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タイパ時代への反逆~祖母と行く福井旅~

祖母「私、永平寺に行きたいのよね!」
我「どこやねん…」

2023年秋、「おばあちゃん孝行旅行」と称し、祖母と私(孫)で2泊3日の福井旅行へ行ってきました。

今回宿、移動手段、観光などすべて祖母セレクトでした。
アナログ世代がアテンドする旅行に、Z世代孫がついていくとどうなるのか…

一言で言うとタイムパフォーマンス時代への反逆

じゃあどこがタイパ時代への反逆なのか…
それは何かに困った時に現れます。

困ったとき

祖母は困ったとき、インターネットで調べません

困ったらすべて駅前のインフォメーションカウンターへ聞きに行きます
「あたしこのあとのお夕飯に困っているのだけど、おすすめはあるかしら?」
「宿の近くで観光できる場所はあるかしら?」
「○○と○○に行きたいのだけど、一日で行けるかしら?」

2泊3日の旅行でスタッフの方に顔を覚えられるレベルでお世話になりました。(ありがとう福井のスタッフさん…)

観光地でもスタッフの方、観光客の方にも積極的に尋ねます。
やがて地元の人と仲良くなって、プライベートな話題まで話し始めました

カウンタースタッフの女の子が、最終勤務日なこと。
観光地のシニア清掃員さんが、若いころ関東にお住まいなこと。

福井には魅力があり、地元に誇りがあるが伝える機会がなくてモヤモヤしていること。
結城秀康公、柴田勝家公、お市の方、朝倉氏をはじめとした有名な方とゆかりがあるのに、大河ドラマを引っ張ってこれなくてヤキモキしているので、生きているうちに見たいこと。

福井県庁は福井城の城跡にあるので、見ごたえがあること。
新幹線が通ることで福井の盛り上がりに非常に期待していること。

京都に近い環境から文化の発達のあった地域で、魅力が多いこと。
朝倉氏遺跡の発掘作業に地元の方が何年も協力し、近年博物館と遺跡が整備されたこと。発掘にその方も関わったこと。

ここには書ききれませんが、地元の方、観光案内スタッフの方などとお話し、福井に対する熱い思いと優しい人柄を感じました。



ここまででわかっただろうか。アナログ世代(祖母)は人と話す時間が多いのです。行く予定だった観光地をいくつかとりやめるほどでした。

Z世代(私)が困ったとき、または困る前に取る行動はこうです。

・観光乗り放題パスを活用しよう
・インターネットで調べたほうがロスがないだろう
・堪能しきったと言い切れるように事前に調べて回ろう

つまり、私からすると祖母の行動はタイパが悪すぎるのです。

いや、待てよ?


「タイパ悪いな~」で終わっていいのか?
彼女の旅行の楽しみ方から学ぶことがあるんじゃないのか?

ということで、祖母の旅行スタイルを体感して良かったところを考えます。


彼女の旅行スタイルから見るメリット

書いてあることだけが文化ではない

観光地やパンフレットには対外的にわかりやすい文化、歴史が書いてあると思います。ついタイパを意識するZ世代は表面的な観光を楽しんでいたのではないでしょうか。

私たちは地元の人の熱量、日常の空気感、風土を感じる機会を失っていた気がします。

私が感じた福井の方を一言で表すと「心に熱く秘めた郷土愛」でしょうか。大阪や京都の方ほど表向きに郷土愛を口にするわけではないですが、一つ尋ねれば熱く語る方が多い印象でした。偏見ですが、寒い地域特有の「我慢強い気質」もあるのではないかなんて思いました。

他の土地にはない雰囲気を覚えています。

穴場・見落としがちなポイントに気づく

インターネットかわかる情報は、わかりやすい観光地。そして、わかりやすい郷土料理ではないでしょうか。
地元の人も大切にしているスポット、お気に入りの店などはあまり出てこない気がします。

私が福井で積極的に話しかけてみてよかったことがあります。
それは、観光地のカフェタイムに出すお茶菓子を気に入ったときのことです。お土産に買いたい!と思い、土産屋を探したが見当たらず…

実は一般販売していない(カフェタイム専用に地元の和菓子屋が作っている)お菓子だと分かりました。

どうしても気にいったので買えないか!今は無理でもいつか一般販売や、お取り寄せできないか!と、気に入った旨を熱く伝えました。

そんなに喜んでもらえるならと、今日の在庫分を少し購入させていただけることになりました。

もしインターネットだけに頼っていたら、このお菓子をお土産にはできなかったのです。

旅先でのご縁、タイミングのありがたさを感じました。


写真には残らない記憶が残る

タイパを意識して2倍速で動画を再生する私としては、写真や動画で思い出を切り取るようにスイスイ歩いていくことが多かったです。

そういうとき、見返すと覚えのない写真があったりしませんか?
私はよくあります。
観光地に行ったのに雲の写真があって、なんだっけ?となったり…


祖母と歩いてわかったのは、話すと「場所、人、感情」の3つが一緒に残ることです。

「○○で出会った女性と話して、嬉しくなった」というように、人と話すことで感情が動く機会が増え、旅の記憶がより鮮明になります。

現に半年以上前に行った福井の旅行をこれだけ思い出して書けているのが、何よりの証拠だなあと思います。




今思えばタイパを意識する旅行は、即物的にわかりやすく「旅行っぽさ」を味わわせてくれていたように思います。

ただ、インターネットで調べた情報だけでは「私の旅行」ではなかったのです。画一化された、みんなと一緒の体験をする旅行。誰かの勧めるわかりきった旅行。

でもあえて人に話しかけてみたらどうでしょう。

文字だけではわからないことがわかる。
旅に感情が伴ってくる。
私だけの出会いがある。
忘れない思い出ができる。

祖母の旅行はそれらを教えてくれました。

「おばあちゃん孝行旅行」は、私にとって一生価値のある旅の楽しみ方を教えてくれました。

そうだ、タイパ反逆旅しよう!




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