結婚する気のない男を秒でその気にさせる方法
大抵の女にとって何年も付き合っている男が結婚について何もいってこないほど辛いことはない。
かつて一緒に仕事をしたことのある恵美(仮名)もそんな女のひとりだ。人生と結婚はワンセットと考えており、結婚イコール人生という不思議な価値観を持っていた。
付き合う相手は結婚してもいいと思える男でないと無理という視野の狭さで、変な男につかまってはいけないという思いが人一倍強かったように記憶している。
と一見、結婚至上主義のように見えるが、専業主婦願望はなく自立心旺盛でやりがいのある仕事を一生続けていきたいという意識高い系女子でもあった。
そんな恵美が夫になる男と出会ったのが新卒ピカピカで入った会社。
一生懸命に仕事をしている姿と社内の評判で総合判定し、この人と結婚しようと急に思い立ったという。
といっても部署が違い、接点もなく悶々としていた彼女が考えついたのは、自分に気のある先輩をたぶらかしお出かけ合コンのセッティングをしてもらうこと。
そしてそこに意中の彼を参加させることであった。
この作戦は大成功し接点のない同僚から2人でお出かけする友人へと出世を果たす。
その後トントン拍子とはいかないまでも、紆余曲折ありながらお付き合いまで発展していくのである。
何もなかったところからお付き合いまでもっていくとは、相当の凄腕であることは間違いない。彼女は一体どんな凄い技を使ったのであろうか。
私の観察研究によると、社内には3人ほど彼女のファンがいた。合コン要員で利用された先輩と彼と仲のいい同期、そして彼女の上司である。
恋愛市場においてファンはとてもいい働きをしてくれる。理由は下駄をはかせてくれるから。
恵美は絶世の美女でもなければモテ女子でもない。その辺を歩いている普通の若い女。なのにファンがいるだけで、とても高価なものに見えるから不思議である。
心理学でいうところの「勝者の呪い」の原理が働いたのだ。この3人のファンのおかげで恵美は女としての価値がかさ上げされ、めでたく意中の彼とお付き合いすることができたのだろう。
仕事をしていくうえでファンづくりが大切だと叫ばれる昨今。恋愛市場においては昔からファンの存在は必要不可欠であったのだ。
話を元に戻そう。お付き合いするまではよかった。けれど1年経っても2年経っても結婚の話がでてこない。
「この男、私と結婚する気はあるのだろうか」次第に疑問を抱くようになる恵美。といっても焦ることもなく悠々と構えていたところが彼女のすごいところである。
結婚を詰め寄るわけでも、友達が結婚したことを餌に反応をみるわけでもない。週に1度のデートを楽しみその他の時間は趣味や交遊関係に費やすという充実した生活をしていた。
そんなある日、恵美にお見合い話が舞い込んだ。その時ふと恵美の頭をよぎったのが「乗り換えもありかもしれない」という悪魔のささやき。
しかし義理堅い彼女は彼に承諾を得てからお見合いをすることにしたのである。そしてこれが転機となり結婚へと大きく舵を切ることになったのだ。
恵美はどんな手を使って結婚する気のない男を秒でその気にさせたのだろうか。きっと凄い策略を張り巡らし、罠にはめたのではないかと思うよね。実は全くのノープラン。
ランチタイムになると会社の近くに車でパンやが乗り付けるのであるが、2人はそこの常連客で結婚が決まるその日もふらふらと会社からパンやまでの道のりを歩いていた。
といっても社内恋愛は秘密だったため仲良く買いにでかけたわけではない。ぱたりとすれ違ったその時、立ち話ついでに「実は私お見合いの話がでていて、面白そうだし会ってみようかなと思ってるの」と能天気に彼に向って言い放ったのだ。
彼からしてみると青天のへきれきとはこのことであろう。今まで一度も結婚話をしたことがなく、ほのめかされもしなかった女の口から出た言葉がまさかのお見合い。
彼にとってお見合いイコールお別れを意味するわけでパンどころではなかったことは予想できる。
慌てふためいてはなった言葉が「ちょっと待って。今度ご両親のところに挨拶にいく。だから待って」であった。
彼が秒で結婚を決意した瞬間だ。その週末彼は両親に挨拶に行き2年後結婚すると約束をした。2年後というところに往生際の悪さを感じるがよしとしておこう。
勝因はなんだろうか。キーワードは「予定調和を崩す」。結婚話を1度もしたことがなかったところに、フライング的にお見合い話がでた。頭の中が錯乱し自分のものだと思っていた女が去っていくかもしれないという恐怖と相まって、ついうっかり結婚を決めてしまったのだ。
恵美が結婚に焦りいつも詰め寄っていたら、あーまた言ってるとなり「お好きにどうぞ」と許容していたかもしれない。結婚の駆け引きはメリハリが重要なのである。
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