団体スポーツ、バスケへの投げ銭(ギフティング)にはストーリーづくりが必須
3記事目は、最近のトレンドであるスポーツの無観客試合を行うにあたっての、マネタイズ手段として注目されている投げ銭について自分の思いを書いていきたいと思います。
高まる投げ銭への関心
最近のスポーツビジネスセミナーなんかでも、必ずキーワードとして上がる投げ銭。コロナウイルスによって観客を入れた試合がいつ実施できるかわからない中で、関心を示すリーグや競技団体が増えているように思われます。
もともとは、ストリートミュージシャンや大道芸に対して、シルクハットやギターケースにお金を入れる仕組みをネット上で実現したもので、最近ではYouTubeを始めとする、動画配信に対して発信者にお金を投げることが出来ます。この仕組みをスポーツに応用できるのではと、注目されています。
投げ銭に対する障害
しかし既に言われている事ですが、そもそもこれらのユーチューバーや配信者に対して行う投げ銭と、スポーツにおける投げ銭ではかなり大きな違いがあります。言われている違いはこんなところでしょうか。
①投げ銭の動機
ゲーム実況配信やユーチューバーへの配信の大きな動機は、「自分のコメントを配信者に読んでもらいたい。」に尽きます。応援したいなどの理由もありますが、これが最も大きな理由であることは間違いないでしょう。特に人気の配信者には滝のようなコメントが流れるので、自分のコメントを読んでもらうハードルはなかなか高いものがあります。
一方、スポーツだと試合中にコメントを読むなんて出来ません。そもそも従来の投げ銭の動機が異なることになります。
②投げ銭の対象
特に集団スポーツの場合、投げ銭の対象が個人なのか、チームなのか、はたまたマスコットや審判なのか、それはファンによってさまざまだと思います。これはアプリケーションで解決できることかもしれませんが、本当にその選手やコーチにお金が行き届くのかという話にもなりかねませんよね。
③既にお金を払ったうえで見ている
そもそも往々にしてスポーツのライブ配信を見るためには、最近ではサブスクの動画サービスに登録する必要もあるので、YouTubeなどの無料配信の仕組みとは異なります。コアファンを対象とするのであればそれほど障害にはならないかもしれませんが、個人的にはお金を払って試合を見て、さらに投げ銭をするというのは、もう一つハードルがある気がします。
④放映権所有者の存在
これは投げ銭だけの問題ではないですが、今後オンライン視聴のニーズが急増するのであれば、従来のリーグとは別の放映権所有者の存在は、柔軟なサービスを提供したいリーグ、クラブに対して、大きな障害になりそうです。
そもそも放映権自体の価値が上がり、これまで通りの契約からの変革も必要かもしれません。
と、こう見るとかなり性質が異なってきそうな気がします。では、バスケを始めとする団体スポーツが考えるべきこととはどういうところでしょうか。
ファンのストーリーを考える
これは何も今回のことに限らず、新商品やサービスを考える際に、非常に重要になってくる要素だと思いますが、上記のようにかなり新しい体験を創造する必要があるため、この考え方は必須だと考えられます。
その名の通りファンが、スマホを開いて試合のライブ配信を見ながら、投げ銭をし、試合が終了するまでのストーリーを、リーグやクラブ側で想定、定義しなければなりません。
そしてそのストーリーを考えるためにはターゲットが不可欠です。
オンラインで試合を見ると言っても、一人で見てるのか、家族や友人と見てるのか、それも自宅で?画面シェアで?スマホなのかPCか、食い入る様に?ご飯を食べながら?等、様々なシチュエーションが想像されます。
本来これらを考えるには投げ銭にて得たい収益や、目標ユーザー数等も勘案し、投げ銭をしてくれそうな層にターゲティングを行うことになるかと思いますが、今回は勝手に自宅のリビングで一人でスマホで見てる人と仮定して、Bリーグの場合で考えてみます。
いきなりここで問題となるのが、上記の③④の問題により、動画配信サービスと投げ銭のサービスが別で存在する可能性ですが、ここではこの議論は長くなるのでやめときましょう
