見出し画像

白熊杯俳句審査員賞_しち賞

約1か月の冬のおまつり、白熊杯にたくさんのご参加、ありがとうございました。

このたび、俳句公式審査員という大役を務めさせていただきました。とはいえ、俳句のプロでもないし勉強している者でもなく、こんな私が、という思いもありましたけれども、「みんなの」俳句大会、いろんな視点の公式賞が設けられています。私は私の視点で、たくさんの参加作品を楽しく読ませていただき、その中から特別に私に響いた12句に、こちらでしち賞をお贈りします。
それぞれの作品に稚拙ながら感想を添えさせていただいたのですが、詠み手の方の意図と異なっていたらすみません。記事には改めて全て目を通させていただきましたが、感想は解説を読まない状態で書いていますので、どうかご了承ください。
また、私には専門家的講評などできるはずもなく、絵を描くことくらいしかできないもので、1〜6位の作品には、これまた稚拙で恐縮ですが、それぞれの句より描いたものを添えさせていただきました。失礼がなければいいのですが、もしよろしければ、受賞者の皆さま、お持ち帰りください。

前置きが長くなり、すみません。
それでは、発表いたします。



1位
ふくれ面たいやき前に君の負け
おいしいものを食べることって、いろんな気持ちをまろやかにしてくれる効果があるように思います。ほかほかにあったかくて、甘くて、おいしいたい焼き。どんなふくれ面も、「あれ、私はなんで怒ってたのかな」なんて、それまでのことがどうでもよくなっちゃいそうな、魔法の食べ物ですね。
特別な食べ物でもなく横文字のおしゃれなものでもなく、「たい焼き」というのもまた、ちょっとした仲直りにベストマッチ。親子か、恋人か、友達か、とにかく気の張らない関係のふたりを想像させます。
ちょっと気まずいふくれ面したあの子に、たい焼き持っていこう。一緒に食べよう。ふくれ面のあとの照れた笑い顔まで見えてくるようで、前後のいろんなストーリーが浮かぶ、魅力にあふれる作品でした。


ふぅ。さん、素敵な作品をありがとうございました。
ご迷惑でなければ、お受け取りください。


2位
どの人も寡黙なペンギン冬の街
私は寒冷地で生活していますので、冬の道路はツルッツル。横断歩道の白線は、異様に滑る。道路の横断は、小さな歩幅で、ちょこちょこ、そろり、がお決まりです。「ペンギン歩き」と言ったりします。そんな経験に馴染みがあるので、この句がとてもすんなりと入ってきました。きんと冷えた街のなか、どの人もモコモコのコートやマフラーに身を包んで、ちょっと着膨れしながら、寒さに首をすくめて黙々と歩きゆく姿を想像しました。ちょっと冷たい、味気ないような風景が「ペンギン」という喩えによってなんだかかわいらしく、面白く感じられるところに惹かれました。


石塊さん、素敵な作品をありがとうございました。
ご迷惑でなければ、お受け取りください。


3位
外は雪 紅茶とマフィンときみとぼく
雪の日って、雨と違って外は静かなことが多いですね。そんな、しんしんと雪の降る静かな日に、静かな部屋で、紅茶とマフィンときみとぼくが並んでいる様子が、ただただ絵になるなあと感じました。何を話すのか、何も話さなくても、きっととても素敵な時間。「君と僕」ではなくて、「きみとぼく」なところにも、なんとなく甘さを感じて、惹かれました。このあともふたりの時間が緩やかに、穏やかに続きますようにと思ってしまいます。


moeさん、素敵な作品をありがとうございました。
ご迷惑でなければ、お受け取りください。


4位
朝散歩みつけてパリン初氷
小さい頃、登校途中で水たまりに氷を見つけたり、霜柱を見つけたりすると、うれしくなって踏みまくったものです。大人になってからは恥ずかしくってなかなかできなくなってしまったけれど、人の少ない朝の散歩の時間帯なら、できるかも。誰も見てないし、踏んじゃえ!っていう童心に帰る気持ちと「パリン」の音の気持ちよさがよく合います。わくわく感が「パリン」の三文字に凝縮されている感じがして、とても素敵な作品だと思いました。



しろくまきりんさん、すてきな作品をありがとうございました。
ご迷惑でなければ、お受け取りください。


5位
ことりともいわず新年そこにおり
ゆく年くる年を見たって、除夜の鐘をつきに行ったって、新年がくる瞬間は所詮1秒経っただけで、呆気ないものだといつも思います。明けた、けど繋がっている時間に区切りがあるわけではないし、本当に、ことりとも言わない。そんな風に、淡々とやってくる新年の存在に共感するとともに、この洗練された表現に美しさを感じました。


マー君さん、すてきな作品をありがとうございました。
ご迷惑でなければ、お受け取りください。


6位
コンビニで三枚年賀状を買う
コンビニで三枚年賀状を買う。このなかに秘められた情景の数が、情報量がすごいと思うのです。三枚だけは、印刷じゃない、手書きの特別な年賀状にしたかったのかもしれない。届いた年賀状を見て、三枚どうしても足りなくて買いに走ったのかもしれない。人付き合いが減って、三枚だけ出すのかもしれない。いろいろ想像を膨らませることができるこの作品に魅力を感じました。そして、私が見たのは、普段年賀状のやり取りもしないし、今年ももちろん準備なんかしていなかった、だけど暮れも暮れの日に家で一人飲んだりしながら急に人恋しくなり思い立って、夜遅くにいきおいでコンビニに出かけて三枚だけ年賀状買っちゃう一人暮らしの若者の絵。なんだか細かくてすみません。その様子がどこか寂しくもあり、微笑ましくもあり、良いなぁ、と思ったのでした。



