チョココロネと私 [#キナリ杯]
物心がついた頃から、
小学校のランドセル。
中学生(当時)の強制的な男子の丸坊主。
高校時代、成長期で汗をかくのに、その汗をちっとも吸わない白いプラスチック製のカラーがついた制服
など、
誰が? なぜ?
こんな”くだらないルール”を作ったのか?
両親や、先生に聞いても、「それがルールだから」と頭ごなしに諭され、挙げ句の果てには、「この子は変わった子」というレッテルまで貼られた。
小学生の頃は、子供心をこじらせ、
時代劇に出てくる悪代官みたいな校長先生が、
校長:「お主も悪よのぉ~」
ランドセルの元締め:「いえいえ、校長ほどでは。。」
と、がっつりお金儲けしていると思い込んでいた(50になった今でも思ってる)。
謎だらけなのに、誰も突っ込まない。そして、誰からも合理的で納得のいく回答が得られないまま、18歳で親元を離れ社会人になると、毎日苦痛でしかない満員電車も、サービス残業にも、
学校のルールだけじゃない。日本の社会が、自分にとって窮屈なんだ!
こんな狭い社会では、オレのポテンシャルは活かされない!!
世界がオレを待っているぜ!!!
と、アホの三段活用で、後先考えもせずに20歳でオランダへ渡った。
そして、海を渡って1年も経たないうちに、ここオランダでは、日本での常識がまったく通じないことに気づいた。
もつれる寛容さ
電車内で若いカップルが情事を始め、周囲の乗客が車掌に苦情を言うと、車掌がめんどくさそうな顔して、注意するのかと思いきや。
車掌:「君たち、何分で終わる?」
え、時間聞く??
カップル:「あ、あ、あと5分ぐらいで。。」
そこ、答えるんだ
車掌:「早く終わらせてね。他の乗客から苦情きてるから」
苦情、そこじゃないし
羞恥心のその先
オランダのサウナもおかしい。なにがって、オランダのサウナはロッカールームからサウナまで男女一緒だからだ。初めてロッカールームに入った時、目の前で女性がブラジャーを外しているのを見て、
ふひっ
って、変な声が出た。
サウナの施設内もバスローブを着る者もいるが、基本みんなすっぽんぽん。サウナ内では、男女ともおっぴろげで横になっており、たまに目を疑うほどのいちもつを持つオランダ人を見て、世界の超えられない壁を目の当たりにし、茫然自失する。
また、友達夫婦なのか、4人の男女が裸で談笑しているのを見ると、
おまえら、どんな気持ちで外で会うんや
と突っ込まずにはいられない。
併設しているレストランも基本バスローブ着用だが、さっきまで全裸で談笑していたオランダ人が、食後に爪楊枝を使用するときは、口元を隠す。
待て待て、そこは隠すんかい。
おいしさの向こう側
オランダの食も、突っ込み所が多すぎて、それを文字に起こしたら、それだけで4,000字を超えそうなので、スパイスの効いたエピソードだけを紹介しよう。
オランダの朝、昼は暖かいものを食さず、パンに挟む具はハムかチーズ。ここは重要だからもう一度書く。
パンに、ハム + チーズではない。ハム or チーズである。
また、人様の家に呼ばれ、コーヒーとクッキーを出されたら、クッキーは1枚しか取ってはいけないという暗黙のルールが存在する。もし、2枚取ろうものなら、
マナーの悪い外国人
と、長い間、伝説として語り継がれることになる。
まぁ、取りたくても、ホストが缶の蓋を閉め、キッチンへ持っていってしまうので、2枚目を取ることすら叶わない。
その理由は簡単。オランダ人は食も生活も贅沢をせず、倹約的で質素に生きることをモットーとしているからだ。
隣に住むオランダ人のおばあちゃんと世間話をしていたとき、ふと興味が沸き夕飯を聞いたら、自信満々に、
「今晩は、ブロッコリーよ」
と答えた。
正気か?ブロッコリーは料理じゃなく、野菜だし。
どうりで、買い物袋からでっかいブロッコリーが主張していると思ったわ。
そして、これぐらいで驚いてはいけない。
オランダにはドロッペというグミが売っている。スーパーに行けば、子供から大人まで真っ先に手に取る、お菓子コーナーの一番人気。
これは、味覚が違うという簡単な言葉では到底片付けられない。
グミの色は黒。
色とりどりなキャンディーや、グミが並ぶそのコーナーの一角で、”黒”は異彩を放つ。
味はグミキャンディーに塩と危険な薬物を混ぜた感じだ。
例えるなら、トラックのタイヤの味(食べたことないけど)だ。
では、なぜ、オランダ人がこれを好んで食べるのか。それは、
お菓子の中で一番安いからだ。
ケチで有名な、オランダ人らしい模範解答である。
しかし、日本の友人が我慢して食べ続けたところ、「日本の塩昆布」みたいで美味しく思えてきたと言っていたので、ドロッペはどうやら、味覚まで破壊するらしい。
キナリ杯に添える写真を撮影するため、スーパーでドロッペの品定めをしていたら、店員のお姉さんがニコニコしながら、
これが一番おいしいわよ
と教えてくれた。店内でドロッペだけ撮影しようと思っていたが、勧められた手前、撮り逃げは出来ない。
家に戻り、渋々袋を開けて、二度見した。
人面ドロッペだった。。
しかも、めっちゃっ笑ってるし。。
ドロッペは、味覚だけではなく、視覚でも恐怖のどん底に陥れる。
まがりなりにも、飽食時代と言われる日本の食生活を経験してきたので、ついつい、食の話が長くなってしまったが、
本当はこの100倍言いたいことがある。
さて、ここまで読んでいただいた賢明な諸氏は、こう思うだろう。
食事がまずく、言葉も違う、文化も違う、移民への人種差別もあるオランダになぜ、住み続けているのか?
それは、家族が生活の中心にあるからだ
オランダで働く従業員は、家族と一緒に過ごす時間を大切にするため、残業も仕事帰りの上司からの飲みの誘いもない。
さらに連続28日間もの長期休暇を取れる(休暇中も給料が全額支払われる)ため、オランダ人は家族で休暇を取るためだけに仕事をしているといっても過言ではない。
若干ハタチでオランダに渡った自分も、1年目でギリシャへ3週間バカンスを楽しみ、人生が180度変わった。
オランダ語に、gezelligheid(ヘゼリフハイト)という言葉がある。英語の辞書には「くつろぎ」という訳語が載っているが、これは少し正確さに欠ける。このヘゼリフハイトを例えるなら、
友達同士で団欒に耽る、冬の寒い日のカフェを包み込んでいる雰囲気
夕方に小さな明かりを1つを灯し、一家団欒している
そんな、
心のゆとり/gezelligheid
が、オランダ人の根底にあり、サービス残業だ、休日出勤だなど、どこ吹く風。自分自身も、この心のゆとりを見習いたく、こうして30年も住み続けている。
また、さんざんオランダの食をディスったが、近年オランダもインチキ・アジアンブームが訪れており、
スシ、ラーメン、エダマメ、テリヤキソース(最後は料理ですらないけど)
と口々に唱えはじめ、ずいぶん和食がメジャーになり、日本の食材や、レストランにも困らなくなってきた。
ただ、これだけは言わせてくれ。
オランダの回転寿司でレーンに乗っていた、
チョココロネ
おまえは、いつから寿司になったんや。
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