無農薬野菜の収穫体験が大人気!東京地球農園で味わえる「本物の体験」とは
ここは東京(?)と思ってしまうような、豊かな農地が広がるあきる野市。その一角にあるのが、東京地球農園です。
農園で特に人気なのは、旬の野菜を楽しめる収穫体験。大手レジャー予約サイト「じゃらん」の東京の農業体験ランキングでは、2年連続で1位を飾っています。
今回は、そんな東京地球農園を設立した久保田武男さんにインタビュー。農園に込めた想いを伺ってきました。
「美しい地球を子どもたちへ」東京地球農園が大切にしていること
ーー久保田さんはもともと農家ではなく、市役所職員だったそうですね。どうして東京地球農園を始めたんですか?
久保田:きっかけは、農薬問題ですね。私は長年、障害者関係のボランティアをしていたんですが、なぜ障害が発生するのかを突きつめると、農薬は無視できない要因なんですよ。
1980年代にはいろいろな社会問題も起きていたこともあり、「これからの子どもたちには、できるだけ安全な野菜を食べさせたい」と農薬を使わない農園を始めました。
ーー普段あまり気にしないでスーパーの野菜を買っているんですが、実際のところ今も農薬は問題になっているんですか?
久保田:農薬は今も当たりまえのように使われていますよ。
実際は、虫がつく野菜の方が安全なんですが、作る過程を知らない消費者は、虫食いのない、きれいで整った野菜に手を伸ばしてしまいます。だから、普通の農家は、消費者が求める野菜を作るために農薬を使わざるをえないという悪循環が起きているんです。
ーー言われてみると、たしかに…。
久保田:この農園では、農薬を使わなくてもいいように、いろいろ工夫して野菜を育てています。来園した人には、いつも採れたてを生で食べてもらっていますよ!
ーー無農薬野菜が食べられるなんて、とても貴重ですね。実際に農園では、どんな体験をすることができるんですか?
久保田:一般の人を対象に農業体験や収穫体験を提供しています。それから、ボランティアで来てくださる人には、農作業のあとに、もう一歩踏み込んで、農薬や地球環境、人間が生まれるまでの話などをしています。
東京地球農園の理念は、「美しい地球を子どもたちに残す」こと。農業を通して、子どもにも大人にも、実際に地球に触れてもらい、地球のことをもっと知ってもらうことを1番の目標にしています。
なぜ今、農業体験が重要なのか? 収穫を通じて得られる学び
ーー地球農園では、体験を重視しているんですね。久保田さんはどうして農業体験が重要だと考えているんですか?
久保田:農業を体験すると、本物が見えるんですよ。たとえば、農園で収穫した野菜を食べると、本物の味がわかるようになります。
ーー本物の味…?
久保田:実際に食べてみるとわかるんですが、温室で育った野菜と、畑で育った野菜の味は全然違うんですよ。冬野菜は霜に当たって甘くなるし、夏野菜は水分をたっぷり含んでおいしくなるし、野菜本来の味がはっきりしてくるんです。
ーーえー! そんなに違いがあるんですか。スーパーで買っていたので、そもそも味を考えていませんでした。
久保田:そうでしょう。スーパーの野菜を食べていると、その味が普通だと思ってしまいますが、実は違うんですよ。地球農園には、親子で収穫体験に来る人が多いんですが、みんな野菜を生で食べて、「おいしい!」って驚いてくれますよ。
野菜嫌いの子どもが、農園で野菜を食べられるようになったのを何度も見てきました。このあいだも、ネギが嫌いな子どもに、焚き火で焼きねぎを作って食べさせたら、気に入って、5本、6本食べていましたよ(笑)。
ーー野菜嫌いの子どもが野菜を食べるって、すごいことですよね! 不思議〜。
久保田:やっぱり本物の味がわかるんだと思います。あと、やっぱり自分で種をまいて収穫したときは、ちゃんと食べますね。たとえ紐のように細い人参でも、「おいしい、おいしい」と言って食べます(笑)。
ーーそんなことが! それはどうしてでしょう?
久保田:やっぱり、体験が愛着になるんでしょうね。体験と失敗、この2つは子どものうちに絶対にさせておいたほうがいいです。
生きていると必ず失敗したり、悩んだりしますよね。人が強くなるのは、転んでから、自分で起き上がろうと試行錯誤しているときなんです。農業は、はっきり言って失敗の連続なので、貴重な人生経験ができるんですよ。
ーー農業は、失敗の連続?
