見出し画像

【詩】『偏食』

『偏食』

錆色の空気が心臓の皹にまとわりつく
痛みで目がかすむ
名前を持たない時間に照らされて
死に包まれた聲は波頭の先

隠し合い
騙し合い
傷つけ合い

伽藍の空に愚者は唄う
ひとつの絶望と無二の希望

アナタとわたしの好きは交わらない

アナタの心の奥に
わたしの手は届かない

アナタに答えてほしいことばかりなのに
アナタの瞳の問いに
わたしは答えられない

アナタもわたしも悪くない

けれど

アナタもわたしも良くはない

ないものばかりだから満たされない

わたしの涙は静かなくせに止まらない

だけど

アナタはわたしを抱きしめない

わたしもアナタにすがれない

アナタにわたしはわからない

わたしもアナタがわからない

アナタとわたしが止まらない

わたしとアナタが変わらない

アナタもわたしも変われない

だからどこにも帰れない

そして二人は終われない

悲しい顔もできない

アナタとわたし
わたしとアナタ

アナタが暮れて

わたしが過ぎる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?