カルーア・ミルクがいちばん美味しい。
20年ぶりにカルーア・ミルクを飲んだ。
いや、正確にはちょいちょい居酒屋とかで頼んでましたけど。Barでは頼めないね、世間体がじゃまして。とくにスーツ着てたら頼めないね。でもネクタイして足くんでカルーア・ミルクを飲んでたら、一周してかっこいい気もするね。
あの茶色の瓶に黄色いラベルが貼られたカルーアのボトル(リキュール)を自分で買って、自宅で作って飲んだのは20年ぶりってことです。
あまーいカフェオレのような飲み口が落ち着く。
でも、酒豪はそんなこと言わない。そんなこと言うのはお酒がつよくないからなのだ。
若かりし20歳のころ、そう、まだわたしのケツが限りなく透明に近い青だったころ、飲み会といえば友達同士で大五郎(4Lくらいのどでかい焼酎)をポカリスエットやバヤリースで割るという凶行が当たり前のように流行っていた。
ファンタグレープで割るやつもいれば、やめたらいいのに日本酒で割るやつなんかもいて、もし警察にばれたら密造酒で捕まるんじゃないかってくらい、お酒の飲みかたをしらなかった。
だからいつも飲む=吐く、という方程式ができあがっていて、夜中の2時にトイレで吐いては「仏さまがみえた」とわけのわからないことを言って死地をさまよいながらも「吐いたから回復した」と見栄をはって飲む吐くのループだった。
そんなある日、成人式の同窓会で女性陣からカルーア・ミルクを教えられた。わたしとカルーアの初めての邂逅だった。
いつもポカリスエットと大五郎という禁忌の錬成から生まれた得体のしれない超神水を飲んでいたわたしに「ミルク」という名前はとてもやさしく感じた。いざ飲んでみればお酒とは思えないコクと甘みに感動し、こんどの飲み会では絶対にこれを飲む!と心にきめ、後日酒屋でリキュールと牛乳を買った。
同時に、はじめて自宅にやってきたリキュールがカルーアになった。ちゃぶ台に英語で書かれたラベルの瓶(それもお酒!)が置かれているだけで、なんだかオシャレに思ったっけ。
まわりの友達も最初はカルーア・ミルクを大歓迎してた。でも飲めども飲めども、密造酒よりは酔わないことに気づき、ほどなくして仲間うちではカルーア・ミルク禁止令がだされた。
それから社会人として、男として成長するにつれ、カルーア・ミルクを飲む機会は減っていった。平成という時代にカルーア・ミルクを飲む男はあまりモテないという先入観があった。居酒屋のカクテルメニューの片隅にあって、女子が終盤に注文するのに付きあうくらい。
ただ、カルーアに用がなくなったわけではない。しかし、そのころのわたしに必要なのはブラックルシアンだった。ミルクはいらない。運命のレディーをカクテルでキラーしないといけなかった。
あれから仕事も変え、仲間もわたしも結婚をした。
社会人を何周もして、お酒の失敗も山ほど経験し、二日酔いになるなんて1年に1回くらいかなあ、なんてところまで到達したいま。
なんでしょう、戻ってくるもんですねえ。カルーア・ミルクに。原点に。
・・・いや、原点はポカリスエットと大五郎か。
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