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No.133 最近観た映画雑感

 ここ最近(大体5月以降)に観た映画の雑感を, 元々は個別の「note」に書く予定だったが書くのが面倒くさくなったので, 観た順番にここにまとめて書くことにする. 

1. 名探偵コナン 黒鉄の魚影

 今回は

1. ここ10年ゴミ映画しか出していないコナン
2. ハズレが多い黒の組織回
3. 稀代の粗大ゴミ「業火の向日葵」を含む, ここ10年の数々のゴミの大戦犯櫻井武晴脚本回
4. 音楽が大野克夫じゃない

等々の諸々の要素から「約束された敗北の映画」となり, 観る前から絶望し, 観にいく気力さえわかなかった. でも「天国へのカウントダウン」以来実に21年ぶりの灰原回なので, 降圧剤を飲んで, かつ見終わった後``憤死''して立ち上がれなくなったときようの介助を知り合いに依頼した上で覚悟を決めて, 6月半ばに観にいった. 

 結果は

『ツッコミ所は``無限''に存在したが, それ(と房江ブランドやベルモットを巡るいくつかの謎)をムシすれば,「迷宮のクロスロード」以来, 実に20年ぶりにコナンを観て「いい映画だ」と思った』

という実に意外な感想になった. 

 たとえば, 通例のように「黒の組織回」は本編に踏み込み過ぎないように結局「なんちゃって展開」になりがちで基本的につまらないのだが, 今回は意外な程(こちらが心配するほど)に踏み込んでいた. 

 またいつものようにオールスター感を出そうとキャラを出しまくって, 話の焦点がボケてしまうというやらかしも今回は無く, 各キャラの役割を非常にキッチリ割りきった形にして, 灰原に焦点を絞り続けた構成だったのもうまかった. たとえば「天国へのカウントダウン」と違い, 園子や少年探偵団は序盤で早々に退場させていた. 刑事組もいつも目暮, 佐藤, 白鳥に引っ付いてくる高木, 千葉を削る等, 地味にうまい構成をしていたし, FBI組, 赤井, 安室, 更には小五郎まで含めてキッチリワンポイントリリーフ要因でそれ以上のアクションをさせなかった. 

 これは映画の構成の評価だがそれ以前に, その前提となる物語の設計思想が極めて明確であり, 更にはその思想に忠実に作られたアニメであった点が私の評価が高くなった最大の理由である. 一言で言うならば, 

『「黒鉄の魚影」とは「君がいれば」を「灰原の歌」にした映画である』

ということになる. 「君がいれば」はどう考えても明らかに灰原哀の歌ではない. それを物語の展開, シーン, シチュエーションをマッチさせることで, 灰原哀の(為の)歌にするための舞台装置が「黒鉄の魚影」だったのである.

 たとえば, 今回メインテーマの曲調がかなりシックで, あまりメインテーマっぽくない. 個人的にはあまり好きではないアレンジだったが, しかしあれはメインテーマではなく,

『「君がいれば」のインスト版』

であり, そう考えれば何故ああいうアレンジだったのかしっくりくる. 細かいことを言い出すとキリがないが, ある意味色々な描写がこうした丁寧な積み上げになっていて, それがきちんと「灰原の歌」にするために有機的にうまく機能しており, これは非常に見事だと思った. 

 ちなみに今回何気に一番驚いたのはキャストで, まず直美が種崎敦美であることに(何故テロップを観る前に気付けなかったのかと)驚き, 更にその後にピンガが村瀬歩であることに驚いた. 特に後者は衝撃で, というのも私はグレースを沢城みゆきだと錯覚したからである. つまり,

「村瀬歩は沢城みゆきさえもトレースできてしまう」

ということで, 村瀬歩の評価を改めざるを得なかった. 彼にも「弱点」はあるが(「ラグナクリムゾン」のPVを聞きまくって, 彼が苦手とすることに気付いた), それを差し引いてもこれは驚くべきことであろう.

2. セーラームーン Cosmos

 10年近く続いた「Crystal プロジェクト」の最終章ということで, 一応観にいく. 感想は

『出来の悪いダイジェスト』

これは「コナン」とは真逆で設計思想が根本から間違っていたからだと思う. つまり「コナン」が「劇場アニメ」という形式とその特性を120%理解した構成になっていたのに対し, 「セーラームーン」は「テレビアニメ」(しかも90年代の)の形式で設計したのを, 劇場アニメ枠にカットして, 圧縮して押し込めた感じ.

 極めつけはセーラームーンの更年期の如き情緒不安定っぷり. これが「テレビアニメ」ならばシーンを挟んで週で区切れるので, 余り問題は生じないが, 劇場アニメでは「コイツ頭がおかしいんじゃないか?」と心配になるほど, 躁鬱描写になってしまっていた. 尺が足りずとも, もっと他にやりようはいくらでもあったろうに残念である. 

ただ, 前編の「ムーンライト伝説」の OP

だけはよく, まぁこれが劇場で観れただけで十分といえば十分である. 実際, 前編を観た時, 前の方の席にこの OP だけを観て, 帰って行ったおじさんがいたが, 彼は全く正しかったと思う. 

