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応募者の「興味・関心」「適性」をどこまで参考にする?

採用活動を行うなかで、人事は応募者の「どこを」見ればいいのか?

前回の記事では、ベースとして『コミュニケーション』にズレがないかを確認しながら、『素直さ』と『努力する姿勢』を重視しよう、と書きました。

では、中途採用の場合、過去の『スキル/実績』はどう判断すればいいのでしょうか?また、よく言われる『興味・関心』と『適性』は、どこまで参考にするべきなんでしょうか?

今回は、これらについて解説をしていきます。

中途で多少意識する 『スキル/実績』


前回お見せしたのが、キャリアアドバイスで用いる「採用される人材」を示す図です。企業サイドから見た場合は、「応募者のどこを評価すれば、自社で活躍してもらえそうな人材だと分かるか」を表すものとなります。

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前回、①をベースにして、②を重視するべき……と述べてきました。では③の『スキル/実績』はどう考えればいいのか。

新卒の場合は、多くの学生は持ち得ていないものであり、あとから結果ついてくるものなので、評価の対象にはなりません。

即戦力を求める中途の場合は、当然ある程度ここを評価することになるでしょう。ただし、『伸びしろ』としての、前回述べた『素直さ』や『努力する姿勢』とのバランスで考えることが重要です。

仮に今のスキルが高くても、『素直さ』や『努力する姿勢』があまりに欠けている人は、中長期で見たときの成長度が低くなる可能性がある。一方、今のスキルが低くても『素直さ』や『努力する姿勢』がきちんとあれば、5年ぐらいのスパンで見たときに、すごく高いスキルを身につけてくれるかもしれません。

実際は『伸びしろ』の評価だけで人を雇う余裕があることは少ないでしょうから、過去の『スキル/実績』も多少見る必要があります。ただし、あくまでも優先順位を『伸びしろ』に置いた方が、長い目で見たときはメリットが大きいのではと思っています。

『興味・意欲』と『適性』


そして、④の『興味・意欲』と『適性』です。これは、採用した社員がエース的人材に育つための、“成長ドライバー”として重要な要素です。

『興味・意欲』とは、その人の「好き」が仕事に重なることを示しています。この感情にはすごくエネルギーがあるので、うまく業務と重なった場合、個人が成長できる可能性がぐんと高まります。

『適性』は、得意なことや、合っていると感じられること。たとえ強い情熱がそこになくても、「自分では無意識にやれている」ことが仕事にうまく重なれば、大きな成長へとつながっていきます。

注意したいのは、「この両方がなければいけない」というイメージが広まっている点です。(これが実は、学生さんたちの“自己分析”を複雑にしてしまっています)

実際は片方があれば十分エースになれますし、どちらを優先するかと言えば、『興味・意欲』よりも『適性』ではないかと考えています。世の中の人の多くは、正直言って「自分がやりたいこと」がはっきり見つからないなかで仕事を探しているからです。

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「やってもらう仕事」が決まってるなら?


加えて、実際は企業から見ても、「本当は求職者に『興味・意欲』を聞く必要がない場合も多い」と考えています。なぜなら、多くの採用には“募集枠”が先にあって、ぶっちゃけて言えば「やらせる仕事は最初から決まっている」からです。

このコラムでも改めて、人事のみなさんに投げかけたいと思います。希望の仕事をやらせられない場合にも、なぜ「あなたのやりたいことは何ですか」と聞く必要があるのでしょうか?

(これを読んでいただいている人事の方の多くも、自分を振り返ってみたとき、「最初から人事をやりたかった人」は、正直ごく少数のはずです。でも、それでいいと思うんですね)

やりたいことはなくても、『伸びしろ』を見せれば内定はもらえますし、そこに『適性』があれば、きちんと活躍もできる。むしろ、そのことを体現している方が、「やりたいことがなくても、君はうちで活躍できると思う」と声を掛けることこそ、必要なのではないでしょうか。

もちろん、『興味・意欲』はあるに越したことはありません。

ただ、個人の「やりたいこと」を評価する場合も、それは『興味・意欲』を見ているようで、実はベース部分の『伸びしろ』を見ている場合が多いのです。このことも、ぜひ認識しておいていただければと思います。

北川雄士/Yuji Kitagawa

滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(TwitterFacebook


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(編集:佐々木将史

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