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Yukari55_№16

🇫🇷TEMPURA
AUTOPORTRAITS DE TOKYO

フランスで年4回発行される日本文化を紹介する雑誌“TEMPURA”で連載中のインタビュー記事
“AUTOPORTRAITS DE TOKYO”=”東京に住む人たちのセルフポートレート”を日本語訳したものをnoteに記録しています。

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TEMPURA_№16 / 2024.4

Yukari 55
Insurance company employee

Text : Mathieu Rocher (Interview : Ayaka Shida)
Photo : Ayaka Shida

私は東京都西東京市で生まれました。
何度か引っ越しましたが、今も同じ家に住んでいます。
大学では教育学部でピアノを専攻し、卒業後はずっと同じ保険会社で働いています。卒業時には音楽を職業にしようかとも考えましたが、音楽は趣味、遊びとしている方が私にとっては良いと思っています。それは生活に変化をもたらし、音楽との付き合い方として私には合っていると感じます。

社会人になってから今も、大学時代の友人とバンドを続けています。それと、会社の軽音楽部にも参加しています。忙しそうに聞こえるかもしれませんが、大きな支障はありません。むしろ、良いリフレッシュになっています。イベントに合わせて練習を調整し、スケジュールをうまく管理しています。

私は反原発デモにも参加しています。
原発が危険だと常々感じていました。私の家庭では政治的な話題がよく出てきましたし、母が広島出身ということも私の意識形成に影響を与えました。昔から、家族で時事問題についてよく話し合っていました。
そして、東日本大震災が起き、原発について考えるようになりました。音楽もそれを考える理由のひとつでした。私が尊敬するミュージシャン、坂本龍一さんや細美武士さんなどが反原発運動に関わっているからです。彼らは反原発イベントのゲストとして参加していました。

私たちはプラカードを持って通りを歩き、意見を表明します。新宿西口での安倍晋三の国葬反対デモにも参加しました。反原発デモでは東京駅周辺に集まることが多いですね。
デモに参加してもすぐには何も変わらないかもしれませんが、頭で考えるだけでなく、明確な意図を持って行動することが大切なことだと思っています。

デモに参加していると、通り過ぎるときに拍手してくれる人や支持を示してくれる人もいれば、興味を示さない人もいます。反応は様々です。無関心な人が多いですね。無関心が良い•悪いと言っているわけではなく、「私は私、あなたはあなた」という雰囲気です。
権力に対して訴えかけるというよりは、自分の考えを表明し、それを見た誰かが何らかの感情を抱いてくれたらいいな、と思ってやっています。
反原発については様々な意見があります。私がこの活動をしていることは大学時代の友人には話しましたが、職場の人には話していません。そこまで親しい友人がいないとも言えますが、意見の違いが対立を招くこともあるので、何も言わない方がお互い楽な場合もあるんです。

デモで実際に反対の声が上がったことで計画が少し変わった例もあります。神宮外苑再開発の件です。このプロジェクトは、当初、問答無用で進める計画でしたが、個人や有名人が声を上げたことで、予定よりもプロジェクトの進行が遅くなりました。声を上げた者たちは力で対抗するのではなく「本当にそれでいいのでしょうか?再考しませんか?」と柔らかい口調で尋ねました。結果的に、その計画は一時的に中断されました。

私は東京よりも静かな場所に住みたいと思っています。東京は人が多すぎて、電車も混んでいます。60才に近づくにつれ、将来についていろいろと考えることが増えました。仕事以外でもっとできることがあるのではないかと考えていますし、仕事についても、少しですが他の仕事にも興味があります。
東京がこれから先どうなるのかも気になります。人口が減少しているので、もう少し静かになればいいなと思いますが、どうなるかは分かりません。故郷も嫌いではありません。ただ、東京に生まれたことで民族文化にも興味を持つようになったのは事実です。意外かもしれませんが、東京にも長い歴史があるんですよ。その片鱗は神社などの建造物だけでなく、あらゆる場所で感じることができます。その点においては、東京はすごく素敵な場所だと思います。



8回目。

Mathieuのお知り合いのお友達
ゆかりさんです。

この企画は私の知り合いにお願いすることが多いけど、今回みたいにMathieuの紹介など、初対面の方にお願いする時もあります。

初めてお会いする方は緊張する。
これまでの生い立ちや考え方を聞くから、初対面なのに話してくれるかなーって不安もあります。
特にゆかりさんは反原発デモに参加してる方だよって聞いてたから、どんな方なんだろうと、いつも以上に緊張しました。

実際お会いしたゆかりさんはとっても優しい方でした。おだやかで笑顔が素敵な人。
デモって近寄りがたく見えてたけど、それは自分がよく見てなかっただけだったんだと思いました。

お話を聞いて、意外だったのはここ

権力に対して訴えかけるというよりは、自分の考えを表明し、それを見た誰かが何らかの感情を抱いてくれたらいいな、と思ってやっています。

考えてみたら当たり前なんだけど、公共の場でデモをするのってパフォーマンスでもありますね。
お話を聞くまで、デモっていうのは大きな権力に対して数で対抗し、文字通り大きな声を届かせようとしてるんだと思ってましたが、それだけが目的なら他にもっと効率的なやり方もあるかもしれない。自分でそこまで考えられていなかったから目から鱗でした。
ぴこちゃんの時も思ったけど、つくづく、私は自分に強く関わることでなければ考えるのを途中でやめてしまうくせがあるなと自覚させられました。狭く深くといえば少し聞こえはいいけど、狭すぎる😞
でも、だから、こうやって色んな方にお話を聞けるのは楽しいしありがたいです。

ゆかりさんのインタビューはMathieuも興味深かったようで、しばらく落ち着いてた彼がこの回ではまた熱くなってました。
フランス人は日本よりも激しくデモすると言っていたから、そのせいなのかな?
一稿目でもらったテキストでは、ゆかりさんのおだやかさが消えて、ひたすらパワフルで曲がったことは嫌い!な女性像が浮かぶようなものになっていたので直してもらいました。
(実はこの回が最後のお直し…😇この話はまたあとで🙃)

ゆかりさんは、押し付けるような言葉は一度も使わなかったです。
それは彼女が意識して気をつけてることなのかもしれないし、もともとの性格によるものなのかもしれないけど、どちらにせよとても心地良い距離感で接してくれました。

社会のなかで生活していく限り、納得いくことばかりではないです。
やりきれない気持ちの行き先が、たとえば音楽でリフレッシュすることに向かうのか、デモに参加することにつながるのか、それともまた別のことなのか、それは自分で自由に選べること。
もしかしたら、その行き先が多いほど、よりおだやかでいられるのかもって、ゆかりさん見てたら思いました😇


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