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惰性の恋

私は夫と付き合う前に、10年間別の男性と付き合っていた。

その元彼は、おそらくASDだった。
頭はべらぼうに良かったが、情緒面での交流が乏しく、今考えると「カサンドラ症候群」になっていたんだと思う。


友人たちには事ある毎にそんな男と別れろと言われたが、私は元彼となかなか別れられなかった。

この人と別れたら、もう二度と恋愛できない気がした。新しい恋愛をするのも体力がいる。
それに、文句を言いつつも、この人を理解できるのはだけだという自負心も抱いていた。
だからいつかきっと報われるのだと、微かな希望を胸に付き合い続けていた。


人間は、そう簡単には変わらない。
というより、本質的には何があっても変えられないと思う方が無難だ。

ディズニーデートに行ったとき、こんなことなら勉強したかったとずっと文句を言っていた。
私が深夜帰るとき、「治安がいいから大丈夫だと思ってた(実際の治安は悪かった)」といつも一人で帰らせてた。
彼女相手に「君と君の親友のどちらが好きなのかわからない」と恋愛相談をしてきた。

無視してきた小さな違和感は、後から必ず大きな綻びとして現れてくる。
どんなに相手がいなくなる不安があろうとも、そこを見過ごしてはいけない。

特に相手が情緒的交流に難のある場合や、自分の尊厳を踏みにじる行為をしてくる場合は、それがたとえ1回だけであっても即撤退すべきだ。
恋心のあるうちは「私が我慢すれば報われる」と思いがちだが、相手が変わることはまずない。
本格的に「この人やばいかも」と思ったときには、既に逃げられない状況になってしまっていることがほとんどだ。


幸い、私と元彼は同時期に相手に冷めていき、私の方は夫との良い出会いがあったからよかったものの、下手したら今頃、元彼の顔色を伺い続ける生活になっていたかもしれない。
多少の悪い面は目をつぶったほうが上手くいくが、それでも見過ごしてはいけない違和感というのは確実に存在する。

もしあの頃の私にメッセージを送れるのならば、違和感を無視するな、と伝えたい。


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