8-2 この先、どう生きていけばいいですか?
私が初めて西洋占星術のメール鑑定を依頼したのは出産前だったが、鑑定結果が送られてきたのは出産後だった。ちょうど、赤ちゃんが泣き止まない、どうやって育てたらいいのか分からない、っていうか、赤ちゃんってもっとよく寝て可愛いものじゃないの?こんなん話が違うと途方に暮れ始めた頃だった。まさに、「この先、私はどう生きていけばいいのですか?」と誰かの首根っこを捕まえて問いただしたいくらいの気分に駆られていた。
私が質問した内容は、「自分は専業主婦に向いているか」という事と、「もし仕事をするなら、どのような業種が向いているか」という事だった。出産を目前に控えていたというのに、私の頭の中は既に育児がひと段落して、「さて、働こうか」という未来にまで吹っ飛んでいた。育児から逃げる気満々だった(笑)。
送られてきた鑑定結果には、これまで私が受けてきたどの自己分析検査とも違う視点から、全く新しいことが書かれていた。目から鱗が何枚も落ちた。
自分で言うのも何だが、私は頭脳派であると思う。と言うより、運動神経が全くないので、頭で勝負するしかない人生を送ってきた。体育の授業で、バレーボールのトスを顔面で上げた事は、私の中で定番のネタだ。眼鏡はもちろん吹っ飛んだ。
そのため、就職活動をしている時、いくも適性検査のようなものを受けて、自分の適職を探したが、どれも出てくるのは相当頭を使うような職種ばかりだった。銀行員やファイナンシャルプランナーなどが適職に挙げられていたが、頭脳派を気取っているくせに、知恵熱が出るほど数字が苦手だった私は、その方面から逃避行したけれど。
しかし、その一方で、私は頭だけ使うような事務的な仕事が本当に自分に向いているのかどうか、疑問も感じていた。例え数字が苦手じゃなかったとしても、私は銀行員の仕事を嬉々としてやれるだろうか?と。
その答えが、占いの鑑定結果にはあった。まず、私は精神世界―いわゆる「見えない世界」を大事にすることが大切なタイプだった。自分の内面など、見えない部分を整えないことには、私は前に進みにくいのだった(逆に、物理的な部分を整えないと、内面が整わないタイプもあります)。「見えない世界」に心惹かれていた幼少期の自分は、間違っていなかったのだ。それを頭で「いけないこと」と思い込み、無理に押さえつけてしまったがために、私の人生何かおかしいことになっていたのだ。
私は、「見えない世界のことを、また信じてもいい」とお墨付きをもらえたみたいで、力が抜けた。13歳で閉じた重い蓋が少しだけ開き、その中に閉じ込められていた小さな私が、ほっと息を吹き返したようだった。それくらい、本当は私にとっては大事なことだった。大切なものを取り戻したようで、涙が出た。
こんな私にとって大切なことが、生年月日と出生時間と出生場所を教えただけで、見ず知らずの人に言い当てられるなんて、私はにわかに信じがたい気分になった。
仕事については、専業主婦より働くことのほうが向いていること、職種は癒しなど精神と肉体を健康に保つことに関わる仕事が向いていること、だから、当時習っていたアロマは向いているでしょうと書かれていた。「もし専業主婦をするなら、ちょっと普通と違う奥様になる」というようなことも書かれていた。今振り返っても、もっともなことだった…
私は「アロマが向いている」と太鼓判を押された気分で、嬉しくて飛び上がった。ただ、「占い」とは、一つの物の見方であり、もっと言えば、占いの種類によって視点は少しずつ変わるし、さらに占う人によって、解釈の仕方というのはがらりと変わる。
占いを自分で勉強するようになった今だから分かるが、私のホロスコープを見ると、確かに私はアロマに向いている。自分が同じように、このホロスコープの持ち主に「アロマ勉強してるんですけど、仕事にできますか?」と聞かれたら、「いいんじゃないですか」と言うだろう。しかし、結局、私が生まれる時に天から持ってきた使命というものは、どうもアロマではなかったようだ。生活には大いに役立っているけれど、仕事ではなかった。
占いも絶対的なものではない。まして、占い師の解釈は千差万別。占いから徹底的に本当の自分を探りたいなら、いくつも鑑定を受けたり、自分で勉強して自分で読み解くしかない。占いも、そう甘いものではないと思う。
しかし、人生の役に立つ。日常のちょっとしたことであれば、ちょっとした鑑定を受ければいいし、深く勉強すればするほど、人生の大局さえも分かるようになる。それくらい実用的でなければ、何千年もの歴史を超えて、受け継がれてなど来なかったはずだ。時に占い師が歴史を動かすことだって、あっただろう。
勉強をする今になっても、どうして当たるのか、それを誰にでも納得してもらえる形で説明することはできない(うすらぼんやりとならできるけど。元々自分がそちら系の住人だったので、感覚で「当たるよね」と捉えちゃってるので、もう理屈では説明できない)。でも、「日常の生活に確かに役に立つなら、それでいいじゃない」と思っている。
少なくとも私は、今ほど占いの理論・理屈が分かっていなかった当時から、「これは役に立ちそうだ」と直感で思った。だって、就職活動の時に何千円も払って受けた下手な適性検査より、よっぽど自分のことを言い当ててくれているような気がして。
母を亡くし、「お母さんに喜んでもらいたいから、あれこれする」という目的を失い、目の前に立ちはだかる「育児」という問題にどう対処すればいいのかさっぱり分からず、毎日が暗く沈んで酸欠の金魚のように口をパクパクさせて喘いでいた産後鬱の私は、「この先、どうやって生きて行けばいいのか?」答えを探していた。そして、それは占いの中にあるような気がして、私はずぶずぶと占いの深みにはまっていくのだった。
ずぶずぶ、ずぶずぶと…
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