3. 青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない

 4年前の前作がアレ(ナニコレ)だったから, 大した期待もしていなかったどころか, 観にいく気もなかったが, たまたま映画館に行ったら舞台挨拶回の枠が空いていたのでたまたま観たのだが, これが意外に面白くて驚いた. 細かいツッコミどころとしては

1. 学校の窓の鍵の位置が低すぎる
2. 七里ヶ浜から見える富士山が大きすぎる(多分, 富嶽百景的デフォルメ)
3. 高校受験の願書の出し方が変(願書を高校に中学生が直接持っていくことはあるのか? 普通は郵送か, 持っていくとしたら教員がまとめて学校ごとに直接持っていくのでは?)?
4. 北陸新幹線が平成27年3月前に開通しており, おかしい

等々はあったが, なんか

『山田洋次が令和の今「学校」を撮ったらこんな感じのテーマを扱うかも』

と感じた. これは「思春期症候群」を余り表に出さなかった点も大きいかもしれない. なんだったら, 変な左翼色(ノイズ)が無い分, 山田洋次よりも諸々をうまく描いていたと思う. 

4. ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

 最も衝撃を受けたタイトル. これは売れるわけだ. 驚いたのは

『任天堂が一発で完璧な``正解''を作り上げてしまった』

という恐るべき事実である. つまりこの作品は

『任天堂が「これでいいのだ」と知ってしまった作品』

である. これでたとえば任天堂のタイトルの数だけ映画化が出来てしまう. 10年後には, ポリコレで衰退したディズニーを越える可能性さえ十二分にあると思う. その口火を切ることになるであろう恐らくは記念碑的作品である. 

 次は「ヨッシー」関連のようだが, 個人的に期待しているのは「ゼルダ」シリーズと「メトロイド」シリーズである. 恐らくはどこかのタイミングでこれらを作ってヒットするか否かがこのジャンルで任天堂が世界を制す「天王山」になると思う. 

5. 劇場版シティーハンター 天使の涙

 今年の大本命. このために東京出張時に, わざわざ新宿に泊まり, 観に行った. 期待通りの出来であったが, 期待以上の出来ではなかった. というより前作の「新宿プライベート・アイズ」の劇場アニメとしての完成度が余りに高すぎた(「愛よ消えないで」他の往年の名曲を贅沢に挿入歌に使って, EDが「Get Wild」と「STILL LOVE HER」とか完璧すぎるだろ). 今回の「天使の涙」は劇場アニメというよりはテレビアニメの「忘れ物(ユニオンテオーペ関連エピソード)」を取り戻すための「テレビアニメスペシャル第一部」という感じで, 結構好みと評価が別れる気がする. 往年のコアなファンは喜ぶだろうが, 個人的には厳しい気がする. 少なくとも, 劇場アニメとしての評価は, 現状では「新宿プライベート・アイズ」の方が遥かに上である.

 ただ往年のアニメスタッフが長年続いた店をたたむ覚悟をしたことに関しては, 非常に潔く, 数多のタイトルがマネできない勇気と奇跡の序章とも言える. これを完結し切ったら, その時はまた評価を改めざるを得ないだろう. 

6. 映画「ミステリと言う勿れ」

 ある意味安心感を持って観れた作品. そして案の定安心して観れた. 原作は知っていたので, 犯人やオチを知っていたが, それでも十二分に楽しめるよくできた映画だった(「東広島から新幹線で東京には帰らんだろ(一駅広島に戻ってのぞみを捕まえるだろ)」等のツッコミはあったが). 何なら原作を知らずに観たかったくらいである.

 しかしそれにしても, 「女々しい映画」である. 私が田村由美の思想に全面賛同するわけでもないことが大きいのだが, どうも屁理屈以上に女々しさが鼻につく(たとえば『「「女」云々関連の用語が男が作った negative な用語」というのは半分くらいは正しいとしても, それに対して「「男」云々関連の用語はない」という返しは明らかにおかしい』といったこと). まぁ,「そういう選択肢があっても(あった方が)いいんじゃない?」がテーゼの作品だから, それが「正解」で, 色々と綺麗に収まっているのが, この作品の面白い所である. 実際, 「真実は一つとは限らない」という思想以上に, この「女々しさ」こそが「ミステリと言う勿れ」の本質(「女々しいミステリー」)だと思う. 

 特に広島編に関してはドラマで2回枠よりも, 劇場版で一気に片したのは確かに英断だったと思う一方で, その分「女々しさ」がいつもより強調されていたと思う. これで少し評価が別れるかもしれない. ただ実際は「女々しさ」に関しては否定的な私でも, 「よくできている」と感じるくらいだから, 世間一般としては(昨今の世相的には)そんなに問題にならない(寧ろ positive な要素)かもしれない. 制作側もその辺はちゃんと計算している感じがしており, その意味でも「令和的ミステリー」と言ってよいだろう. 

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