久保田:農業では、気候が違ったり、日照りや大雨が続いたり、条件が毎年変わるのが当たり前。前の年にうまく野菜を作れたからといって、今年も同じやり方が使えるわけではないんですよ。
天候や気圧、温度など、いろいろなものを複合的に考えて、知恵を絞って、トライアンドエラーを繰り返すんです。
ーー農業は肉体労働のイメージが強かったんですが、頭を使わないとできないんですね。
久保田:そうなんです。だから、農業を経験すると、「作物は地球の恵みなんだ」ということが、ただの知識としてではなく、体でわかるようになるんですね。
地球上のいろいろなものをもらわないと、作物はできません。みんな畑を耕していると思っているんですが、もっと大きい視点で見ると、地球全体のなかで、地球を耕しているんですよね。
そうすると、地球上で人間の存在がいかにちっぽけなものなのかということにも気づきはじめるんです。人間なんて、いも虫みたいなもんですから!
人間社会のルールに疲れたら、自然のルールに目を向けよう
ーーお子さんにとって、農業がとてもいい経験になることはわかりました。一方で、テクノロジーが発達した今、大人が農業を体験することは必要なのでしょうか?
久保田:最近思うのは、むしろ現代だからこそ重要になってくるんじゃないかということですね。
今は、なんでもインターネットで完結するような便利な時代ですよね。でも、そればかりを見ていると、ものの見方がすごく狭まると思うんです。どんな情報でも手に入って、何でも経験できるような気がしてしまう。本当に大切なものはそこにはないのに。
ーー本当に大切なもの…?
久保田:人間は地球上のあらゆるものから生かされているという感覚はとても大切だと思うんです。でも、現代は人間が作ったつまらないルールが多すぎて、みんな気づかなくなっている。自分で自分を苦しめている人も多いんじゃないかな…。
ーー自分で自分を苦しめる…。たしかに、現代特有の息苦しさのようなものはある気がします。
久保田:以前この農園に、不登校の高校生が訪れたことがあります。その子に話を聞いてみると、校則や、社会の価値観、親の価値観にずっと合わせて生きているうちに、自分という人間がわからなくなったそうなんですね。
でも、彼は農園で1週間畑に向き合って、出会った人と交流して、最後には「他人に押し付けられたルールから外れて、やっと人間に戻れたような気がします」と言ったんです。
ーー農業で、ものの見方が変わったと…。
久保田:自然のルールに合わせるのが農業だから、大きな視点で考えるようになるんです。人間の都合は関係ない。それがわかると、社会の価値観とかルールが、小さな存在に思えてくるんですよ。
生きていると、給料とか能力とか学歴とかを、つい他人と比べたりしてしまうけど、視点を変えればもっといろんな世界が見えてくるはずなんです。
人間の原点、地球を一緒に考える農園に
ーー農園の理念「美しい地球を子どもたちに残す」ためには、みんなが地球環境を考えなければいけない。そうはいっても、普段自然に関わらない人が環境を考えるのは、簡単なことではないと思います。どうやって東京地球農園のメッセージを伝えたいと考えていますか。
久保田:やっぱり農業を通して自然に触れる体験をしてから、地球の話をするのが1番だと思っています。
これからはプログラムをしっかり組み立てて、農作業のあとに、講座という形で深く話せる場を作ってみたいですね。
いろいろな人が農園に来て、収穫した分だけ種をまいて、また収穫に来る。一緒に畑を耕して、地球のことを知っていく。そんな未来に繋がるいい循環をみんなで作りたいと思っています。
ーー目の前の畑から地球へ、視点を変えて考えるのはおもしろそうですね。
久保田:ここには畑があって、空も山も見えます。夜には星も見えて、宇宙が感じられるんです。
都会からちょっと離れて、この農園で美しい地球を見てほしいです。そして私たちは今何ができるのかを、一緒に考えたいですね。
「美しい地球を見てほしい」
経験に裏打ちされた久保田さんの言葉は力強く、今と未来を生きる人への想いがストレートに伝わってきました。
今回のインタビューで、遠く、他人事のようになっていた農業が、身近に感じられるようになりました。食の楽しみも、心身の健康も、人間のあらゆる営みも、すべて地球のなかで実現すること。
直接地球に触れて「おいしい」「ありがたい」と思うことから、環境問題に対する自分なりの1歩を踏み出そうと思いました。
東京地球農園の農業体験、収穫体験はじゃらんで予約できます。ボランティア等にご興味があれば、ぜひホームページからお問い合わせください。
東京地球農園ホームページ https://www.taiyonoie-vc.com/terrafarm/
じゃらん予約サイト https://www.jalan.net/kankou/spt_guide000000206994/
〈取材・文=柴崎彩夏/写真=アーロン・ジョーンズ/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)〉
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