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Nothing's Carved In Stone『Futures』レビューと気に入った曲

2020年8月26日リリースのNothing's Carved In Stoneセルフカバーアルバム『Futures』について、感想をつづっていく。

結論としては「ファンは勿論、ナッシングスに興味のあるロック好きも必聴!面白いアルバムだから入手して全曲聴いて!」で終わってしまうんだが 笑

とはいえ2枚組で全20曲というベストアルバムの側面もある収録数には二の足を踏むかもしれない。
一般的なベストアルバムは1枚(もしくは複数枚に)に容量限界近くまでシングル曲中心に詰め込むパターンが多い。
これから聴きだすファンにはお得だし、どのアルバムを選ぶか迷う必要もなくとっつきやすい反面、年代を跨いだ主張の強いキラーチューンが盛りだくさんだと食傷気味になり、逆に印象に残らなかったりすることがある。

だが『Futures』はDisc1・Disc2それぞれが同時期にレコーディングされた、10曲入りのスタジオアルバムとして聴き通せるというのがリスナーとしてありがたいポイント。

起伏の少ない聴き流せるアルバムだというわけでは決してない。
代表曲やライブ定番曲満載には変わりないのに一つの作品群として良質に感じるのは、曲のチョイスが絶妙なのもさることながら、原曲とはたしかに違うドラムの質感の変化が大きい。
インタビューによると、スネアドラムのピッチを下げることにより音場に空間が生まれ、他のパート、特にボーカルの音域を聴きやすくしているとのこと。

個人的には他パートを活かすために一歩引いたというより、アップデートしたドラムレコーディングが核となって、他パートがそれに追随するように演奏し、新たなグルーヴが出来上がっているという印象を受けた。
(この辺りはイヤホンよりヘッドホンやスピーカーで聴いた方が分かりやすい)
ドラムが中核のアルバムといっても過言ではないと思う。


音がアップデートされたのはドラムだけではなく全パートがそうで、曲に大幅なアレンジは加えず第一に音作りに拘ってレコーディングを行ったようだ。
Twitterでレコーディングの様子がアップされているが(下記URL等)、楽器を曲によって細かく使い分けている。
自主レーベル立ち上げ後携わったエンジニアの手腕も大きいだろう。
https://twitter.com/NCIS_BANDS/status/1293140365680111616
https://twitter.com/NCIS_BANDS/status/1294952320812216324

またうまく言葉にできないが、全体的にライブっぽさを感じるのも止まらず一枚聴き通せる理由の一つ。
ライブでは忠実には再現できない一度きりのスタジオレコーディングというより、これまで培ってきたライブアレンジをセルフカバーに落とし込んだといったところか。

繰り返しになるが聴いてもらえれば一筋縄ではいかないアルバムだとわかると思う。
「とにかく聴いて」これに尽きる 笑

後半は特に気に入った曲について書いていく。

♪Isolation (Futures Ver) 

ギターソロ以外大幅なアレンジの変更はみられない。
原曲はリードギターとベースがとにかく前面に出て(タイム感的にも突っ込んで)、ドラムとボーカルがそれに負けないように熱量をもって追随するような(勝手なイメージ)スリリングなミックスだった。
対してFutures Verは締まりのあるドラムを軸に、4人が横一線で鳴っている印象。バッキングギターも鮮明で力強くなっている。
今のナッシングスのグルーヴがよく表れていると感じる。

♪Nothing's Carved In Stone「Isolation」Official Music Video(Self-Cover)
https://youtu.be/Z81LJumJ1pM

November 15th(Futures Ver)

1stアルバム『PARALLEL LIVES』収録のライブ定番曲。
ライブで聴くとテンションがあがり、客層によってはモッシュ・ダイブが起こることもある曲なので、ライブVerに寄せた激しめのアレンジも可能だったと思う。
具体的には原曲でギターがクリーントーンならクランチに、クランチならもっと歪んた音に、ボーカルはよりエモーショナルに、ベースはアドリブを挟んで、といった具合に。

しかし“November 15th"に関してはイントロなどのアレンジこそあれ、基本的には原曲準拠のテンション。
静かなイントロから始まり、サビでも比較的淡々とした、歌詞を噛みしめるようなボーカル。
激しさ・勢い重視の曲なら他にもある中、この曲を再録するにあたり「“November 15th"という曲の旨味はどこか」を再確認し、もう一度かみ砕いた上で今のサウンドで表現したんだという印象を受ける。

♪Red Light (Futures Ver)

カッティングリフをバックにした歌が主役の一曲。
キャリアを重ねて深みを増した、感情込めて歌う拓さんの歌声に聴き入ってしまう。
ドラムをはじめとする奥行きのある音場が穏やかな曲調にとてもマッチしている。

♪Brotherhood (Futures Ver)

“November 15th"同様に原曲の良さを再認識できるセルフカバーになっている。
ここ何年かのライブだと、どこかガツガツとした力強いグルーヴだと感じていたが(気合が入っていたであろう武道館公演とか。それはそれで好き。)、Futures Verはシャープな音作りでキレがあり踊りたくなるような出来になっている。
再録後のライブでは演奏がどう変化するのかもこれから楽しみだ。

♪ツバメクリムゾン (Futures Ver)

個人的に原曲より格段に良いと感じた。
どことなくオーソドックスな邦楽ロック曲という印象でそこまで好きではなかったのだが(好きな人ごめんなさい、ライブverは前から良い)、今回の奥行きあるレコーディングで文字通り生まれ変わったようなクオリティに仕上がっている。
拓さんのボーカルには説得力があり、サビの盛り上がりも力強い。
ラジオから流れてきたらふと耳を傾けるような、他のロック曲とは一線を画す特別感が生まれた。

♪BLUE SHADOW (Futures Ver)

これはもはや新曲といっていいクオリティ…。BLUE SHADOW完全版。
元々は3rdシングルSpirit Inspirationのカップリング曲で、2016年の一度目の日比谷野音公演でも本編ラストに演奏した、隠れた名曲といえるポジションではないだろうか。
なのでセルフカバー入りは意外であり、嬉しい選曲。
曲の終盤に向かってじわじわと世界が開けていく感じがたまらなく気持ちがいい。


おわりに

以上独断と偏見によるレビューでした。
個人的にはこのアルバムがきっかけで他バンドのドラムチューニングや抑揚を意識するようになり、音楽の楽しみ方をまた一つ見つけることができた。
原曲と聴き比べたりと、色々と発見があるセルフカバーアルバムだと思うので是非聴いてほしい。

♪Nothing's Carved In Stone「Rendaman」Official Music Video(Self-Cover)
https://youtu.be/R6MdiUsTKbI