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中途採用にも「会社説明会」を

1つ前の記事で、「中途か新卒かで採用サイトを分けたり、メッセージを変えたりするのはやめようよ」と書きました。

今回はその続きで、「中途採用者に向けても、会社説明会をきちんとしよう」という話をします。

説明会〜面接の選考プロセスは、企業の魅力を伝える上でもすごく重要ですが、特に中途採用では見落とされがちです。なぜそうなのか、じゃあ実際にどういう手段があるのか、といった点を考えていきましょう。

中途採用には「伝える」機会が足りていない

新卒採用を重視してきた日本の企業では、新卒には「会社説明会」や段階を踏んだ「面接」をしっかり準備していても、それと同等のものを中途採用者に向けて用意しているところは、まだまだ少ないでしょう

正直、中途は「一発見極め」にしている企業も多く、あっても面接を2回するくらい。とりあえず書類を見て、問題がなければ面接、軽くしゃべってみて印象が悪くなければ、(人も足りてないし)そのまま採用…。

そんな簡単なプロセスで決めてしまい、入社後にミスマッチが生じる場合も珍しくはありません

(もちろん、ミスマッチには応募側の要因はあります。転職中の空白期間を短くしたいので、何となく印象が良ければ「いいかな」と思ってしまう。企業の反応が良ければ「落とされたくない」と思って、当たり障りないことしか言わなくなる…そんな心理も働きがちです)

以前にこのnoteでも触れていますが、面接などの採用プロセスには本来、「相手の魅力を引き出す」だけでなく、「会社の魅力を伝える」役割もあります。単純な選考過程になってしまうことで、その機能がすごく弱くなってしまうんですね。

本当はいきなり面接に入らず、企業側の説明を聞いてもらって、応募者にも何度か話を聞く。そんな機会がきちんとある方が、お互いのミスマッチも減らせます。

最初の面接のあとに「説明会」をする

とはいえ、選考時間が限られている場合もあるでしょう。突然の応募も来る中で、どうすればいいのか。

1つの方法は、最初の面接で「いいな」と思った人にだけ、終わったあとに会社説明をさせてもらう方法です。「素敵だと思ったので、今度はうちの話もさせてください」と、時間を延長させてもらう。

そこから先は、自社の魅力とか、自分が何を考えていて、今後どういうことやろうとしてるかを語るんです。もちろん、事前に「30分の面接だけど、もしかしたら最大1時間ぐらいになるかも」などと伝えておきます。

延長ができないという人の場合、面接中に「よさそうだな」と思ったら、途中から説明会に切り替える方法もあります。30分取っているのであれば、15分で面接を止めて、15分は説明会にするんです。

いずれにしても、入社してほしいと感じた人には、絶対に企業の説明をすること。採用側の情報を、きちんと渡す場をつくるんですね。

たとえ30分でも、企業の想いを伝えることで、応募者の気持ちは大きく変わります。志望度が上がれば内定後の辞退も減りますし、入社後のミスマッチも減らせる。長く働いてもらうこと考えたら、一人ひとりへの会社説明にも、しっかりコストをかけるべきです

定期開催して、窓口をつくっておく方法

もう1つの案としては、「定期説明会」のような決まった枠を月に数回設けて、ライトな窓口にしておく方法があります。(たとえば、「毎月第1・3水曜日の平日19時〜」など)

これはあくまで、「説明会」であることが大事です。体験入社ではなく、まして選考でもない。「説明だけの場をやってるので、気軽に来てください」として、こちらがしゃべる機会をつくるんです。

もちろん、話をした流れで相手が良さそうだったら、選考スケジュールをその場で決めてもらう、という場合もあるでしょう。ですが、一番のメリットは、「応募を考えている人」だけでなく、「まだ応募を本気で考えてない人」にも説明する機会をつくれることです

転職中の空白期間でなくても来てもらえますから、時間をかけて自社を理解してもらうきっかけになる。結果的に、応募数自体も増えていくかな、と考えています。

(ただし、人事の負担は少し増えるので、持ち回りにする、来ない日は閉める、などの対応も必要ですね)

「中途採用」も「新卒採用」もない時代へ

情報があふれる今の社会では、選択肢が多すぎて、「自分だけで何かを決めるのが難しい」と感じる人もたくさんいます。そんな中で、人が企業に「いきなり応募」するのって、実はすごくハードルが高い

だからこそ、入り口の階段をどれだけ低くできるかが重要です。「とりあえずおいでよ。それで良かったら、次のステップも用意しておくから…」ぐらいの場があることは、中途・新卒を問わず、求められていることかもしれません。

最近は「リファラル採用」の一環で、社内のピザパーティーなどに社員が友達を呼ぶ…なんて話もありますが、これも敷居を下げるアプローチの1つとして良いと思います。

今後、新卒の「一斉採用から通年採用」の流れが本格的になると、ますます新卒と中途の垣根は崩れていくでしょう。「まずは中途向けに、新卒採用と同等の説明を…」と書いてきましたが、最終的には「新卒」「中途」という言葉自体がいらなくなっていけばいいな、そんなふうにも思っています。

北川雄士/Yuji Kitagawa

滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(TwitterFacebook


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(編集:佐々木将史


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