見据茶(みすてぃ)さん、素敵な作品をありがとうございました。
ご迷惑でなければ、お受け取りください。




以下は、順位なしに特別響いた作品6選です(紹介は全句一覧の番号順)。時間の都合上、1句ずつ絵を準備できませんでしたが、好きですの思いはお伝えしたく、ご紹介させていただきます。


初雪や心躍りし過ぎし日よ
私は寒冷地にて生活しており、雪も大量に降ります。今となっては、冬は除雪に耐え忍ぶ季節と化しており、初雪には「はぁ〜」とため息つきたくなってしまうお年頃。ですが、こんな私にも初雪を待ち焦がれて心を躍らせる時期が、確かにありました。初雪、しかも積もっているなんていう日には、うきうきと外に出て、まだ少ない雪をかき集めて雪だるまなど作ったものです。今はなかなかそんなふうに心躍らなくなってしまった初雪ですが、こんなになってしまった今もまるっと含めて代弁してくれるような作品に、ちょっぴりの切なさも感じて心に響きました。

こたろうさん、素敵な作品をありがとうございました。



立ち漕ぎてひたすら挑む冬の風
自転車に乗っていると、ちょっと気温が下がっただけでも、寒いですよね。まだまだ寒くないよ?っていうときでも、手袋なんか履いて自転車乗っている方もいらっしゃる。自転車って風を直に受けて、寒い。それでも行かねばならない、進まねばならない先があって、冬の厳しい風にも果敢に立ち漕ぎで挑む自転車と人の背を思い浮かべました。子どもを迎えにいくお仕事帰りのお母さんとか、部活の朝練で学校に行く学生さんとか。どんな人でも、やっぱり冬の風に挑む勇者の姿はカッコイイ。そんな凛々しい姿が見えてくる作品でした。

くーや。さん、素敵な作品をありがとうございました。



ハンドクリームハンドクリームや猫あくび
ハンドクリーム、鞄の中、部屋の中、なくしがちですね。乾燥した手にたっぷり塗りたいハンドクリーム。今塗りたいのに見つからない、どこだ、どこだ、どこ行った・・・と困りながら探すニンゲンの傍ら、「知らーん」とばかりにのんびりあくびしている猫さんのいるお部屋の風景を思い浮かべました。のどかであったかい日常を切り取ったような雰囲気、とても好きです。

プッククンさん、すてきな作品をありがとうございました。



大丈夫蹴とばした嘘息白し
冬は夜が長くて、寒くて、家にこもりがちで、気持ちが下がり気味になったりする方が、相対的に多いんじゃないかなと思います。何かあったのかもしれないけれど、何もないかもしれなくても、よくわからないけど押し寄せてくる不安を、「大丈夫」って、蹴とばす勢いと、その蹴とばす行為に付随して立ち上る白い息、絵になるなあと思いました。自信なんかどこにもないけど、嘘でも大丈夫って蹴とばすエネルギーが頼もしい。その背中を応援したくなります。

riraさん、すてきな作品をありがとうございました。




着ぶくれし私と雀朝の道
寒い時に空気をいっぱい羽に含んで丸まっている鳥さんの姿が、かわいらしくて好きです。鳥さんは寒くてそれどころではないのかもしれないけれど、膨らんで丸まって、じっと耐えているような姿は、かわいらしくもあり、健気でもあります。ニンゲンには羽はないけれど、たくさん着こんで膨らむ姿はどこか膨らんだ鳥さんに似ていて、似た者同士の朝の出会いにお互い親近感を持ったりする瞬間、できれば当事者になるのではなくて、傍から眺めてにっこりしたいなと思いました。

だいなさん、すてきな作品をありがとうございました。



絵馬の誤字笑って許す冬の神
誤字・誤植が結構好きです。人の間違いを笑ってはいけないかもしれないけれど、絵馬なんて目の前にあったら、ついつい読み込んで誤字を探してしまうタイプです。でも、絵馬にお願い事を書くまっすぐな思いは、誤字くらいでゆるがないのです、きっと。届けられた神様も、願い事は真剣に受け止めつつ、それでもおもろい誤字にはぷぷっと笑っちゃったりするだろうな、なんていう、やさしくておおらかな神社の空気を感じました。あったかくて好きです。

めろさん、素敵な作品をありがとうございました。



以上、しち賞12作品でした。
noteという場所で、この大会を通して出会えたすべての方へ、すべての作品へ、敬意を、感謝を。
また、できれば、次の大会でも、お会いできますように。



「ほら、いつもそばにいるよ」


ですね。

このあとも最後まで、お楽しみください。



ありがとうございました。


しち

絵のことばかり考えているので、いただいたサポートは大概絵のこと・活動・絵を描くための何かしらに使わせていただいています。