なんとしてもまずは会う。そのための方法。
『しがと、じんじ。』2020年最初の記事は、京都の上原成商事で5年以上人事を務め、プレゼンのコンサルティングなど多岐に活躍する、松永貢さんによる寄稿です。
「採用しようにも、良いと思える人と出会えない。そんな話をよく聞きますが、まずは会える会えないの前に、会うための行動をしよう」
普段からこう語っておられる松永さん。新卒採用にあたり、自身が日々実践している“行動”を明かしてくださいました。
松永貢/Mitsugu Matsunaga
滋賀県甲賀市生まれ。上原成商事株式会社 管理本部人事グループ課長。新卒採用担当。
新卒で同社に入社後、総務部庶務課。その後、株主総会担当、IR担当を経て人事へ。話を聞いた学生が教授に提案をしてくれる紹介により複数の大学でゲスト講師をつとめる。プレゼンにこだわりがあり、学生向けプレゼンセミナーを大学で実施。また、2019年からは企業向けプレゼンセミナーも開催している。座右の銘は「迷ったらGO」。
(Twitter/Facebook)
なくならない採用手法「面接」の意義
適性試験、グループディスカッションなど、会社によって採用手法は違います。しかし不思議なことに、世の中のほぼ全ての会社において行われている方法が「面接」です。いったい何のために、全ての会社が面接をするのでしょうか?
僕の考える答えは、「会わないとわからないことがある」というものです。人は論理による正しさだけで何かを決めているわけではありません。むしろそれを超えたところにある感情、すなわち直感で決めています。その直感を発揮するときに必要になってくることが、「会って確かめる」というものです。
出会わないよりも出会ったほうが直感で決める上での情報量が多くなる。だから、実際に向き合って話すことが大事なんだと思っています。内容だけを知りたいのであれば、それはチャットでできる時代ですからね。
面接に限らず、僕たち人事が大事にすることも「まずは会う」ことなんだと思います。それは学生や求職者を選考するという意味ではなく、逆に選ばれる会社として相手の選択肢に入れてもらうためにです。「会えばわかる」のは僕たちだけではありませんから。
なので、出会ったその場で、Webやパンフレットではわからないものを伝える必要があります。人柄かもしれないし、向き合う姿勢かもしれない。それは会社や人によって違いますが、共通して大事なのは、「まずは会う」ということです。
来いと言わずに、会いに行く
オフィスが綺麗なベンチャー企業なら、エントリーしてくれた人に「会社に遊びに来てください」と伝えれば来てくれます。また、大手企業や知名度の高い会社なら、会えるとなれば学生は喜んで来るでしょう。でも、自分の会社にオシャレオフィスがなく、知名度がないならこちらから会いに行くしかありません。
どこに行くか?
新卒採用であれば、一番は大学です。
学生は暇ではありません。
授業があり、出席をしっかりと取る大学の場合は平日の昼間には時間がない。でも、授業には履修のスキマの時間があります。また、大学で講義を受けたあとにアルバイトの時間まで少し予定があいていることもあります。だから、そのスキマ時間を狙って大学まで行くのです。
学生にはお金がありません。
会社まで来てもらうと、交通費がかかります。バイト代の1時間、場合によっては2時間に相当するぐらいの交通費がかかります。だから、こちらから会いに行ってあげると喜んでくれます。
学生が会社まで来てくれない理由は、時間とお金です。この2つをクリアするだけで会ってくれる率は飛躍的に高まります。
口実は何でもいい。「自分のことを覚えてくれてる」が繋がる
では、どうやったら会うことができるのでしょうか。ここからは、僕が実際に学生と出会うためにやっていたことをお伝えします。
まずは、合同説明会で出会った学生や、Webエントリーで連絡先を知っている人に連絡をします。可能ならLINEでつながるなど、なるべく学生と気軽に連絡できるツールを使います。
次に、大学のキャリアセンターを訪問する日を決めます。そして、「この日に大学に行くけど、大学にいますか?」とLINEで連絡します。会う場所は、学食。他には、最近大学の中にもあるスターバックスなどのカフェです。もし、キャリアセンターの人が場所を貸してくれるなら、そこでもいいかもしれません。
学食の場合はお昼ご飯代を出してあげたり、カフェならコーヒーをご馳走したりします。割とこれで会ってくれます。僕は初年度、これだけで100人近くの学生に出会いました。
どんな理由で会うのか?
その口実は何でも構いません。
大学の中を紹介してほしい。プレゼンを教えてあげる。自己分析の協力をするよ。一緒に飲みに行こう。などなど。僕はその全てをやりましたが、自分ができるスタイルに合わせてもらえばいいと思います。
注意としては、学生側が「聞きたい」と言い出すまで自社の話をしないこと。ここでの出会いの役割は、魅力訴求ではなく、ただ仲良くなるためです。
学祭の模擬店にも顔を出します。その学生の出しているブースに行って、焼き鳥や焼きそばを多めに買ってあげると喜んでくれます。あと、場合によってはサークルやゼミの友達を紹介してくれたりします。
一度会ったことがある、というのは次に人と会う際のハードルがかなり下がりますので、合同説明会などで見かけたときに声をかけてくれる場合があります。また、その後会う機会がなくても、興味を持って自社を調べてくれて、就活本番に応募してくれたことも実際にあります。
バイト先に行ったりもします。居酒屋などの飲食店の場合は、働いている姿も見れるので今度出会ったときに、働き方のフィードバックもしてあげることができます。あと、バイト先に行くと素直に喜んでくれます。
すでに顔見知りの学生がいる場合は、会えるかどうかはさておき、行くたびに連絡だけはします。学生は「自分のことを覚えていてくれるんだ」という感覚を大事にしてくれます。
そのようにやっていると、学生経由でゼミの先生を紹介してくれることもありますから、先生から次年度の学生を紹介してもらえる機会がすごく増えるんですね。手段を選ばず、とにかく会うことが重要です。
もう1つは、人事と学生というより、年の離れた友人に近い感覚まで持っていけることが大事だと思っています。僕が理想とする距離感は、「部活の3年生と1年生ぐらい」の距離感です。人事が3年生の先輩で、学生が1年生の後輩ぐらいの関係性ができれば、連絡しやすくなります。
会えないからこそ、人事としての“行動”を変える
「学生と出会えない」
そんな声を他社の人事の方から聞くことがありますが、それなら会いに行けばいいだけです。会いに来てくれないなら、会いに行く。今までの方法で結果が出ないなら、自分の行動を変えるだけです。
「社内にいる営業は売れない営業」
そんな話を自社では聞くことがあります。理由は、お客様は社内にはいないからです。この言葉を置き換えてみます。
社内に学生はいるでしょうか?
いません。いるのは大学です。だから、社内にいる人事は採用できない人事。僕はそのように考えて、ひたすら大学まで足を運びました。
採用は難しく、人に会うのも簡単ではありません。でも、やることを全てやればそこに光は見えてきます。会えば伝わる魅力が、一つひとつの会社に必ずあります。
だからこそ、誰よりも先に「人事が変わる」必要があると思うのです。
あなたの会社で働く人たちの思いを背負い、ぜひ頭より先に足を動かしてください。
その行動が、その思いが、将来の貴社で働く仲間を呼び寄せます。
ぜひ、一緒に頑張りましょう。
ありがとうございました。
(しがと、じんじ。について)
“滋賀ではたらく魅力を再発見する”『しがと、しごと。』プロジェクトの一環で運営される、ローカルで採用活動に取り組む人事担当者のコミュニティです。
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(編集:佐々木将史)
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