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若手による「(笑)狩り」は、なぜ始まってしまったのか。

「(笑)」はメールやチャットなど、瞬時にテキストでコミュニケーションを取る世界において、たくさんのトラブルを防ぐことに貢献し、人間関係の構築を助けてきた。

しかし、いつしか「(笑)はオジサンくさい」とか、「(笑)を使う人は苦手」など、若手から辛辣な意見も目立つようになった。

そりゃそうだ。
だって使い方を間違った「(笑)」は、使っている本人は「ニコニコ」のつもりでも、相手にとっては「ヘラヘラ」なのだから、不快でしかない。

だが単純に「(笑)」を使うのはオジサン、と断罪し、「(笑)」をこの世から駆逐するのはちょっと待って欲しい。

そもそも、この(笑)のルーツはどこからなのか。

それは、

「(笑)」という表現は、古く第二次世界大戦前から用いられる。元々、議会や裁判所などにおける速記録で、発言の状況を描写する際に用いられたものと考えられる。
引用元:Wikipediaから抜粋

会場の様子や雰囲気を、手早く文面にメモするために(拍手)とか(笑)などを使っていたんだね。

本来、一瞬で雰囲気を伝えるためのツールとして、「(笑)」は今も昔も使い勝手抜群のテクニックだってことだ。

ケンドーコバヤシさんは、

「文章でツッコミをするときに(笑)は欠かせない。(笑)が無いと怒ってるように見えてしまう。だからオレは今でも使う」

と仰っていた。

たとえばLINEで、

「誰がだ、こら」

と打ってきたら(あれ?怒らせてしまったかな..?)と思うよね。

それが、

「誰がだ、こら(笑)」

だったら、見事にツッコミとして成立する。

これだけの力を持っている「(笑)」だからこそ、「(笑)」はあらゆる場面で人々のコミュニケーションを救ってきた。

しかし、使い方を間違えるとダサイ、そしてウザイのも事実。

それはもう、花柄のシャツやダメージジーンズなど、ひとつ着こなしを間違ってしまえば見事な「勘違いおじさん」になってしまう難しいアイテムのようだ。

たとえば、

「おはよう(笑)」
「元気?(笑)」
「その方向でよろしく(笑)」
「いま電話しても大丈夫?(笑)」

など、仕事の現場でもプライベートでも間違った使い方をした「(笑)」のパターンは無限にある。

こんな凶行がまかり通ったおかげで、いまや令和は「(笑)狩り」の時代に突入してしまった。

なぜここまで相手を不快にさせられるのか。

理由は簡単。
だって面白くもないのに笑っているんだもの。

仮にあなたが20代の女子だとしよう。
女子2人とおじさんと、計3人で駅前の有名なケーキ屋にスイーツを食べに行ったとする。

しばらくして、フォトジェニックなスイーツが運ばれてきてテーブルに置かれた。

美味しそうで、キラキラして、見ているだけで楽しい気分になる。

女子2人は、

「わぁーおいしそー!きれーい!」

とリアクションを取るだろう。

しかしここでおじさんのリアクションが、

「わー、なにこれー、ウケるー!」

だとしたら、どうだろう。

ちょっとリアクションがズレている。
だってべつにウケないし。

「(笑)」の間違った使われ方は、このおじさんのしょうもないリアクションに似ている。

いま表現したいのは「おいしそう、きれい、すてき」など素直な気持ちであるのに、「ウケるー!」といった空気に合わず的外れでチャラチャラした表現は、素直な自分たちの感情をバカにされているような気持にさえなる。

ちなみに、この女子がインスタにスイーツの画像をアップしたとしよう。

すると、べつのおじさんが、

「おいしそ~!(笑)」

とコメントするだろう。

「(笑)」、いらねーだろ、と。

いかに意味が分からないかご理解いただけるだろうか。

こんなことを繰り返していたら、若手から「(笑)」が毛嫌いされてしまうのもいたしかたない。

対面コミュニケーションで、べつにこちらが面白いことを言ってもいない、もしくは面白い状況でもないのに笑っている人は、気持ちの良いものではない。煙たがられる。

「ニコッ」という笑顔はもちろん良い。
でも「(笑)」を使う場面を間違うと、空気に合わない笑い方になる。

人間は笑顔は好きだが、わざとらしい笑い声は嫌いだ。

失礼を承知で例を出すと、林家ペー・パー子さんの芸はあえてそれをネタしている。

ペーさんがまず面白くないことを言って、それにパー子さんが「ハー!」と甲高い声でおおげさに笑う。

視聴者は一瞬「?」となり、おいてけぼりになる。

でも、そこに第三者の芸人さんが「なにがおもろいねん!」と、怒りをこめてツッコむ。

ツッコミが視聴者の想いを代弁した構図になり、笑いが成立する。

これは、ツッコミがいるから、笑いとして成立しているプロの芸だ。

パー子さんの「ハー!」だけではワケが分からないので、理解に苦しむ人もいるだろう。

そして文章の「(笑)」には、だいたい第三者がいない。

面白くもない会話でひとり笑っているおじさんを、どう扱えというのか。

オジサン「おはよ~!(笑)」
若手  「おはようございます~(にが笑い)」

とか?

でも、本来はこれに年齢なんて関係ない。これはコミュニケーションのうまい下手なのだから。

うっかり若手でも使い方を間違えれば「狩り」の対象になるので気をつけよう。

「(笑)」は、正しい使い方さえできれば、円滑なコミュニケーションにおおいに役立ってくれる。

冒頭のケンドーコバヤシさんの話にあるように、「(笑)」は今でも多くの現場で人々を楽しい気持ちにさせ、トラブルを未然に防いでいる。

「(笑)」に罪はない。
罪なのは、「(笑)」の使い方を間違っている人々だ。

どうか「(笑)」の存在価値を、もう一度見直してあげて欲しい。

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