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Maki40_№15

🇫🇷TEMPURA
AUTOPORTRAITS DE TOKYO

フランスで年4回発行される日本文化を紹介する雑誌“TEMPURA”で連載中のインタビュー記事
“AUTOPORTRAITS DE TOKYO”=”東京に住む人たちのセルフポートレート”を日本語訳したものをnoteに記録しています。

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TEMPURA_№15 / 2023.10

Maki 40
Manicurist

Text : Mathieu Rocher (Interview : Ayaka Shida)
Photo : Ayaka Shida

私は横浜の近く、白楽で生まれました。
祖父母、両親、弟と一緒に、古い伝統的な日本家屋に住んでいたんです。
29歳の時に恵比寿にサロンを借り、ネイルアーティストとして独立したのですが、その後も2年間は実家に住んでいました。31歳で一人暮らしを始めました。

高校は厳しくて自分のスタイルを表現できなかったし、二重まぶたじゃないことや肌荒れにコンプレックスを感じていたため、美容の道を追求したいと思っていました。
自分を美しくしたいと思ったことが、美容に興味を持つきっかけだったんです。
美容専門学校に通っていた時、課外授業でのネイルレッスンが楽しかった。
だから、両親にお願いして、専門学校卒業後に1年間ネイルスクールに通わせてもらいました。

独立してからはずっと恵比寿で働いています。
コロナの時代になるまでは、自分を安心させるために無我夢中で頑張っていたように感じます。常にネイルのことを考えていて、休むことはほとんどありませんでした。休むと収入がなくなってしまうからです。旅行にも行ったことがありませんでした。もし結婚していたら違う考えを持ったかもしれませんね。

そうやってずっと走り続けてきたところに、コロナのパンデミックがやってきたんです。ネイルサロンは不要不急とされ、国から営業停止の要請が出されたので、仕事を止めざるを得ませんでした。生活のために初めて事務仕事をしました。
ただ、コロナの時代になる直前にワインの資格を取得していたので、仕事がネイルだけに限られないことを受け入れるのに時間はかからなかったことも事実です。
それから、この資格の勉強を通じて、勉強することが楽しいということを思い出しました。中学生の頃は学校の成績も良かったんですよ。
だから、ワインにとどまらず、日本酒やチーズの資格も取得しました。
今ではこれらの資格を活かして副業をしています。
だから、以前よりも不安は感じていません。
副業は気分転換にもなるし、改めてネイルが大好きだと再認識させてくれます。
また、人とのつながりも増えます。

施術は一対一の関係なので、クライアントとのつながりは深くなります。
来てくれるお客さまは、お子さんの話や今夜のデートの話など、さまざまな人生の話をしてくれます。深い会話もよくありますね。
ここに来る人々はネイルケアを通じて外見を向上させるだけでなく、こうした話をすることも楽しみにしてくれている気がします。私を信頼して、心を開いてくれている感じが嬉しいですね。
なかには、私自身が自分のプライベートな話を共有できる方もいます。
1番長い人は15年通ってくれている人もいますからね。
長いお付き合いです。

マスクで顔が隠れ、自分を見つめる時間が増えたためか、手に注目する人も増えた気がします。
時代によって求められることは変わります。
今の仕事の状況は、最初に働き始めた頃とは全く違いますね。
始めた当時は、ネイルポリッシュやスカルプしか選択肢がなかったところに、新しい方法である「ジェル技術」が登場した頃でした。ネイルケアがとても高価な贅沢体験だった時代を経て、ギャル文化の人気により、若い方々にも広まっていきました。

自分が幸せかどうかを考えると、極端には幸せではないかもしれません。
でも、こういう時期もいいなと思っています。
昨年母が亡くなり、父のケアもしなくてはならない今の状況下では、もちろん大変な瞬間はありましたが、死にたいと思ったことはありません。
正直なところ「もう耐えられない」と思うことはあります。
でも、大切な人の死を経験したことで、気分を前向きに変えるのが得意になったと思います。

幸福というものを定義するのは難しいですが、
やっぱり、毎日を穏やかに過ごせることが幸せなんじゃないかな。
さまざまな人に支えられていることを実感できることも幸せですね。
家族との関わりが大変なこともありますが、家族は私を頼れる存在として見てくれていますし、実は私も彼らに支えられていると感じています。

居場所ごとに、自分の役割を振り分けているような気がします。
友達といるときの自分
家族といるときの自分
ペットのハリネズミと過ごすときの自分
ネイルアーティストとしての自分
ひとりのときの自分
それぞれに独自の役割があり、それがバランスを保てる理由なんです。

過去には京都に住んでみたいと思ったこともありましたし、旅行に行った時に楽しかったので沖縄に住んでみたいと思ったこともありましたが、それは一時的な考えです。
今は東京が好きです。
今までがむしゃらに走ってきたから、これからはもう少し、プライベートの時間を充実させていきたいな。



7回目。

乱暴に仕事してるとたまに爪が割れるので、リペアでお世話になってるまきちゃんです。アートはやったことないけど、いつも違う割れ方してるのにいろんなやり方で元に戻してくれるから職人だなと思ってます😇

お話を聞かせてくれた日はたまたまサロンの11周年の日で、
ご自身でちいさなケーキ買ってお祝いしてたのがかわいかったです☺️

1人でいろんな人に会うっていう仕事のスタイルが似てるから、共感できるところがたくさんありました。
特にここ

居場所ごとに、自分の役割を振り分けているような気がします。
友達といるときの自分
家族といるときの自分
ペットのハリネズミと過ごすときの自分
ネイルアーティストとしての自分
ひとりのときの自分
それぞれに独自の役割があり、それがバランスを保てる理由なんです。

ここまで細分化できてないけど、私はこのバランスが崩れると、帰宅後もう立ってられなくて床に倒れてそのまま寝るときがあります🙃
私の場合はそうやって1人で倒れる時間があればそのうち回復するけど、
まきちゃんは毎日もっともっとたくさんの人に会うのが仕事だからすごいねーって話したこともある。
そうかな〜って笑ってました😇

お母さんが亡くなった話を話をしてくれた時、まきちゃんが少し泣いていました。
むしろこの時以外の彼女はいつ会った時も変わらず明るかったから、ひとりの時に泣いてたのかな。がんばってたんだな、えらい人だなって思いました。大切な話を話してくれてありがとう。

その人が生きてても死んでても、残された人の大好きって思う気持ちは変わらないから
天国に行ったその人自身も、生きてる時と同じように残された人を大好きでいてくれてるはずだよね
そう思ってたら寂しくない。
まきちゃんのお母さんも、うちのねこもきっとそうだよ😇


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