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Kimiko60_№13

🇫🇷TEMPURA
AUTOPORTRAITS DE TOKYO

フランスで年4回発行される日本文化を紹介する雑誌“TEMPURA”で連載中のインタビュー記事
“AUTOPORTRAITS DE TOKYO”=”東京に住む人たちのセルフポートレート”を日本語訳したものをnoteに記録しています。

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TEMPURA_№13 / 2023.4

Kimiko 60
Owner of a sento

Text : Mathieu Rocher (Interview : Ayaka Shida)
Photo : Ayaka Shida

私は東京で生まれました。
銭湯のオーナーになったのは、1913年からこの銭湯を営んでいる家族の娘だからです。創業者は曾祖父と高祖父です。私は父のあとを継ぎました。
銭湯の運営は好きなので続けています。

子供の頃から手伝っていました。
小さい頃は、主に店の準備を手伝っていて、桶や椅子を運んだり、足を拭くためのマットを出したりしていました。今やっていることと大して変わらないかもしれませんね。笑
テレビを見たり、だらだらする時間はあまりありませんが、まったくないわけではありません。そんな休息と仕事のバランスがちょうど良く感じています。

このあたりの地域には古い家が結構残っていて、私のことを昔から知っている人がたくさんいます。昔から「おふろやのキミちゃん」と呼ばれて、子供の頃から愛してもらっていますよ。でも、私も歳を取ってきたので、そう呼ぶ人も減ってきました。笑
うちの銭湯でうぶ湯に浸かった赤ちゃんが、86歳のおじいさんになって亡くなるまでずっと通ってくれた思い出もあります。

仕事中にお客さんと話します。テレビ番組の話をする人もいれば、家族の話をする人もいます。お客さん同士もよく交流していますね。たいてい同じ時間に来るので、お互い顔見知りのようです。でも、名前や住所を聞くことはしません。名前を知らなくてもよく話す人がたくさんいます。勝手にあだ名をつけたりします。
例えば、日曜の午後7時の女性や、ネイルアートがきれいな女性など。
たぶん、銭湯ではみんな裸だから、名前は知らなくても気後れせずに話せるのかもしれません。
だから、いつも話していた人が突然来なくなると心配になります。住所も電話番号も名前も知らないので、どうすることもできませんから。

毎日見ていると、人がだんだんと老いていくのがわかります。
ここは、独り暮らしの高齢者の安全や健康状態を見守る場所になったり、交流の場になったりすることもあります。その意味でも銭湯はとても良い場所だと思います。

東京での生活が大好きです。
この地域は、江戸時代には大通りで旧中山道と呼ばれていました。大名行列が通るような道です。
子供の頃から比べても、この地域は変わりました。
1913年からここで銭湯を営んでいますが、昔はタバコ屋や豆腐屋、果物屋、時計屋、ビリヤード場などがありましたが、今ではすべてなくなりました。残っているのはうちと理髪店だけです。

東京は大きなビルがあるイメージですが、そのわき道には古風な路地がまだ残っている場所です。それが気に入っています。大きなビルは便利ですが、それだけでは不十分です。
人々が生活している雰囲気を感じられる場所が好きです。生活感を感じられなければ、安心できないと思います。
若い人や外国人が今想像する下町は谷中や浅草ですが、実際にはそれらの場所は下町ではなく、観光地として作られた「古風な東京」です。
この辺りのように、本当の下町にはちゃんと生活があるんです。

国内では、長く旅行したい場所はありますが、住みたい場所はありません。
留学したいとも思ったことはありましたが、何かあったら家業が続かなくなると思って勇気が出ませんでした。もし可能なら、海外で銭湯を経営してみたいです。

寂しいと思ったことはないです。
以前は15人分の料理をしていたので、もっと賑やかでした。今は10人分です。それでも多いですか?そうですよね。笑
仕事中や家族の時間はとても賑やかです!
将来も笑って楽しく生きていくために、これからも今のままであってほしいと思います。目標はここを続けることです。
息子にこの銭湯を引き継ぎたいです。今のところ、息子はやると言ってくれています。ただ、息子は29歳で今は会社員なので、その仕事が終わってからかもしれませんね。



ここから編集後記🐈‍⬛
インタビューに至った経緯や私個人の意見を書いてます。
編集後記と言いながら、ほとんど私の日記みたいになってて公開するのがなんとなく恥ずかしいから
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