構造設計ってどんな仕事?〜役割と業務内容〜
私の仕事である建築物の構造設計について。
どんな仕事なのか紹介するとともに、具体的な業務についてお話しします。
建築業界の方が読むことでお互いに仕事を進めやすくなったり、就活生の方が読むことで業界研究が深まるキッカケになればと思います。
できるだけ専門用語を使わないようにするので、建築業界のことを全く知らない方でも大丈夫です。
【建築設計には3つの専門分野がある】
建築物の設計と聞いて、多くの人がイメージするのは安藤忠雄のような建築家や、テレビ番組の「大改造!!劇的ビフォーアフター」に出てくるリフォームの匠です。
それも間違いではありませんが、建築設計という仕事の側面のひとつにすぎません。
建築設計には3つの専門分野があり、それぞれ意匠設計・構造設計・設備設計に分かれています。
昨今の建築設計業務は、守るべき法令・必要な知識・求められる能力が多岐に渡り、ひとりの設計者が全てを網羅することは難しいためです。
[意匠設計]
建物形状・間取り・内外装・外構など、建物のトータルプロデュースを行う。
設計者の代表として構造設計・設備設計を統括し、建築主の要望に沿った建物を実現する。
多くの人がイメージする設計者。
[構造設計]
大地震・暴風・豪雪などに対して、建物が倒壊しないように骨組みを設計する。
安全性を確保しつつも、デザインを損なったり予算オーバーにならないよう、合理的で経済的な建物を提案する。
[設備設計]
建物を快適に利用できるよう、電気・空調・給排水設備やそれに伴う配管・配線を設計する。
建物のランニングコストに大きく影響するため、竣工から解体までを見通して提案する。
[建築は三位一体の共同制作]
3つの分野に分かれていると言っても、それぞれが独立して仕事をしているわけではありません。
意匠設計で間取りが変わる
→柱の位置が変わって構造設計に影響する
構造設計で梁の大きさが変わる
→天井裏の配管スペースが変わって設備設計に影響する
設備設計で室外機の位置が変わる
→建物の外観が変わって意匠設計に影響する
このように各分野は相互に影響し合っています。
そのため、各分野のプロフェッショナルが互いに協力し合い、三位一体となってひとつの建築物を設計します。
【構造設計者の業務】
前置きが長くなりましたがここからが本題です。
構造設計者がどんな業務を行なっているのか、時系列に沿って紹介します。
[構造計画]
意匠設計者から相談を受けて仕事がスタートします。
建築主の要望・意匠設計者が考えている建物イメージ・建設地の地盤状況などをヒアリングし、構造計画を行います。
構造計画とは、ヒアリングした結果をもとに最適な構造種別・架構形式・部材配置・基礎形式などを決定することです。
ここで大枠の方針が決まるため、判断を誤ると以降の業務が全て見当違いの方向に進むことになります。
最も重要な業務であり、構造設計者の力量が顕著に表れる業務でもあります。
[構造計算]
次に構造計画に基づいて構造計算を行います。
まず固定荷重・積載荷重・積雪荷重・地震荷重・風荷重など、建物に作用する力を計算します。
作用する力を計算した後は、それによって建物が倒壊しないかを確認し、ダメなら弱点となっている部分を強くする…
このプロセスを繰り返して安全性を確認し、第三者がその根拠を確認できるように構造計算書を作成します。
「構造計算」という言葉のせいか「誰がやっても答えはひとつ」と思われることがありますが、そんなことはありません。
どんな計算方法を採用するか、荷重に対してどれくらい余力を持たせるかなどによって答えは異なるため、構造設計者によって結果は違ったものになります。
[構造図作成]
構造計算書は安全性を確認したことを証明するものなので、これで建物を建てることはできません。
建物を建てるためには、施工に必要な情報を記した設計図が必要になります。
当然、骨組みの設計図である構造図を作成することも構造設計者の仕事です。
ちなみに設計図は「CAD」と呼ばれるソフトを用いてパソコン上で作図します。
今の時代、製図版・T定規を使って手作業で図面を描くのは、一級建築士受験生か学生くらいです。
[確認申請]
構造計算書・構造図が完成したらひと段落。
ですがまだ終わりではありません。
建物を建てるためには「建築確認申請」という手続きが必要です。
建築基準法・条例に違反していないか、第三者(自治体か民間の検査機関)の確認を受けます。
規模の大きい建物はこれに加えて、「構造計算適合性判定」という構造に特化した審査も受ける必要があります。
これらの審査の中で設計内容についての質疑応答を行い、適宜修正して手続きが完了すれば、ついに構造設計業務の終了です。
[工事監理]
確認申請が済み、工事が始まると工事監理業務を行います。
これは構造設計業務とは別の業務です。
工事監理とは、設計図の通りに施工されているかを確認することです。
とはいえ、実は設計図と全く同じ建物を建てられることはほとんどありません。
現場では想定外の地中埋設物が出てきたり、設計図に記載ミスが見つかったり、施工性を良くするために微調整したり、様々な変更要因が発生します。
これらに対して、建物の品質を損なわないよう臨機応変に対応することが求められます。
【まとめ】
建築設計における構造設計の位置付け・実際の業務についてお話ししました。
建築設計が分業化されていること・構造設計者の力量によって結果は違ったものになることなど、理解して頂けたら幸いです。
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