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「あしたから仕事かあ」との戦いはつづく。

25歳くらいのころは、日曜の夜こそ飲みにでかけた。

月曜からフツーに仕事だというのに「あしたから仕事かあ」と、その鬱々しいきもちでいるのがいやで、にたような感覚をもった友達に声をかけては夜中まで飲んだ。

日曜にやっている居酒屋は駅前のチェーン店しかなくて、しかもとうぜんのようにお客さんもすくなくて、貸し切りのような雰囲気のなか、「あしたから仕事かあ」と家でため息をついている民衆を尻目に「おれはいまたのしんでいるぞ」と一線を画して生きているような気分だった。

いざ月曜の朝になれば、二日酔いで出勤した。
同僚にはあさから頭痛がひどい、とごまかして会社のトイレでゲーゲー吐いていた。前日、すこやかに眠らなかった自分をうらめしく思った。
でも、そこまでしても「あしたの仕事いやだなあ」からは逃げたかった。

友達がつかまらないときは、ひとり寝静まった住宅街をさんぽした。不審者顔負けに、月をながめながらひたすら歩いた。

ひとりでドライブにでかけて、意味もなく高速をはしらせることもあった。たとえば3連休の最終日の23時にもなると、極端に車もすくない。これまた貸し切りの暗闇に、ひっそりたたずむ深夜のインターチェンジをくぐる瞬間は、別世界への旅立ちのようにワクワクした。

そしていざ月曜の朝になれば、寝不足でからだはコールタールをかぶったように重い。

「あしたから仕事かあ」から逃げる代償は、いつも拷問のようにひどいものだったけど、あらがって生きていた自分はきらいじゃない。

ひたすら月曜日に屈しまいと、戦うすべも分からずに、ただただ無理やり逃げていただけだけど、それがわたしの月曜日との戦いかただったのだろう。

いまではすっかり「あしたから仕事かあ、もう寝よう」と爪も牙もなんにも無い。
まるくなったといえば聞こえがいいが、二日酔いや寝不足を恐れず、がむしゃらに日曜の夜を満喫していたあのころの自分はいまでもすき。

それでもいまも、布団に入ってからちいさくスマホであらがってみたり。
そして月曜の朝は、また寝不足です、と。



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