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Yui32_№11

🇫🇷TEMPURA
AUTOPORTRAITS DE TOKYO

フランスで年4回発行される日本文化を紹介する雑誌“TEMPURA”で連載中のインタビュー記事
“AUTOPORTRAITS DE TOKYO”=”東京に住む人たちのセルフポートレート”を日本語訳したものをnoteに記録しています。

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TEMPURA_№11 / 2022.10

Yui 32
talent / sommelier / shinto priestess

Text : Mathieu Rocher (Interview : Ayaka Shida)
Photo : Ayaka Shida

20歳の頃、グラビアアイドルである小倉優子さんのファンでした。彼女のようになろうと決めて、彼女のラジオ番組のオーディションを受け、合格しました。
また、同時期に大学の国際法学科を卒業した私は、その後アルバイトをし、テレビにも何度か出演したのですが、生活はかなり苦しかったです。
安い納豆が主食になりました。
多くの日本人が経験することだと思いますが、私たちは決してあきらめません。
今では、少しずつですが安定してきています。
ちなみに、しばらくしてAKB48グループのメンバーになれたことも、私の成果のひとつです。
頑張った甲斐がありました!ステージの上でも、写真撮影のときでも、ファンのみなさんとお会いするときでも、とても楽しかったです。

そして2019年、ミス・ワインに選ばれました。
ミス・ワインとは、ワインの歴史から味わいまでを学んだ知性や、立ち居振る舞いなど、あらゆる側面から審査される美人コンテストです。日本ワインのアンバサダーになったわけですが、その直後コロナのパンデミックが起こり、すべてのイベントがキャンセルになりました。大変な時期でした。

男女共同参画が叫ばれているにもかかわらず、日本で変わっていないのは、いまだに男性の方が権力を握っていることです。
2021年の裁判では、夫婦が異なる名前を公文書に記載することが認められませんでした。我々が保守主義であることを示すもうひとつの証拠は、LGBTQの人々が本当に受け入れられていないだけでなく、多くの人々が彼らに同情のような気持ちを抱いていることだと思います。これは一種の差別と言えるんじゃないかな。
最近、私はフィリピンのセブに留学し、英語を学びました。
私の先生はいとも自然に、わたしはゲイだと自己紹介しました。
このオープンさは日本ではあまり見られないもので、多くの人が隠しています。

でも、私は日本が大好きだし、日本人でよかったと思っています。
旅は私たちと世界の考え方の違いを気づかせてくれます。
日本人の特徴のひとつは、時間を守ることです。
特に私自身は約束の時間を守ることを大切にしていますし、それは、お互いを信頼し合うということでもあると想っています。
そういう感覚が私たちを結びつけているのだと思います。
セキュリティーについても同じですよね。
日本では、街なかで狙われているという感覚はあまりないです。
芸能界に入りたての頃も今も、特に競泳水着で写真を撮るときなど、男性に幻想を抱かれることがあると理解していながらも、そのような立場になることは怖くなかったです。私にとってその仕事は、ただ水着という服を着て、最高の写真を撮ること。
それを成功させることだけを考えていました。

また、2012年から神主として活動していることも、私のアイデンティティーです。
もしかしたら、これが私が日本で感じている最大のプレッシャーかもしれません。
私は神社に生まれました。神主の資格を取り、神事を行っています。
日本中で神主の数が減っている今、私たちには神社や神事を後世に残す義務があります。この文化を守ることは責任です。ほぼすべての日本人に、未来に対する使命感があると感じます。
もちろん、不安がないと言えば嘘になります。
だからこそ、私は今を生きるようにしているんです。
私が今幸せなのは、これまで積み重ねてきた努力と挑戦のおかげ。
そのおかげで、多くの道を切り開くことができたと感じているからです。
たくさんの夢を実現してきたし、そのたびに新しいチャンスに恵まれてきた。これが私の人生です。

タレントの仕事も、神主の仕事も、プロとして落ち着いていなかった頃は満たされない思いもたくさんしました。でも今は違います。
もし困難なことに出会っても、私は自分の経験と直感を信じているので、物足りなさは感じません。今はSNSが発達した時代ですから、それらを通じて、この経験を伝えていきたいです。密かに願うのではなく、望むことを望めば、すぐに実現できるということを示したいんです。

今後も、私は好きなことを続けていくと思います。
自分の能力を最大限に発揮することができれば、好きなことをもっと好きになれる。
このプロセスにおいては、誰もがひとりぼっちです。
目標を達成するために自分を頼りにする。
以前よりもポジティブな戦い方を学んでいると感じています。
そう思っていると、素敵な出会いが次から次へとやってくる気がするんです。

東京はとてもエキサイティングな街だと思います。
東京には何でもありますから。
おいしいレストラン、ファッション、神社……
この街は、自分の感性を形にしてくれるものがたくさんあるから大好きです。
ここ以外なら…フランス、特にブルゴーニュに住んでワイナリーを訪ねてみたいです。



3回目。

ゆいちゃんはグラビアアイドルをやってたので、性差やご自身の仕事について何を話してくれるのか気になってました。

このインタビューをさせてもらった2022年と、これを書いている2024年
たった2年でもこのテーマの世論は変わった気がするので彼女の考えも変わっているかもしれないですが
当時のゆいちゃんは、目の前の仕事をプロとして全うすることだけを考えていたと言ってました。

そして、文中の「2021年の裁判」は、2021年6月、最高裁大法廷で夫婦別姓を認めないことに合憲判決が下された訴訟のことですが
これについては疑問を感じると言っていました。(最高裁が夫婦別姓を認めないことを違憲としなかったのはこれが2度めだったはず。今年3月にも3度めの集団訴訟の提起がありましたね。この訴訟に関して経団連会長も選択的夫婦別姓制度導入への賛意を示しています。)

仕事や思想に限らず、どんなことにも賛成と反対はあるから正解はない。
ただ、個人的には彼女のようにしっかり意見を持ちながら目の前のことに向き合う人はかっこいいなと思います。

人生にはたくさんの選択の瞬間があるけど、彼女はそういう経験を若い時からたくさんしている。
その選択をするたびに人は自分を見つめて、選んだ理由を自分らしさや信念として認識していくのかもしれないですね。

ぱっと見はほわほわしてるけど、たぶん私のお友達のなかでいちばんはっきりと意見を持ってる大好きな人です。


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