※Bリーグは、ソフトバンクが放映権を所有しており、同社が提供するバスケットライブにて既に選手に対して1日100個のファイアを飛ばす(もっと飛ばしたければ課金)ような仕組みもあります。ただ④で書いたように、もし放映権が高騰するのであれば、どうなるかは分かりません。
ストーリーを試合観戦中に進めると、上記①②の問題が出てきますね。考えるべきは、どんな状況で誰に投げ銭したいと思わせるかだと思います。
ただ好きなメンバーに投げるのか、活躍した選手なのか、好きな選手がシュートを決めた時なのか。
完全に個人的な意見では、
まず初めにお金をチャージ。1度の投げ銭額を1円や0.1円のような少額にして出来るだけ多く投げられるようにする。
好きな選手が活躍した際に、ボタンを連打、もしくはスマホを振る、声を出すなどのアクションにより、投げ銭が投下される。
という具合にすれば限度額の中で楽しめますし、いい試合の場合にはさらにチャージ→投げ銭と促せる可能性もあります。
ただこれだけでは、まだ投げたいと思いませんし、試合を集中して見れないかもしれません。無観客試合のもう一つの課題されているのが、選手が観声を聴けないという事ですが、投げ銭がアリーナに反映されるような仕組みも非常に面白いかもしれません。
簡単に考えられるのが、音です。いくつかの音をあらかじめ用意し、投げ銭によって試合中にそれを流す。場面によって選択できる音が変わり、相手チームのフリースロー時は妨害音、味方チームのフリースロー時には流せない、などのことも可能かもしれません。
これにより、試合会場で試合に参加してる感はかなり演出されるような気がします。
考えるべきもう一つのストーリー
上記の仕組みだと、最初にあげた②投げ銭の対象の設定があいまいです。動機が会場内への音の共有なので、「この選手にお金を届けたい。」というニーズは満たされませんし、ここが一番大きな投資が得られる可能性を秘めている気がします。
そのため上記とはもう一つ別の選手への直接的な寄付として一定額の投げ銭が必要です。先程の音の仕組みで、投げ銭の対象を随時選択出来てもいいかもしれません。なかなか操作が忙しそうですが。
そして、こうした側面を持たせた場合、そのお金が選手に全部届くのか、他に何に使われるのか。といった説明が非常に大事になり、そのストーリーを見誤ってはいけないと思っています。
現状だと、基本的には投げ銭はリーグまたはクラブ(このアプリの運営主体がクラブだったらクラブですが、なかなか現状難しそう)に入り、そこから選手に数%届くようになると考えています。
でなければ、これらのアプリへの投資を回収できないですし、リーグやクラブはこれをやる意味がなくなっていまいます。では、リーグに何%、クラブに何%、チームに何%入るのか。この説明をしっかり行わないと、ファンは納得感を得られません。
そして現状、多くの投げ銭はリーグやクラブの収入になることになると思いますが、その理由、意味、価値をきちんとしたストーリーで説明することで、投げ銭は初めて成立すると思ってます。
無観客試合
つらつらと自分の考えを書き殴りましたがいかがでしたでしょうか。違う意見や賛同ありましたら、フィードバックいただければ嬉しいです。
さて、NBAはまだプレーオフの開催を諦めていませんね。
どうなるかは分かりませんが、もし無観客試合を決行するのであれば、色々複雑ではありますが、投げ銭含めたマネタイズ方法には非常に注目したいところです。
投げ銭以外にも、観戦方法によるアクティベーションも注目されておりますし(従来はコートが広く映る場所からの映像のみだが、課金することでコートサイドから見れるとか、審判目線で見れるとか、コーチにカメラとマイクを付けて会話も聞けちゃうとか)
試合を盛り上げるための方法にも非常に注目です。
今後も新情報あれば共有したいと思います。
読んでいただき有難うございます。
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