私が編集者になるまで その1 新卒編

思い返してみると、私の職歴にははっきり言って統一性はない。

新卒で、食品メーカー→IT系ベンチャー企業→オンライン旅行会社のスタートアップ→IT系ポータルサイトの広告営業→なぜかいきなり出版社編集→そして今、フリーランスライター、編集。

過去の自分が見たら、「なんでそんなことやってるの?」と思うだろうな。就活中に出版社はほぼまったく考えなかった。

なんとなく違和感を覚えて、転職。そのたびに、「私、何やってるんだろ」と思っていた。ネガティブな意味で。もちろん、次の会社に期待もして、「もっと違う自分になりたい」と思っての転職ではあるし、今考えてみると結果的にはよかったと思う。でも、当時は親や周囲の目も気になり、「親はきっと『またか』とあきれているんだろうな」とかあれこれ考えてしまった。

けれど、出版社に入社したとき、自分がこれまでにやってきたことが一つひとつ、コンセントでつながれてようになって、まるで数珠繋ぎのようにひとつになった。「もしかすると、編集という仕事をするために、これまでいろんなことをやってきたのかな」なんて勝手に思ったほどだ。「あのときのあれが今、ここに役立っている」「そうか、私はこの仕事をするために、あれをやっていたんだ」と自分なりに納得して、自分の人生に初めて合点がいったのだった。そしたら、これまで「何やってんだか」と半分あきれながら自分で自分を見ていた目が、少し変わった。自分の人生もなかなか捨てたもんでもなかったな、と思えるようになった。

というわけで、ここからは、私がいかにして編集者になったのか、を勝手に書いてみたいと思う。私が編集者になれたのは、ひとえに運と縁だと思っている。全然正攻法ではないので、まったく参考にならないと思います。すみません。でも、ちょっとでも「編集者になりたいな」と思っている人がいるなら、こんな変な方法を経る人もいるのだな、と知ってもらえたら。

まずは第1回。学生時代の就活。

おりしも、就職氷河期真っ只中だったから、「早く決まっておくれ!」と思っていたところはあるが、その中で、自分に興味があることがしたい。美術展の企画などをやりたいと思って、新聞社、テレビ局も受けたには受けた。が、そのような仕事は会社の本質ではないよなー。それだけに的を絞って主張されてもな、と、大人になった今ならわかる。テレビ局の方々にもOB,OG訪問した。ステキだった。けど、正直言うと、そこで自分でやっていけるか、と考えたとき、すごく息苦しくなった。たしかに、就職出来たらかっこいい!就職したい!と思いながら、一方で常につま先立ちしていないとついていけないような。そんな気持ちもあって、「私にはまぶしすぎる世界だな」とも心の中で思っていた。

で、ほかに何が興味あったかというと、身近なもの。食。食べることにはずっと興味があったから。おいしいものが好き!というただそれだけの理由で、食品メーカーを受けた。面接では「どんな部署を希望しますか?」と言われて、「商品開発とかマーケティングなどが……」と即答。いかにも言いがち。人事の方は、「そう言う人が多いんだけどね。君ねえ、机に向かってマーケティングなんてできないよね。まずは、営業から……」と言われて、食い気味に「はい、なんでもやります!!」と答えていた。1年目からマーケティングなんてできないですよね~。

幸い、入社できることになったのだが、配属は広報室。しかも秘書だという。え、なにやるところ?広報ってどうするの? 何も知らず、配属が決まってからあわててノウハウ本を買って読む始末。もちろん秘書検定なども持っておりませぬ。超どろ縄です。

秘書の話はこれまたいっぱいネタがあるので、いつかつらつらと書きたい。漫画などでよく聞くお茶にぞう〇〇絞った話とか、ストレス解消法とかなんとかかんとか。

それは置いておいて、最初の会社で学んで、のちに役立ったと思うのは、ニュースリリースの書き方とドメスティック(超日本企業)の体質のようなもの。私がのちに入れていただいた出版社も割と(というかかなり)ドメな感じだったので、なんというか「あー、戻ってきたー」というような思いに浸れたのだ。それまでIT系にいて外資系のサバサバした成果主義のところにいたこともあるが、もしその経験だけだったら、「あー、こんなわけわからないところ、やってらんない~!」とちゃぶ台ひっくり返して、もっと早くに辞めていたかもしれない。が、新卒で入った会社でどっぷりとドメの空気を味わってきたので、「そうだった、そうだった。こういう空間があるんだった」と思って、腹立つことも、理不尽なことも、なんとなく許せてしまうことも多かった。もちろんそれだけでなく、周りにいた人たちに恵まれていたことも多いけど。

というわけで、ここで言いたいのは、

人生、ムダなことはなにもない。どんな企業にいても、なにか役立つ、つながる点はある。

こんなことも未来につながるんだなー、と思った次第である。(続く)


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