のひまわり油と出会いました。

ひまわりプロジェクトとは、シャロームさんがひまわりの種を全国に配り、各地で育ったひまわりの種を使って、ひまわり油をつくる取り組み。震災以前からシャロームさんが障害のある若者と農家さんたちと6次産業化させたひまわり油だが、3.11の土壌汚染によって生産・販売を断念せざるを得なくなってしまった。そんな中、県外の支援者の「来年からは種を送ってください。私たちがひまわりを栽培し、ひまわり油の原料としての種を送り返しましょう」という提案から、このプロジェクトが立ち上がった。

NPO法人シャローム ひまわりプロジェクト

ひまわり油と出会った西山さんは「自分たちで(自分たちの強みを生かして)できることはないか」と思い、まだ岡山に伝わっていない福島の生の声を届けるべく、今回のようなイベントを開催するに至りました。

2年前から「ふるさとふくしま交流・相談支援事業」にも団体として採択され、大学生のボランティアスタッフなど、関わる人たちの円も広がっています。

■響け!僕らのMUSIC

続いては、SILVER TONEさんのライブパフォーマンス!
会場を、素敵な音色で包みます。

図9


"歌"って、どんな力を持っていると思いますか?

図14

【小杉さん】
言葉を伝える力
だと思います。
言葉をすごく大切にしています。

歌詞をつくるとき、みなさんから言葉をいただいて、よりその人たちの思いが伝わるように、募った言葉の中からチョイスして。

メロディーをつくるときも、この言葉はどんなメロディーだったら伝わりやすいんだろうということを考えながら、曲と歌詞をつくっています。作り手にそういう思いがあるので、聴いてくださる方も「こういう思いをもっているんだ」というのが歌で伝わりやすい。分かりやすく表現することを意識しています。

福島や南三陸で歌ったりするときに、泣きながら感想を言ってくれる方や「すごく伝わったよ」と言ってくださる方がいるので、そこを大事にしたい。

会話とかでは難しくても、曲にしたら伝わりやすい、分かりやすい。小さな子どもでも分かりやすい。歌は、そういうものであってほしい。

「どうやったら伝わるだろう」ということはずっと考えています。

ライブの間だけは、楽しんで、気分を楽にして、リラックスして、そして日常に戻っていってほしい。メンバーみんな、そうした思いで歌っています!

歌の中の一人称、“僕”が多いですよね?

【小杉さん】
たまに聞かれます(笑)「実体験書いてるのに、『僕』ですよね」とか。
昔から『僕』なんです。何なんですかね(笑)

昔、個人でソロで(歌詞を)書いてたときって、失恋ソングや恋愛について書くことが多かったんですけど、恥ずかしいんでしょうね(笑)

『私』って言うと「あっ、この人のことか」という感じで見られちゃうから、『僕』にすることによって、「私より少し遠い誰かの話」くらいの感じで聞いて欲しいと思ったのかも。

『僕』にすることで、作り話のような印象をもってほしくて、無意識にやっていたのかも。それが慣れてしまって、今では何の迷いもなく『僕』が出るようになりました。

特にSILVER TONEの曲は、ほぼ『僕』かもしれません(笑)


■ひまわり大使、福島を伝える。

NPO法人シャロームさんの活動として、福島の子どもたちが全国各地で「福島の今」を紹介するとともに「自分の体験」を語る『ひまわり大使ツアー』というものがあります。
今回も、ひまわり大使が4人、岡山に来てくれていました。

図15

小学5年生の男の子は、東日本大震災のときは5才。
福島の様々な人たちの話を聞きながら、この8年でどのように復興してきたのか、その軌跡を知ったと言います。

高校2年生の女の子は、「福島は日本で一番安全だと思う。福島の本当の現状を伝えたい。復興は進んでいて、環境は取り戻しつつあるのに、人の心や風評被害のようなものは癒えていない部分もある。」と話します。

彼らが福島県庁を訪れた際、県の危機管理の担当者の方が「子どもたちに謝りたい」と言っていたことが印象に残っているという話もあり、僕自身も印象的な話の1つとして残っています。


■福島の今を、伝えていきたい。

自由交流の時間もあり、あっという間にエンディングへ。
終わりの言葉として、小杉さんが会場に思いを伝えました。

今、一番伝えたいことって何ですか?

図16

「僕たちはお金とか同情とか、そういうことよりも、忘れないでほしい。」
これは福島の方からいただいた言葉なんです。3.11が起きたということを伝えることによって、月並みですけど、風化させないようにしたい。

今日お話を聞いて、「まだまだ大変な状況の地域もある」ことを閉じないで伝えていってほしい。今後同じようなことが起こって、(必要以上に)かなしい思いをすることがないように、語り継いでいってほしい。

「日本国民のみなさんに3.11を忘れないでほしい」という思いが一番強いです。

「福島ってこういう状況なんだ」って思ったら、ちょっとは気に掛けると思うんです。例えば、3月11日が近づいたときに、「そういえば去年こういう状況だったけど、今どういう状況なのかな」とか。

知ろうとしなかったら、何も情報が入らないまま薄れていく。だから、今日みたいな機会に来て、知ってもらうことで(支援してほしいわけじゃなくて)遠く離れた地でも思い返すときがある。そんな思い返すきっかけをつくっていきたいです。

小杉さんは最後に「今後も震災支援の活動を続けていきたい」とおっしゃっていました。

会話や文章では伝えることが難しいものでも、歌だから伝えられることがある。「SILVER TONE」が伝える「福島」だからこそ、特別な意味をもてる人たちがいるし、その人の“思い返しスイッチ”になる。

「SILVER TONE」 と「福島」のあいだにある、特別な力。見えないけど、たしかに“そこにあるもの”に触れて、僕も“思い返しスイッチ”をもらった気がします。


ここまでのご清覧、誠にありがとうございました。

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