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三井のすずちゃんとは何ぞや 再開発で東京を壊しまくる大手ゼネコン

 三井不動産が意味不明のテレビCMを流している。広瀬すずがやたら三井不動産に詳しくて、友人たちに説明しているうちに、いつの間にか「伝説の、三井のすずちゃん」になるという内容である。

 「またおじさんたちが若い女性を使って、訳のわからないCMを流している」と、無視すればいいのだろう、私にはそうできない事情がある。三井不動産などの大手ゼネコンが無意味な再開発で、東京を壊しまくっている現状を目の当たりにしているからである。

 それはまさに、東京の徹底的な破壊と言ってもいいぐらいの規模だ。その典型が、東京五輪を名目に始まった「神宮の森」の破壊である。東京五輪関連の建設時事業の中でも最も素早くて、あっという間に国立競技場を壊してしまった。

 神宮の森は、東京の貴重な緑として100年間維持されてきて、誰も手をつけないことが暗黙の了解になってきた。それを、東京五輪を契機に高さ制限を外し、アリバイ的にスポーツ政策の司令塔的な施設を入れた、複合型高層ビルを建てるというものである。

 その第一弾として、国立競技場の解体は速やかに行うべきものだったのだ。しかも今後、人口も若者も減るというのに旧国立を上回る大きさで、今後維持していくのはほぼ不可能なのである。国も最初からそれを認めていて、あとは民間に丸投げである。

 おかげで神宮外苑の景観は大きく変わってしまった。そして今、本格的な破壊が始まっている。三井不動産をはじめとする事業体は、なかなか再開発の内容を明かさなかった。それが明らかになってみると、樹木を千本斬ることがわかったのだ。

 長くなるので続きは省略するが、どこでもかしこでも似たような事態が起きている。高畑充希に「次へ行こう」と言わせている三菱地所のCMにしても、東京駅前に日本一の高層ビルを建てるという、半世紀前の発想を高々と掲げている。東京駅の前は高層ビルの建設ラッシュが続き、せっかく完成時の姿を復元した東京駅が谷間に沈んでいる。

 どうしてこういうことをするのかというと、それ以外に大手ゼネコンの仕事がないからだ。今の日本はもはや橋やダムの新築もない。できるのは劣化した建物の再建築だけだ。それが文化の維持ではなく、目新して無意味に大きい高層ビルになってしまうところが無惨なのだ。

 渋谷などは100年に一度の再改造で、20年かけて街を作り替えるとし、駅の周囲が高層ビルで囲まれるような形になりつつある。しかし、渋谷にはもう以前のような活気はない。完成した頃には寂れている可能性すらある。

 それでもゼネコンは街を壊し、再開発に突き進む。評判の悪いタワーマンションも東京全体で、これから30以上建つらしい。IT長者が住むのか中国人が投資目的で買うのかわからないけれど、タワマンは解体もできない。将来は修繕もできず、墓石のように林立するのではないか。暗い近未来である。

 こうなってしまったのは、大手ゼネコンが政治と癒着することによって、ゼネコ不況を生き延びたからである。中小は潰れたが、大手は国の公共事業に携わって生き残った。時代に合わない産業が政治に助けられて生き残ると、こういうことになる。

 いわゆる重厚長大産業も同じだ。岸田政権がいまだかつてない軍拡に突き進んでいるのも、一つには業界がそれを歓迎しているからである。あまり知られていないようだが、今や日本はアメリカの欠陥機F35戦闘機の、アジアにおける修理製造拠点になっている。

 しかも先日、日本はイギリスと武器の共同開発を行って、輸出も視野に入れると言い出した。そんな話は聞いていないぞ。国会での議論もせずに、勝手に決めて発表するのである。唖然とする。各国の軍事産業は今、日本を巻き込もうと意気込んでいる。

 とはいえ、これは「武器輸出」を「防衛装備移転」と言い換えた時に、予想できたことだ。各国の軍事産業は今、日本を巻き込もうと意気込んでいる。数年前から晴海で武器の見本市まで行われているが、マスコミが伝えないのであまり知られていない。

 日本がIT分野で遅れを取ってしまった理由の一つは、ゼネコンや重厚長大産業のような時代遅れの業界が、まだ財界の中心にいるからである。そして再開発で街の文化を壊し、軍拡を推進している。

 経済の仕組みというのは重要だ。経済の青写真を描き、それによってどういう社会を作っていくかを考えないと、こういうことになる。今や国を上げて「投資、投資」と大騒ぎだが、投資は本来「産業資本」の提供であり、公共の利益になる企業を育てていく作業でもある。それが単なる金儲けの次元でしか語られないところに、私は危惧を抱く。

 



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